有村架純インタビュー「ひよっこ」で昭和の強さを知った(後編)

有村架純インタビュー「ひよっこ」で昭和の強さを知った(後編)

©NHK

 NHKの朝の連続テレビ小説『 ひよっこ 』の勢いがとまらない。尻上がりに視聴率が上がり、最近では視聴率20%超えが続いている。9月末までの放送で、ストーリーはいよいよクライマックスを迎える。

 主演の有村架純が、今回の朝ドラにかける思いを語った。

( 前編より続く )

■撮影で苦労したこと

 撮影では、朝ドラならではの難しさもありました。

 失踪してしまった父親の行方を捜してくれている元警察官の方が、みね子が働いているすずふり亭に来て、父親にいったい何があったのか、なぜいなくなってしまったのかをみね子に伝える。みね子は悲しみに打ちひしがれながら、母親とそのことを電話で話す――というシーンです。

 本当なら、元警察官の方の話を聞いてから電話をしているシーンの撮影をするのですが、セットの都合で、電話のシーンを先に撮影しなくてはならなかったんです。さらにその部分の台本がまだ無くて、電話のシーンだけ先にセリフをもらいました。

 なにしろ半年間に亘って放送される作品なので、最初から台本が全部揃っているわけではないんです。もちろん大まかなストーリーは出来上がっているのですが、実際の本番用の台本は徐々に渡される。その上、撮影の順番が前後したため、台本が出来てなかったんですね。

 朝ドラでは何度かこういうことはあるのですが、まだ分からない何かを想像しながら演じるというのは、けっこう難しくて。

 それにこのシーンは、ドラマの中でも非常に重要なところだったので、気持ちの整理がうまくつかなかったんです。現場で監督と色々とお話をさせていただいて、感情のすりあわせをしてから撮りましたが、なかなか苦労しましたね。

『あまちゃん』のときもそうでしたが、今回も共演者はみなさん個性的な方ばかりです。

 木村さんは本当に明るくてポジティブな方。100メートル先にいても、「木村さんが来た!」って分かるぐらい。私の母も関西人なので喋るのも人と関わるのも好きな人ですが、木村さんにはかないません。

 撮影が続いてきっと疲れもあったりすると思うのですが、それでもいつも大きな声で「おはよう」と声をかけてくださって、現場を明るくしてくださるんです。木村さんが歩いた後は、ひまわりがポンポンポンって咲くようなイメージ(笑)。

 一方で、父親役の沢村さんはとても優しくて紳士です。別の番組で“セクスィー部長”として出ていたり、ちょっとエッチなお話をされる方というイメージもありますが、「いまは封印している」と仰っていましたね(笑)。

 途中で失踪してしまうので、なかなかご一緒のシーンはないのですが、たまに別のお仕事でNHKに来られるときには、必ず撮影現場に顔を出して差し入れをしてくださるんです。「みね子の頑張っている様子を見てから帰らないと、気持ちの整理がつかない」と仰ってくださって。お忙しいのに、本当のお父さんみたいに見守ってくれているのがとても嬉しいです。

■現場は宮本さんが中心

 宮本さんは『あまちゃん』でも母娘として共演させてもらって、今回久しぶりにお会いしたのですが、ハグをしながら「元気だった? テレビでいつも見ていたよ。よく頑張ったね」と優しい言葉をかけてくださいました。

 撮影では、掛け合いのシーンの前に「みんなで合わせよう」と言って、率先してセリフ合わせをするなど、宮本さんが中心となって現場を回してくださっています。

 それにすずふり亭のホールのシーンって、お客さんもたくさん入っていますし、テーブルもあってごちゃごちゃしていますし、一つ一つの動きが難しいことが多いんです。私がお水を運んでいるときは、もう一人のホール係の佐藤仁美さんが注文を取って、宮本さんはお客さんと会話をして……。私も昔、飲食店でバイトをしていたので分かるのですが、すごく頭を使うんですね。そういった手順も宮本さんが、「私は店主だから料理が大丈夫かとキッチンの様子を見に行って、その間、架純ちゃんは奥のテーブルに注文を聞きに行って」とか、現場で監督に色んな案を出してくださるんです。

 もちろん本番前にリハーサルもして動きをある程度は固めますが、実際にやってみると「あれ? うまくいかないなぁ」ということもけっこうあるんですね。私も監督に提案することもありますが、宮本さんに仕切っていただいて本当に助かっています。

■紅白の翌日には……

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『あまちゃん』で大ブレイクを果たし、映画・ドラマ・CMに引っ張りだこになった有村。『映画 ビリギャル』では日本アカデミー賞優秀主演女優賞を獲得。月9『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』の主演を担い、昨年末の紅白歌合戦では紅組の司会も任された。

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 司会というものもしたことがなかったですし、紅白は初めてのことだらけで、本当に何も出来なかったという思いで一杯です。

「落ち着いていたね」と言われることもありますが、そういうふうに見せていただけで、裏ではてんやわんやで(笑)。白組の司会の相葉雅紀さんに苦労ばかりかけてしまいました。

 さらによっぽど緊張していたのか、翌日におなかをこわしてしまったんです。これまでどんな仕事でもそんなことはなかったのですが、やはり紅白は重みが違いました。何十年も続いている番組ですし、司会をこれまで務められていた先輩方のすごさを、改めて感じました。

 いつもなら年末は地元の兵庫に帰るのですが、昨年は紅白もありましたし、ここ数年は忙しくて戻れてないですね。

 ただ仕事ばかりしているわけではなくて、時間を見つけて友達と遊びにも行っています。特に仲がいいのが充希。彼女も大阪出身で2人とも関西人ということもあり、映画で共演して以来、ご飯を食べに行ったり、家に遊びに行ってお喋りをしたり。とはいえ2人とも翌日に仕事があることも多いので、数時間でバイバイということも多いのですが(笑)。

 いまは空いた時間があると、小説もよく読んでいます。お仕事を始めた当初は、映画やドラマの原作の作品を半ば義務的に「読まなきゃ」と思って読んでいたのですが、いまは「あれが読みたい」に変わりました。よくインターネットで読書家の方の感想が書かれているサイトを見て買っています。

 最近は唯川恵さんの『 雨心中 』を読みました。施設で実の姉弟のように育った2人の恋愛小説なのですが、女性の、大切なものに対する執着心や独占欲など、心理描写がとてもリアルでどれも頷けるものでした。吉本ばななさんの作品も、女性の姿がリアルに描かれていて大好きです。

■ひよっこの“強さ”

 朝ドラすべてに共通していることかもしれませんが、『ひよっこ』も前回の東京五輪の時代を強く生きた女性の、リアルな姿を描いた作品だと思います。

 実は登場人物の名前にもそれが表れています。私も先日NHKの『人名探究バラエティー 日本人のおなまえっ!』という番組に出演して知ったのですが、「子」という字には、女性が強く輝くシンボル、という意味があるらしいんです。いまでこそ「子」には、ちょっとレトロな感じで古臭いというイメージがありますが、女性も男性と対等に戦えるぞ、ということを表しているそうです。

『ひよっこ』には主人公のみね子を始めとして、時子、美代子、鈴子など名前に「子」が付く女性が数多く登場します。おそらく脚本の岡田さんも、「登場人物たちが強く輝けるように」と、その点を意識して役名を付けられたのだと思います。

 このドラマは歴史上の人物が主人公というわけではなく、物語の中に大きな起伏があるわけでもありません。またヒロインのみね子は、自分から前に前にと出て行く性格ではありません。私も演じていて「周りの人たちの支えがあって、彼女は東京でも頑張れているんだ」ということを日々実感しています。

 佐々木さん演じる省吾さんも太平洋戦争に行っていたという設定ですが、当時はまだ戦争が身近にあった時代です。そこかしこに戦争の爪あとが残っていて、戦後生まれであってもそれを目にしていた。いまみたいに便利なモノもなく、茨城だろうが東京だろうが、人間の力ではどうすることもできない自然とも向き合わなければならないことも沢山あったでしょう。

 私は平成生まれですので、実際にどうだったかはもちろん分からないのですが、祖母の話を聞いたり、昔の本を読んだりすると、当時生きていた人々には、“凜”とした強さがあった。そう感じます。

 日本が高度成長を迎え、豊かな国への階段を登っている、そんな最中に、ただただ普通の田舎の女の子が、色々な人との出会いと別れを繰り返す中で、どう強く生きていくのか。ぜひその等身大のヒロインの姿に注目して見ていただきたいです。

(有村 架純)

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