外国人タレント歴35年 デーブ・スペクターが語る「吉本騒動とテレビの危機」

外国人タレント歴35年 デーブ・スペクターが語る「吉本騒動とテレビの危機」

デーブ・スペクターさん

 1983年に来日して36年。外国人タレントとして活躍し続けてきたデーブ・スペクターさん。「今のテレビはみんな遠慮して面白くない」と訴え、「テレビが好きだからあえて厳しく」批判してくれました。聞き手は演劇史研究者の笹山敬輔さんです。(全3回の1回目/ #2 、 #3 に続く)

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■「テレビについて書いてるネット記事なんてレベル低いよ」

デーブ 明日発売の『週刊文春』の早刷りは持ってきた?

―― 持ってきてないです。すみません。

デーブ 雑誌を発売の前日に読むのが楽しみなんですよ。もう生きがいです。でも、最近はオンラインの記事が出て、発売前にみんな知っちゃってるから、自慢できない。あれ、やめてほしいですよ(笑)。

―― 『週刊文春』のスクープも、前日の夕方にはYahoo!ニュースでも流れてますからね。雑誌はすみずみまでチェックしてるんですか?

デーブ 『週刊文春』と『週刊新潮』と『フライデー』は必ずね(笑)。あとは『東スポ』と『日刊ゲンダイ』も読んでます。もう「東スポ病」ってくらいの『東スポ』好き。むしろ読むより出たいよね。昔は、『噂の真相』というすごい雑誌もあったんだけど。

―― 2004年に休刊してから15年が経ちますね。

デーブ あれがなくなってから、芸能界はやりたい放題になって、つまらないですよ。みんな一方的に好き勝手な発信をして、誰も中身を疑わない。テレビについて書いてるネット記事なんてレベル低いよ。ジャニーさんが入院したとき、直後に死亡説を流したネットメディアがあったでしょ。メディア・リテラシーっていう言葉すら知らないサイトが多いよね。

■「お前が打たなきゃ誰が打つ」ってASKAの話だと思った(笑)

―― たしかに、何の検証もしてないネット記事が増えてますね。デーブさんが来日してから、日本のメディアの状況も変わってきたと思いますが、現状をどう見てますか?

デーブ 今は、みんな遠慮しちゃって面白くないですよ。今日のニュースだと、話題になった中日ドラゴンズの応援歌「お前が打たなきゃ誰が打つ」って、僕はASKAの話だと思った(笑)。こういうことも、自粛モードで誰も言わないじゃない。テレビも雑誌もマンネリ化しちゃって、自由な場でなくなってきてる。

―― そんな中でも、デーブさんは30年以上にわたってテレビの第一線で活躍されています。今日はその秘訣をお聞きしたいです。

デーブ 一つには、闇営業をやってないから(笑)。もう一つは、なるべく人がやらないことをやってきたことです。Twitterも、今はフォロワーが175万人くらいかな。ほぼ全部ダジャレです。そんなの誰もやってないでしょ。あと、フェイクニュースも書いてます。速報じゃないのに、速報って打ち出して。

―― 今日の速報は、「【速報】丸山穂高議員が次回選挙で自由飲酒党から立候補を検討へ」ですね(笑)。

デーブ そういうのをずっとやってます。おかげさまで、「芸能人・有名人ランキング」では15位かな。総合でも安倍総理より上なんで。恐縮ですが。有吉を抜くのはあきらめてるけど、渡辺直美とベッキーは抜きたいね。どっちかのスキャンダルを期待してるんです(笑)。

■今、テレビで自由に言えるのはMXと『サンジャポ』くらい

―― 炎上は気にしないですか?

デーブ 炎上してるかどうか、知らないもん。人と絡まないからね。ウーマンラッシュアワーの村本とか高須先生みたいに、いちいち絡む人いるでしょ。あんなのはやってられない。僕は、Twitterを10年くらいやってるけど、すごく楽しんでますよ。

―― Twitterは適度な距離感をとるのが難しいメディアなので、楽しくできてる人は少ないように感じます。

デーブ 僕は言いたいことがいっぱいあるから、Twitterがあることで助かってますね。テレビだと限られた尺があるし、コンプライアンスもある。今、テレビで自由に言えるのは、MXテレビと『サンデー・ジャポン』くらい。MXテレビの『バラいろダンディ』なんか全部自己責任。昔のテレビのまんまだね。コメンテーターも、何か言ってやろうって気持ちで出てる。

―― テレビ局が自己規制している面が強いんでしょうか?

デーブ BPOには頭にくるね。コンプライアンスもやめればいいんですよ。法律があるわけじゃないんだから。

―― 『サンジャポ』や『バラいろダンディ』以外にも、『ミヤネ屋』や『とくダネ!』などたくさんの番組に出てますが、番組によってスタンスを変えることはありますか?

デーブ そんなにはないけど、テンションや割り込むタイミングなんかは少し変えてます。でも、『サンジャポ』は無法地帯だから、コントロール効かないですよ。あれ、幼稚園児が集まってる感じだから(笑)。

■外人をいちいち日本のテレビに出す必要ないからこそ……

―― コメンテーターとしてのデーブさんには、天皇制や部落問題のような、日本人でも答えづらいことへの意見を求められますよね。最初は『朝まで生テレビ!』ですか?

デーブ そうだと思う。昔は1時から6時までの生放送で、いろんなタブーを扱っててスゴかったですよ。僕も、野坂昭如さんや大島渚さんと一緒によく出てた。

―― これだけ長くコメンテーターとして活躍できているのは、なぜでしょうか?

デーブ 本当なら、外人をいちいち日本のテレビに出す必要ないよね。だからこそ、僕が出るからには、しっかりした情報提供をして、建設的なコメントをしようと心がけてます。僕は日本にも長くいるから、日本とアメリカ両方のことが分かってる。でも、日米の比較論ばかりもしたくない。

■日本のことを何でもかんでも褒める外人になりたくない

―― デーブさんは、昔の対談で、「日本のマスコミには、“期待される外人像”というものがあって、そういうパターンに知らず知らずのうちに外人は、はめられちゃう。一種のワナみたいになるんです」と語っています。

デーブ 日本のことを何でもかんでも褒めるような外人がいっぱいいるでしょう。まるで観光庁が雇ってるみたいな。そういう白々しいのはやりたくないんです。やっぱり正直にしゃべらないと説得力がないよ。美味しいものは美味しい、そうでなければ美味しくないとはっきり言う。自然体でいきたいと思ってます。

―― 日本の社会問題について発言するにあたって、気を付けていることはありますか?

デーブ 僕のコメントをいろんな人が聞いてるし、ましてや今はネットの時代で、誰の気分を害するか分からない。だから、自分のポリシーとして、決めつけ論をやらない。例えば、いくら学校の先生が悪いことをしたからって、「今の学校の先生は給料ドロボウ」なんて言っちゃダメじゃないですか。悪い先生って、全国に1%いるかいないかでしょう。「今の若者はダメだ」もそう。若者もファーストフード店で一生懸命働いたりしてる。たまにバイト先でふざけた悪質動画を流したりするけど、そうじゃない人が圧倒的に多いんだから。「今の若いやつは……」という言い方が、一番嫌いです。自分のコメントの影響を考えて、受け取る側の気持ちを忘れないことだと思います。

■今なら『オールスター反社祭』の方がタイムリーでいいかな(笑)

―― デーブさんは、日本の芸能界のことも詳しいですよね。

デーブ 1984年から35年以上テレビに出ているからね。日本のタレントでもそんな人なかなかいないでしょ。日本の芸能界の伝説的な人物が亡くなったとき、その人のことを語れる人って少ないですよ。僕は、意外と会ったことあったりするから。スタジオを見渡すと、コメントできるのは僕とテリー伊藤だけってことがある。なんか笑っちゃうよね。

―― 今回の吉本芸人の騒動については、かなり厳しいコメントをされてます。

デーブ 今は、テレビの危機です。それなのに、芸能プロダクションとテレビ局が癒着して、バーターなんかやってる。ゴールデンで面白い番組は、『水曜日のダウンタウン』とか、有吉とマツコの番組とか、ごく一部。ほかの番組は、テロップやナレーションがオーバーで、即興性の面白さがなくなってきてる。僕もテレビの世界では長くやってきてるから、責任も感じますよ。吉本の騒動にしても、テレビが好きだから厳しく言うんです。何とかしてテレビ離れを止めたいんですよ。

―― それだけ強い思いがあるんですね。

デーブ 僕は、日本のエンターテイメントにはすごく感謝してます。出会ってなかったら、今の自分もないからね。なのに『オールスター感謝祭』には呼んでくれない(笑)。今なら『オールスター反社祭』の方がタイムリーでいいかな(笑)。

( #2 デーブさんにあえて聞く「YOUは何しに日本へ?」 に続く)

写真=杉山秀樹/文藝春秋

18歳で上智大に留学 デーブ・スペクターにあえて聞く「YOUは何しに日本へ?」 へ続く

(笹山 敬輔)

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