【新連載】オカンといっしょ #2 Yellow(前篇)

【新連載】オカンといっしょ #2 Yellow(前篇)

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「よお! ガキー!!」

 ある日、学校から帰ったら、家の奥から投げかけられた大声。家の中がいつもと違う空気だった。

「こっち来いやー!」

 ヤクザのオッサンは、目の前にいるだけで威圧感が凄かった。髪型はオールバックで、頭髪は全て後ろ側に引っ張られている。

「いくつや?」

 顔面は彫刻刀で彫ったかのように彫りが深く、ゴツゴツしている。新作は岩みたいな顔しとるなと思った。

「……11歳」

「もうチン毛とか、生えて来たんか?」

 何でそんなん聞いてくんねん。この新作、デリカシー、ゼロやわ。

「生えてへん」

 すると、ヤクザは笑った。その顔は、ドラクエのばくだんいわにそっくりだった。

ばくだんいわは、ドラクエの中でも厄介な敵で、死にそうになると爆発してこっちに大ダメージを与えてくる。この新作も、ばくだんいわと同じで、よく爆発した。

 運転中に前を走る車が鈍臭い運転だったら、赤信号で止まった時に車から降りて文句を言いに行く。

 母はいつもそれを嫌がっていたが、僕はそれをカッコイイと思っていた。前を走る車全部にキレたって、オレら専用の道にしたったらええねん。

 初めて会った日。

 僕も、このばくだんいわを爆発させた。夜になっても、いつまでも帰らないヤクザに、腹が立った僕は、「早よ帰れや!」と言いながら、ヤクザのセカンドバッグを、ベランダから投げ捨てた。

「何さらしとんじゃ! ガキー!!」

 次の瞬間、気付いたら、僕の体は持ち上げられて、床に吹っ飛んでいた。

「さっさと拾って来い!」

 僕は、泣きながら、セカンドバッグを拾いに行った。数日後、仲直りするために、二人でドライブに行きった。

 それからは、たまに二人でドライブに行くようになった。

 ヤクザのオッサンと喋るのは、楽しい。

 見た目は怖いけど、中身は遊園地みたいな人だった。

「学校に、好きな子とかおんのか?」

「おらんよ。女、嫌いやねん」

 助手席から見上げるヤクザの横顔。

 頬に、タバコを押し付けたようなヤケドの跡が残っていた。たまたま、タバコ吸っとる時に周りに灰皿がなくて、頬っぺたで消したんかな?

「なんでや? もしかして、男が好きなんか?」

「ちゃうよ。どっちも嫌いや。何で、どっちかを好きやないとアカンの?」

「いや、別にアカン事ないけどよお」

「男と女、どっちも好きな人っておんねやろ?」

「おるよ。そういう奴らを、バイっていうねん」

「バイがおんねやったら、どっちも嫌いってのも、おってええやろ?」

 ヤクザがハンドルを回すたびに、左腕に巻いている金のブレスレットが、ジャラジャラとうるさい。

 ヤクザは何のために、こんなん着けとんねん?

「まあ、男は別に嫌いでええけど、何で女も嫌いなんや? 女はええぞ?」

「何がええん?」

「ナメたら、めっちゃヤラしい声出して感じよるねん」

「なんでナメるん? そんなん汚いわ」

 なんで大人はチュウしたり、そんな気持ち悪い事すんねやろ? オレは絶対、大人なっても、そんなんせえへんわ。

つづく(※小説「オカンといっしょ」は毎週金曜17:00に公開します)

(ツチヤ タカユキ)

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