日韓関係悪化とオリックス低迷 “ああ、これは駄目だ”と思ったら考えるべきこと

日韓関係悪化とオリックス低迷 “ああ、これは駄目だ”と思ったら考えるべきこと

ソウルの日本大使館近くで開かれた「安倍政権糾弾」デモ ©AFLO

 ああ、これは駄目だ。

 日韓関係が急速に悪化している。直接的なきっかけは7月1日に経済産業省が発表した、一部半導体関連物品に関わる包括的輸出許可から個別輸出許可への切り替えである。この措置は7月4日から実施され、この措置に韓国の政府、世論は激しく反発した。

 経済産業省は合わせて、韓国の輸出管理上の国カテゴリー変更(いわゆる「ホワイト国」からの排除)に関わるパブリックコメントの募集を開始、事実上、このパブリックコメント募集の終了後に、韓国に対する輸出管理を更に強化する事を「予告」した。そしてこの8月2日、日本政府は予定通り、閣議にて韓国の「ホワイト国」からの解除を実施する事を決定した。韓国政府、世論の反発は更に高まり、文在寅は一部日本メディアが「盗人猛々しい」とまで翻訳した言葉を用いて、日本政府を激しく非難した。

■問題にしたいのは「輸出規制」の影響ではない

 とは言え、筆者がこの状況で、冒頭に述べた様な「これは駄目だ」という感想を持つに至ったのは、日韓両国が日本政府の実施した「輸出規制」を巡って国内外で激しい非難合戦を繰り広げているからでもなければ、この「輸出規制」が両国の経済に与える影響を危惧しているからでもない。周知の様に、日韓両国はこれまでも、例えば歴史認識問題を巡って国内外での非難合戦を展開してきたし、今回の日本政府による「輸出規制」が両国の経済にどの様な影響を与えるかも、そもそもこれらの措置により、日本から韓国への関連物資の輸入が実際にどの程度妨げられるかが明らかでない現在の状況で、議論する事には意味がない。

 とりわけ輸出規制の現実経済への影響については、韓国政府、世論が今回の日本側の「輸出規制」措置を、7月初旬、輸出規制発表時点での日本の政治家の発言やメディアの報道等を根拠に、事実上の「禁輸措置」に近いニュアンスで理解しているのに対し、日本政府、とりわけ経済産業省や外務省はこの措置により大きな影響が出る事はない、としてその予想は大きく分かれた状態になっている。後者であれば、事態は単なる「空騒ぎ」に過ぎない可能性もあり、このどちらが「正解」なのかは、もう少し事態を見守る必要があるだろう。

 筆者がここで問いたいのは、両国の非難合戦や、未だその行方すら明らかでない「輸出規制」の経済的影響についてではなく、現在の状況に纏わる日韓両国の「言説」、わかりやすく言えば「理解」を巡る問題である。例えば、韓国内では今回の「輸出規制」に関して、日本の安倍政権に焦点を当てた議論が為されている。報道等でも「NO安倍」と書かれたプラカードを持ったデモ隊の姿が何度も大写しにされているので、その状況を目にした人も多いだろう。背景にあるのは、今日の事態は韓国に敵対的な「極右安倍政権」の特殊な性格により生まれたものであり、だからこそこの政権が退陣さえすれば、事態は解決するに違いない、という楽観的な理解である。

■日本国内にも存在する「希望的観測」

 そして同じ様な考え方は、日本国内にも存在する。「輸出規制」の公表後、日本国内では「文在寅政権とは対話が不可能だ」という発言が一部政治家等から為される一方、「輸出規制」により文在寅政権が窮地に陥り退陣するのではないか、という「希望的観測」が一部メディアにおいて為される事になった。そこにあるのは、今日の困難な日韓関係を作り出しているのは、特異な性格を持つ文在寅政権であり、故にこの政権さえなくなれば、問題は解決に向かうかも知れない、というやはり楽観的な考え方である。

 しかし実際の状況はこれらの楽観的な期待に見られるほど簡単ではない。昨年10月末の韓国大法院による元徴用工らに対する判決と、その後の文在寅政権の対日関係に対する後ろ向きの姿勢に、日本国内の韓国に対する苛立ちは高まっている。国内の世論がこの様な状況にある中、仮に今の政権が退陣し、新たな政権が成立したとしても、この世論に抗い、韓国への融和的な政策が実行できるとは思えない。

 韓国の状況も同じである。各種世論調査から明らかな様に、韓国の世論は日本への強硬な対応を支持しており、文在寅政権の対日政策もこれに後押しされた形になっている。この様な状況下、野党もまた日本への批判を強めており、何らかの事情で政権交代が起こったとしても、韓国の次期政権が日本に対して融和的になるとは思えない。つまり事態は、日韓のどちらの政権が退陣すれば解決する、と言うほど単純なものではないのである。

 ここで重要なのは、我々は時に困難な状況に直面した際に、その責任を(自らが考える)「悪しき」個人や集団に押し付け、それらを排除する事により何かが解決できるかの様な幻想を持つ傾きがある事である。しかし、それは一種の現実逃避に過ぎず、現実から遊離したどの様な幻想を持っても問題は何も解決しない。結果として残るのは「ベンチ」の交代にも拘わらず改善しない状況に対する絶望であり、さらなる不信の高まりに他ならない。

 しかし、特定の個人や集団への安易な責任の押し付けや罵倒は、単なる現実からの逃避であり、実際にはそれにより問題が解決する訳ではない。とりわけこの20年間、頻繁な「ベンチ」の交代とその結果を見てきたオリックスファンならその意味はよくわかる筈だ。だからこそ、シーズンが後半に入ったこの時期、我々は安易な「ベンチ」への批判を浴びせる前に、今シーズンの「ベンチ」が何を目指して来たのか、そして彼らが実際に何を成し遂げたのかを、一旦冷静に振り返る必要がある。

■オリックスの「ベンチ」について評価すべき二つのポイント

 そしてこの観点から今シーズンのオリックスの「ベンチ」の仕事を振り返った時、我々はそこに大きく二つの評価すべき成果がある事を知る事ができる。一つは言うまでもなく、山本由伸をはじめとする若手投手陣の成長であり、このチームのファンの中に、この点に異論を挟む者はいないだろう。本コラムでも繰り返し書いている様に、彼らの成長は金子、西、と言うこれまでのチームを支えて来た二大エースの流出を補うに余りあるものであり、チームの大きな希望となっている。

 評価すべきポイントの二つ目は、盗塁数の大幅な増加である。現在のチーム盗塁数は93で西武に次いで2位。昨年度は年間を通じて97盗塁だったから既にその数に迫っている事になる。キャンプから強調された積極的な走塁の重要性は、シーズン中盤になってチームに定着した感があり、昨年まで脚を有効に使えなかったチームは、今シーズン、リーグでも最も積極的な走塁を見せるチームの一つになっている。とりわけ一番打者に定着した福田の活躍は目覚ましく、プロ入り2年目でありながら、正にチームの顔の一人に相応しい存在に成長したと言える。昨年と比べて選手の大きな入れ替えがない中でのこの変化は、嘗て4年連続でリーグ盗塁王の座に君臨した西村監督の面目躍如と言うべきであろう。

 勿論、物足りない点がない訳ではない。とりわけ打線の得点力不足は深刻であり、相変わらず主砲の吉田正尚に頼りきりの状態が続いている。しかし、この状況は寧ろ、中島、小谷野の二人が抜けたにも拘らず、積極的な戦力強化を怠ったフロントの責に帰せられるべきである。「ベンチ」に打つ手があったとは思えず、これを批判するのは酷である。リリーフ陣の不振も同様であるが、この点については遅ればせながら、ディクソンの抑えへの転向が成功し、今後に期待が持てる状態になりつつある。

 強調すべきは、成績こそ「例年並み」であれ、今年のオリックスは「シーズン当初に予定していた野球」がある程度できている事である。だからこそ、筆者は今の「ベンチ」を評価したい。若返ったメンバーを中心とした、スピード感のある野球で残り2ヶ月、リーグを思う存分掻き回して欲しい。ファームにはT?岡田や杉本ら、得点力不足を補うに足る選手も控えている。「ベンチ」の評価をするのはそれからでもきっと遅くない。そして何よりも、「シーズン」はまだ続くのだ。

◆ ◆ ◆

※「文春野球コラム ペナントレース2019」実施中。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイト https://bunshun.jp/articles/13116 でHITボタンを押してください。

(木村 幹)

関連記事(外部サイト)