不気味すぎだけど……なんかカワイイ! 江戸っ子が夏を乗り切った“納涼アート”コレクション

不気味すぎだけど……なんかカワイイ! 江戸っ子が夏を乗り切った“納涼アート”コレクション

三代歌川豊国「東海道四谷怪談 蛇山庵室の場」国立歴史民俗博物館蔵

 怪談のたぐいは夏にかぎる。日本ならではの怪異な存在、妖怪たちの活躍をたっぷり観て回れる展覧会が開催中だ。千葉県佐倉市・国立歴史民俗博物館で開催中の「もののけの夏 −江戸文化の中の幽霊・妖怪−」。

■江戸っ子が「納涼」を求めて行き着いた“怖いもの”

 庶民文化が大きく花開いた江戸時代後期のこと、人々の人気と話題をさらったのは、妖怪や幽霊などを描いた絵巻や錦絵だった。現代ほどではないにしても、江戸の夏だってやっぱり暑かったはず。一服の清涼を求めて、皆が怖いものに触れたがったのだった。

 当時大流行した妖怪ものが「百鬼夜行図」である。想像力の及ぶかぎり、ありとあらゆる姿かたちをした妖怪が、列をなして続々と現れ出てくるさまを描いてある。それぞれの表情も豊かで、強烈な個性を発揮している。怖いことは怖いのだけれど、それにも増してこれを描いた者のイマジネーションの豊かさに圧倒されてしまう。いや、当時はこれらの妖怪がどれもおなじみだったのかも知れず、ならば江戸の人たちのたくましい想像力に感嘆する以外にない。

 今展では狩野洞雲益信による《百鬼夜行図》が観られる。細部までよく描きこまれた妖怪たちは、妙な言い方になるが人間くさくて、なんとも親しみが持てる。

 美人画で知られる浮世絵師、喜多川歌麿による《化物の夢》もある。悪夢を見た子どもをあやす母親、その上部には夢の中の光景が描かれていて、首長の見越し入道らの姿が。妖怪たちがいかに身近で、人口に膾炙していたかを窺わせる。

■怖いけど……なんかカワイイ妖怪たち

 当時ヒットした歌舞伎の演目の中にも、妖怪・幽霊は多く登場した。「東山桜荘子」は、暴君に家族もろとも惨殺された浅倉当吾が、もののけとなって次々と姿を変えつつ敵にまとわりつく話。歌川国芳による《東山桜荘子 織越館の場》は、歌舞伎で演じられたさまざまな場面を、みごと一枚の絵に収めてある。

 江戸時代末期になると、武者絵と呼ばれる錦絵が流行した。英雄たちの活躍を描く冒険譚を、勇壮な絵柄に落とし込んだものだ。展示ではその格好の例、月岡芳年による《於吹島之館直之古狸退治図》も間近で観られる。

 大判と呼ばれるサイズの紙を3つ繋いでワイドな巨大画面をつくる「大判錦絵3枚続」形式の作品で迫力たっぷり。大画面を埋め尽くすように描かれているのは、不気味ではあるけれど思わず笑みも漏れそうな愛嬌たっぷりの妖怪たち。本来の主人公たる英雄を差し置いて、引き立て役だったはずの妖怪のほうが大いに目立ってしまっているのだった。

 展示室じゅうがばけもの尽くし。時代を超えて迫ってくる強烈な想像力の産物を堪能されたい。

(山内 宏泰)

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