ローラ、オリラジ中田に思う、芸能界「忖度の体系」

ローラ、オリラジ中田に思う、芸能界「忖度の体系」

(c)時事通信社/文藝春秋

 文春今週号の左トップは「ローラ『10年奴隷契約書』」。所属する芸能事務所とのあいだでローラは、どさくさに紛れて不利な契約書へのサインをさせられ、もめて、泥沼化しており、あげくは事務所社長からは「辞めるつもりなら、暴露本を出してやる」、「日本だけでなくアメリカでも活動できなくするぞ」と恫喝されたとある。

■タレントが「干される」のは、テレビ局による忖度

 タレントの所属事務所からの移籍や独立によるトラブルは、週刊誌ネタの定番となっているが、ここにきて公正取引委員会がそれらの調査に乗り出す。記事によれば、独占禁止法に抵触する不公正な契約が結ばれていないか調べる方針で、「芸能人の独立や移籍が制限されたり、事務所を辞めた後の活動を妨害しているケースはないかが調査」されるという。

 移籍や独立でタレントが「干される」のは、テレビ局による忖度が要因と言われるが、今週の文春にもいくつか、芸能界の忖度がキーワードの記事がある。

「ワイドショー芸人は“忖度が命”」では松本人志をはじめとする芸人たちの忖度っぷりを伝える。松本は現在、フジ系の情報番組「ワイドナショー」にコメンテーターとして出演しており、番組で共謀罪を取り上げた際、テロ防止のために共謀罪はあってもいいのではないか、多少の冤罪もやむを得ないのでは、とコメント。これについて、為政者に対する忖度ではないかと見るむきもある。

 また松本ら大物芸人とテレビ局の間の「クッション役」として評価されているのが東野幸治で、テレビ局員いわく「番組が自分になにを求めているか理解し言動に移せる」能力が高いのだとか。記事は「“忖度力”を発揮することで存在感を主張」していると評している。

■松本人志を批判したことへの忖度

 別の記事「今度はイクメンアピール オリラジ中田妻のプロデュース力」からは、松本を批判したオリラジ・中田敦彦の近況がうかがえる。

 今年2月、茂木健一郎が《日本のお笑い芸人たちは、上下関係や空気を読んだ笑いに終止(ママ)し、権力者に批評の目を向けた笑いは皆無。後者が支配する地上波テレビはオワコン》とツイートしたところ、「ワイドナショー」で松本がその言説を槍玉にあげる。そのことで中田は松本に対する批判を展開。したらば所属事務所が謝ったほうがいいと言い立てる。それどころか「テレビからの出演依頼も激減したという」と記事にはある。なんとも忖度が絡みあった事態である。

■あらかじめ自主検閲をしたうえで企画を立ててくる

 すっかり時代のキーワードと化した忖度。今年に入って、森友学園問題を機に一般に定着する。それどころか、ご当地・大阪では「忖度まんじゅう」まで登場し、土産菓子として人気だという。

 この忖度については、二年前に刊行された辻田真佐憲『たのしいプロパガンダ』(イースト・プレス)が示唆に富んでいる。

 プロパガンダと聞くと、政府や軍など公的機関が主導となって制作されたものを想像する。しかし、役人や軍人が推し進めるようなものはつまらないのが相場だし、そんなものに大衆は見向きもしない。

 そのためこの著書によれば、戦前の日本の優れたプロパガンダは、《民衆の嗜好を知り尽したエンタメ産業が、政府や軍部の意向を忖度しながら、営利のために作り上げていった。》

 たとえば大本営陸軍報道部で雑誌の検閲を担当していた軍人は、戦後、次のように振り返る。《出版社のベテラン社員は、自分たちが指示するまでもなく「軍の考えていること、軍の望むところ、はては報道部の嗜好まで先刻承知していて」、あらかじめ自主検閲をしたうえで企画を立ててくるため、文句のつけようもなかったと。》

 娯楽を活用して国民が自発的に協力したくなるように仕向ける、これが「陸軍の総力戦研究の到達点」でもあった。それは忖度によって組み上げられていったものといえよう。

 能年玲奈改め「のん」の干されっぷり、テレビでの無視されっぷりは、芸能界・テレビ界に確立された「忖度の体系」の到達点だろうか。なおさら「ローラ『10年奴隷契約書』」にある公正取引委員会の動きに注目である。

(urbansea)

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