西武・木村文紀、好調の秘密は“メヒアの一言“と“神バット”

西武・木村文紀、好調の秘密は“メヒアの一言“と“神バット”

今季、キャリアハイの数字を記録している木村文紀 ©時事通信社

 8月25日(日)vs楽天戦で、木村文紀選手がキャリア最多タイの第10号ホームランを放った。開幕前から「今年は10本はホームランを打ちたい」と、強く掲げていたこともあり、5シーズンぶりの2桁本塁打は、自身にとっては成長を実感できる喜ばしい結果となった。

 本塁打だけではない。ここまでチームが117試合を戦ってきた中で104試合に出場。69安打、35打点はいずれもすでにキャリアハイの数字を記録している。
 
 今季は、右翼手レギュラーの筆頭候補として開幕から先発起用が続いていた。だが、5月に入り打撃の状態を落とし、戸川大輔選手、愛斗選手、鈴木将平選手ら台頭しつつある新鋭にスタメンを譲ることも増えていた。

■メヒアが口にしたさりげない一言

 そんなある日のこと、ちょっとした転機が訪れた。それは、普段でも当然のように交わされている、何気ない会話からだった。7月9日vsソフトバンク戦(@ヤフオクドーム)、木村選手はベンチスタートだった。同じくスタメンを外れたメヒア選手と、試合中にバッティング談義に花を咲かせていると、メヒア選手が口にしたさりげない一言が頭に止まった。

「メジャーリーグを見ていても、良いバッターは、テイクバックの時に、グリップをキャッチャーの方に向けているんだよ」

 早速、翌日から取り入れてみると、第2打席でライト方向へのホームラン。即結果が出たことからも「これ、良いのかもしれない」。手応えを感じ、その後も毎日の練習から意識するようになり、今でもチェックポイントの1つに組み込んでいる。グリップエンドを捕手へ向けることで、木村選手は「自然と右肘を張る形になり、肘が抜けやすくて強く振れる」。メヒア選手は「最短距離でボールをアタックできる角度。それにより、より長くボールが見られるし、速いスウィングスピードで振れるから、力がより一層伝わる」と、それぞれその効果を力説する。実際に、木村選手の打撃練習の打球を見た上でも、両者とも「フォーム自体は大きくは変わってないけど、同じ柵越えでも、飛距離が伸びている」と口を揃える。

 それを証明するかのように、本塁打のペースが明らかに増した。7月9日にこのベンチ内での会話が行われる前までは約3ヶ月で3本だったが、以後は1ヶ月半で7本である。

 打席内容に関しても、自身が課題とする「あっさりと三振する」という打席が減り、「追い込まれてからもしっかりとファウルで粘って、球数を投げさせたり、なんとかヒットにしたりすることができるようになってきた」と、向上していることは明確だ。

■打撃を支える“神バット”の存在

 もう1つ、木村選手の打撃を支えているのが、シーズン途中から使い出した“神バット”の存在である。熊代聖人選手のバットが、それにあたる。熊代選手のバットといえば、西武時代、数年前から浅村栄斗選手(現楽天)が夏場に疲労がたまり、バットが振れなくなって状態を落としてしまう時に使用し、成績を上げていたことはライオンズファンの間でも知られた話だ。だが、実は、その“熊代バット”も変化しているのだという。

 一昨年の秋季キャンプで出会った一本こそが、今、“神バット”として評判になっている。その誕生について、熊代選手は次のように語ってくれた。

「自分でも、バットを短くしたり、長くしたり、形、長さなどいろいろ微調整して試行錯誤していたんです。その中で、自分が試合に出ていた2、3年目にあやかりたいなと思って、当時使っていた平尾(博嗣)さんモデルに戻したんです。ただ、その形は変えずに、『めちゃくちゃ軽くしてください』と、ミズノさんに頼んでできてきたのが、850gの今のもの。それを、昨シーズンの開幕前に、例年のごとくアサ(浅村選手)が『ちょっと貸して』といって使ったら、『これ、めっちゃ良い!』となって、年間通して使ったら、打率.310、32本塁打、127打点という成績を出したという。そこから、浅村が使ってるというのもあって、“熊代のバット”として有名になって、他球団の人からも『欲しい』と言われるようになりました」

 ライオンズ内にも、岡田雅利選手、源田壮亮選手など、ファンは多い。その使い心地を、木村選手は「軽いけど、最高のバランスをしている」と大絶賛する。事実、熊代モデルを使って打った本塁打は、10本中8本だというのだから、まさに“神バット”だ。

 とはいえ、バットを変えただけで永続的に本塁打数が増えたり、打率が上がったりするほど甘い世界ではないことは言うまでもない。打撃コーチや監督からもらう日々のアドバイス、前述のメヒア選手との会話から得たヒントなど、「これ」と感じたものを積極的に取り入れ、試してみたことの1つ1つが相乗効果を生み、結果に表れているということだろう。

 2019シーズンも残り30試合を切った。8月はここまで全試合に先発出場しているが、まだ規定打席に達してないことからも、本人にレギュラーをとりきれているという考えは一切ない。「外野には、他にも若い良い選手がたくさんいますからね。何としても、このまま最後までライトのポジションを守り抜きたいという気持ちが強いですし、まだまだ若手には負けたくないという思いが強い。ここから、もっとしっかりと数字で表したい」。

 首位・ソフトバンクとの差は3.5 (8月26日終了現在)。まだまだリーグ連覇は十分狙える。防御率4.57(同)というチーム事情から、1試合5得点以上が必要との計算となるが、そのためには、下位打線がしっかりと切れ目なく上位に回せるかが大きなカギを握る。「塁に出れば、僕がホームに還ってきてるケースが多い。つまり、僕さえ出られれば、しっかりと点が取れるということ」と、木村選手も自身の役割の大きさを自覚している。チームの逆転優勝のためにも、ラストスパートに燃えている。

◆ ◆ ◆

※「文春野球コラム ペナントレース2019」実施中。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイト https://bunshun.jp/articles/13174 でHITボタンを押してください。

(上岡 真里江)

関連記事(外部サイト)