朝ドラ『なつぞら』で夢を諦め、ワンオペ育児に取り組む渡辺麻友が健気すぎる

朝ドラ『なつぞら』で夢を諦め、ワンオペ育児に取り組む渡辺麻友が健気すぎる

現在放送中の朝ドラ『なつぞら』に出演中の渡辺麻友 ©AFLO

「元同僚の子どもを週5で預かっている専業主婦です。先日、その子がうちの娘の誕生日に急遽お泊りした時は大変でした。夜中に激しくグズりだし、結局元同僚夫婦に迎えに来てもらいましたが、私が2人目を妊娠していることもあり、体力的にも精神的にも追い詰められてしまって。夫もいつも帰りが遅く、毎日のワンオペ育児で倒れそうです……」(30代主婦 元神7)

 もし、昭和40年代にワンオペという概念とインターネットがあったなら、茜さんは誰にも言えない気持ちをwww.の波の中に書き込んでいたかもしれません。茜さん、3年越えのワンオペ育児、本当に大変だったね……茜さん、ツラかったね。

 と、第22週【なつよ、優しいわが子よ】を完全に茜さん(渡辺麻友)応援視点で観てしまったNHKの朝ドラ『なつぞら』。オンエアも残すところあと1か月を切り、主人公のなつ(広瀬すず)は、いつの間にかアラフォーになりました。

 なつや茜と同じ状況に置かれたことがない人間が見ても「えっと、それは……」な展開が山盛りだった第22週。仕事と子育ての両立に悩んだ(もしくは現在悩んで戦っている)視聴者には違和感の矢がグサグサと刺さり、SNSもかなりの勢いで燃えた模様。うん、まあ、1歳児の発熱とか子どもの誕生日会お泊り問題とか……あれは燃えるわ。

 ここでちょっと、なつと茜の関係性を振り返ってみましょう。

■子供預け先に悩むなつに、「私で良かったら」と手を挙げた茜

 ほぼ同時期に東洋動画に入社した2人。最終的には作画チームで机を並べ、なつは演出部を辞めた坂場一久(中川大志)と、茜は同じチームの下山(川島明)と結婚します。

 先に妊娠した茜は出産後も今のまま働きたいと社長のもとに1人で直談判に行くも玉砕。契約社員以外は無理だと言われ、そのまま退職。

 が、そのすぐ後になつの妊娠がわかった際は、神地(染谷将太)の音頭でアニメーターたち10人以上が社長室に押しかけての団体交渉。社長の口からは「あなたにはむしろ作画監督になってもらおうと思っていました」との言葉も飛び出し、出産後の立場も確約されるという展開に。

 そして、なつは長女・優を出産。しかし保育園は見つからず、夫の一久が1年間は自宅仕事で優の世話をし、1歳になった優の預け先をあらためて探している時に「私で良かったら」と手を挙げてくれたのが茜でした。

■茜の奮闘ぶりや苦しさはどこへ?

 自分が目の前で砕かれた夢を着々と叶えようとしているなつのために、リスクが大きい乳児を預かり、その後3年以上に渡って自分の娘・明子とともに優の世話をする茜……茜さんってなんなの? そんな人いる? 仏様なの?

 ドラマ内で茜の奮闘や苦しさはほぼ描かれませんでしたが、そのキツさは第三者でも容易に想像できるレベル。

 皆が出かけ、誰もいなくなった部屋には乳児が2人。大人と話したくても夫の帰宅は遅いし、元同僚はバタバタとやってきて帰ってしまう。子どもは好き。本当に可愛い。でも、自分の夢をあんなに簡単にあきらめて良かったのだろうか。なっちゃんと私は一体何が違ったのかな、私はどうして必要とされなかったんだろう。またいつかアニメーションを作りたいな、そんな日はもう来ないのかな……あ、茜さんっっ(号泣)!

 

 と、本編で描かれなかったところまで想像し、勝手に号泣したのは、茜役・渡辺麻友が登場時から積み上げてきたキャラクターの説得力と自然な演技のなせるワザ。まゆゆ、可愛いよ、まゆゆ、切ないよ。まゆゆ、アイドル時代はノーマークですまんかった。

■完璧な芝居で『なつぞら』に説得力を持たせる女優・渡辺麻友

 渡辺麻友といえば、言わずと知れたアイドルグループ・AKB48の卒業生。2007年の劇場公演デビュー以来、着々とグループ内での存在感を示し、2009年の第1回AKB48選抜総選挙では4位、翌年の第2回総選挙では5位と順位を落とし、涙ながらに「この現状には満足していません」とコメント。2014年の第6回総選挙で初の1位を獲得します。

 その後、2017年にAKB48を卒業し、おもに女優としての活動をスタートさせて、主演舞台や主演ドラマを経ての『なつぞら』茜役。AKBではつねに1位を目指し、1位にこだわった“まゆゆ”が、女優としても役柄としても主演を支える立場のポジションで完璧な芝居を魅せる妙。茜の芯は強いが我は強くないというキャラクターを真っ直ぐ演じる彼女の空気感が『なつぞら』に説得力を持たせているのは間違いないと思います。

 また、まゆゆ自身、子どものころから絵を描くことが大好きで、アイドルにならなかったら美術系の大学に行くか漫画家になりたかったと語っていたり、一時期はアニメグッズやフィギュアで一部屋が埋まってしまったというほどの“本物オタク感”。子どもの扱いも上手く、右手を優、左手を明子とつなぎ歩いている時に、左側にかけたショルダーバッグが落ちそうになっても、明子の手を離さずお母さんとして幼い娘と接する姿がとてもリアルでした。

 しかしなあ、いくら昭和40年代と言っても“やらざるを得ない人”に育児の丸投げをしてフォローがないのはキツい。マコ(貫地谷しほり)さんも、茜が優を預かると申し出た時に「お金を払えばいいのよ(キリッ)」って……。そうなんだけど、なつと一久が提示した金額は6000円。当時、映画のチケットが500円だったことを考えて計算すると今の金額で約22000円程度。1日1000円少しの託児所、延長保育あり、さすがにこれは都合が良すぎる。せめて下山さんがしっかり育児に参加している姿をドラマで見せて欲しかった。

■ヒロインよりも魅力的な同世代の女性キャラクターたち

 そして、なつ。子どもを預けて働くのは大変だと思うけど、お世話になっているお宅のお子さんの誕生日くらい覚えておこうよ、「わあ、明子ちゃん、おめでとう」じゃなくて。夕方、優が下山家に残りたいとグズっても、そこは連れて帰らないと。茜さんは夕食のリクエストを自分の子どもより先に優に聞いちゃうような人だよ。誕生会でも明子が主役じゃなくなっちゃうよ。てか、なつ、仕事も子育ても大変なはずなのに、どうしていつもそんなに綺麗でいられるの? アラフォーなのに20代みたい。

 ヤバい、だんだん鼻息が制御できなくなってきました。

 それにしてもこのドラマ、子供時代から自分のポリシーを貫き通す夕見子(福地桃子)、天陽が旅立った後も北の大地で家族を支える靖枝(大原櫻子)、夢をあきらめ、優しい眼差しでしっかり立ち続ける茜と、ヒロインより同世代の女性キャラクターの方が魅力的に思えるのはなぜでしょうか。

 なつよ、100作目の朝ドラももうじき終わるな……。

(上村 由紀子)

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