【緊急スクープ】“令和の怪物”佐々木、まさかの日韓戦19球降板の全真相《現地発》

【緊急スクープ】“令和の怪物”佐々木、まさかの日韓戦19球降板の全真相《現地発》

韓国戦の1回、マウンドで永田監督(右)に声を掛けられる佐々木 ©共同通信社

星稜・奥川が語っていた「佐々木にあって、自分にないもの」 U-18野球W杯大会、韓国現地レポート から続く

 オーストラリア戦に敗北し、5位という結果に終わったU-18野球W杯の高校日本代表。大会の流れを変えたのが、韓国戦における“令和の怪物”佐々木朗希(大船渡)の“19球降板”だった。

 降板の裏には何があったのか。この春の岩手大会から佐々木に密着取材するノンフィクションライター、柳川悠二氏による韓国発の緊急寄稿。

 ◆

■捕手が明かした「ボールに血が付いている」

 わずか19球である。

 令和の怪物こと、佐々木朗希(岩手・大船渡)のU-18野球W杯は、1イニングの登板だけで終わってしまった。

 大一番・韓国戦に向かうバスの中で、高校日本代表の仲井宗基ヘッドコーチに、「日本の宝!」と激励され、マウンドに送り出された佐々木に、1回裏のマウンドからアクシデントが起きていたことは明らかだった。直球に最速163キロの本来の球威がなく、制球も安定しない。

 最初の打者をショートゴロに打ち取ったあと、2番打者に4球続けてストライクが入らず、3番打者にも3ボールとなった。打ち損じ(レフトフライ)に助けられたものの、直後、高校日本代表の永田裕治監督がマウンドに向かう。

「(捕手の)水上(桂、兵庫・明石商業)が『ボールに血が付いている』と(ジェスチャーで)言ってきたので……。(佐々木)本人は『あとひとり投げさせて欲しい』ということでした」

 ゼロに抑えはしたものの、佐々木はこの回で緊急降板する。永田監督はDHを解除して、打席に専念する予定だった“高校四天王”の一人、西純矢(岡山・創志学園)を慌ててマウンドに上げた。

 大学日本代表との壮行試合(8月26日)の直前に右手中指に血マメができ、登板によって症状を悪化させた佐々木は、W杯の予選ラウンドを回避し、治療に専念していた。短期決戦の期間中に二度も同じ箇所に血マメを作り、登板できない屈辱を再び味わうことになった。

 私は、佐々木に訊ねた。自身の運命を呪うかのように、「“どうしてなんだろう”という想いが募っているのではないか」と。

 佐々木は静かに頷くだけだった。

■登板に備えていたカナダ戦でかなりの球数を投げていた

 石川・星稜の奥川恭伸が7回、103球投げて18三振を奪った前日(9月5日)のスーパーラウンド初戦・カナダ戦の試合中、佐々木は幾度も肩を作り、登板に備えた。永田監督は奥川が降板したあとの8回を、佐々木に託すつもりだった。幸いにして、日本が加点したことで、佐々木ではなく、飯塚脩人(千葉・習志野)をマウンドに送った。

 韓国戦は延長10回のタイブレークにまでもつれ、日本はサヨナラ負けを喫した。直後、真っ先に報道陣の前に立った日本高等学校野球連盟の竹中雅彦事務局長は、「マメの再発」だったと説明し、「昨日のカナダ戦で何度も肩を作り、かなりの球数を投げた」影響があったことを認めた。

 そして、永田監督が記者団の前に登場した。以下、やりとりを抜粋する。

――(佐々木に)先発を告げたのはいつか。
「昨日の夜、本人に伝えました。理学療法士の先生も、整形外科の先生からも、『ゴー』がでていましたので、いけるだろうと」

――初回のマウンドでは何を話したのか。
「ケガのことですので、言わんといてください」

――今後の起用法に関して。
「もう厳しいと思います」

 先発投手の初回降板によって、投手陣はスクランブルとなり、高校日本代表は6投手をつぎ込むも、最後は力尽きた。投手起用に関する質問のあたりから、永田監督の声色は変化した。

「(昨年、3位に終わった)アジア選手権でも、私の独断で(投手起用を)決めたこともありますし、そうでなかった場面もありました。これはもう内々の話です。負けたのは私の責任です。それだけです。それ以上はお話しできません。いろいろあります。だけど、みんな頑張っている」

■「それは内々にさせてください」

 韓国戦では2-0とリードした8回裏2死二、三塁の場面で、三塁を守っていた石川昂弥(愛知・東邦)に送球ミスが出て、同点に追いつかれた。タイブレークの10回表に2点を奪った日本だったが、裏の守りでこの回の頭から登板した林優樹(滋賀・近江)がバント処理に手間取り、一塁へ悪送球。サヨナラの呼び水となった。ふたりに限らず、野手陣にミスが相次いだ。遊撃手ばかりを選出して、一塁と二塁を本職にする選手を欠いていたことも、大会を通じて投手陣の足を引っ張っていた。

「今日は守備のミスで点を取られましたね。はい。それだけです。あとはもう使った監督が悪い。以上です」

 どうしても永田監督には聞かなければならないことがあった。試合前から佐々木に右手中指の違和感があったのなら、どうしてそれを監督である自分に伝えてくれなかったのか――。指揮官として、そういう感情が芽生えても仕方ないだろう。

 緊急降板によって、西や飯塚など、この大会で好投が続いていた投手を前倒しで使わざるを得なかった。そのしわ寄せが、韓国戦の終盤に表出した形で大一番に敗れたのだ。

 永田監督は怒気含みにこう話した。

「それは内々にさせてください。これ以上はお答えできないです。以上です。いろいろありました。昨日も……あんまり言わないほうがいいですね。みなさん、どうしてあそこであの投手だったのかと言われるかもしれませんけど、私ら、預かっている身ですので、それ以上は……以上です。子供らには、こんなことを考えて欲しくない。かなりの人間が泣いていましたけど、まだ明日があるので」

 佐々木は初回のマウンドで、永田監督に「あとひとり投げさせてください」と訴えた。

「彼の将来を考えて登板させました。なかなか自己主張をしませんので、彼は。その彼が自己主張してきましたので……以上です。ヒジ、肩は何の問題もないです。身体は何の問題もない。以上です」

■動揺した指揮官の不可思議な言葉遣い

 時折、永田監督の目は泳ぎ、短いフレーズの言葉をまくしたてるように話したあと、必要以上に語尾に「以上です」と付け加えた。その回数は計13回にも上った。不可思議な言葉遣いには、指揮官の動揺とやりきれない怒りも垣間見えた。

 それにしても、と思う。最速163キロの球速を誇る「令和の怪物」を預かる指導者の難しさだ。

 岩手大会決勝で、故障のリスクを未然に防ぐために、大船渡の國保陽平監督は、佐々木の先発を回避させ、試合に起用しなかった。

 國保監督も来韓しており、韓国戦の前日には永田監督と話し合う様子もあった。代表に招集するにあたって、永田監督らは國保監督からもヒアリングし、肉体の状態を確認した上で、代表に選出していた。

 肩やヒジの状態のみならず、血マメの治療や再発にも十分過ぎる配慮をしてきた。それでも再発は防げず、わずか1回で降板せざるを得ない状況となってしまった。

「怪物」と呼ばれてきた17歳は、163キロという数字に見過ごされがちだが、まだまだ故障のリスクを常に抱える高校生の肉体で、ナイーブな身体なのだろう。

 35年ぶりの甲子園を目指した大船渡の夏を、不完全燃焼のまま終えた佐々木は、W杯の戦いもまた、不完全燃焼で終えることになってしまった。

(柳川 悠二/週刊文春)

関連記事(外部サイト)