「集団自殺が起きた一軒家を購入したら……」大島てるが語る“関西最恐の事故物件”とは?

「集団自殺が起きた一軒家を購入したら……」大島てるが語る“関西最恐の事故物件”とは?

大島てる氏 ©文藝春秋

 事故物件というと、借りるにしても買うにしても「結構安いんでしょ?」と言われることがよくあります。しかし、ここにはいくつかの誤解があります。結論から言ってしまうと、事故物件だからといって必ずしも値段が安くなるわけではないのです。

 たとえばURのように「この部屋で殺人事件が起きました」「前の入居者が自殺しました」などと正直に告知して安くしてくれるところもあるのですが、一方でそうした事実を隠し、通常の価格で契約を結ぼうとしてくる悪徳業者もいます。

 そのような業者からの被害を防ぐため、私は事故物件の情報提供サイト「 大島てる 」を運営しているのですが、たとえ全ての不動産屋が正直に「ここは事故物件ですよ」と伝え、価格を割り引いたとしても、それでも絶対に安くならないケースも存在します。それは、「誰もそこが事故物件だと気づいていなかった」という場合です。

■強盗容疑で逮捕された中国人の男

 一体どんな事故物件なのか。具体的な例を紹介しましょう。これは、関東地方のある団地で実際に起きたケースです。複数の路線が乗り入れ、都心へのアクセスも良い県内有数のターミナル駅から徒歩圏内という好立地に建つその団地には、一人の中国人の男が住んでいました。

 やがて男は部屋を引き払い、中国に帰ります。そして、その部屋には新しい住人がやって来ました。人気のエリアに建つ団地なので、おそらくほとんど間を置かずに引っ越してきたのではないでしょうか。何の変哲もない、ごくごく当たり前な退去と入居。しかし、それから数年後、前の住人が帰国先の中国において強盗容疑で逮捕されたことから、事態は急変します。

■自宅で首を絞めて殺した……

 実は、その男が帰国する直前、日本ではある女性が行方不明になっていました。しばらくして、その女性は河川敷で白骨化した遺体となって発見されます。何者かによる殺人でした。その事件について、強盗容疑で逮捕された男が「私が犯人です」と、中国で自白をしたのです。

 自宅で首を絞めて殺した。遺体は河川敷に運んで捨てた……。男はこのように供述しました。ここで重要なのは、「自宅」とは彼が日本で住んでいた団地のことを指す点です。その部屋には先述の通り、数年前から新たな住人が住んでいました。その住人にとってはある日突然、慣れ親しんだ自宅が殺人事件の現場という“事故物件”になってしまったのです。

 その事実は、男が自白するまで不動産屋も知りませんでした。知らないことを事前に告知することはもちろん不可能ですから、業者に非はありません。こうして、「誰もそこが事故物件だと気づいていなかった」という、特殊なケースが生まれたのです。とはいえ、犯人の男だけは全てを知っていたわけですが……。

■遺体を埋めた意外な人物とは?

 同様のケースで、数年前には関西地方のある民家の敷地から、住人とは全く関わりのない女性の遺体が発見されたこともありました。この事件で捕まったのは、なんとその家の建築工事に携わっていた男でした。男は自宅で妻を殺害した後、当時はまだ建設中だったその民家の敷地を遺体の隠し場所に選んだのです。

 念願のマイホームを建てていたら、工事関係者が勝手に遺体を埋めていた――。これもまた、知らない間に自宅が事故物件になっていた不幸な例です。

 一方で、事故物件だと知って入居したものの、その後にさらなる悲劇が待ち受けていた、というケースもあります。「関西最恐の事故物件はどこですか?」と聞かれたとき、私がすぐに思いつく物件も、まさにその事例に当たります。

■自殺サイトで出会った“仲間”と集団自殺

 多くの観光客で賑わう、関西でも人気の高いエリアから少し外れた町に、その一軒家はありました。木造の3階建てで、細長い、いわゆるペンシルハウスです。その3階の一室で練炭による集団自殺が起きたのが、そもそもの始まりです。亡くなった内の1人はその家に住む男性でしたが、あとの2人は「自殺サイト」で知り合った“仲間”たちでした。

 ちなみに集団自殺というのは、だいたい練炭を用いて行われます。皆で首を吊ったり、刃物で刺し合ったりしても、誰かは失敗して死にきれないことが多いからです。そうなると、「集団自殺に見せかけた殺人事件ではないか」と、生き残った人が疑われてしまうことも少なくありません。「全員確実に死ぬ」という目的を達成するには、やはり密室で有毒ガスを発生させることが一番なのです。

 少し脱線しましたが、集団自殺が起きた後、その一軒家は“事故物件”として、通常よりも安い価格で売りに出されました。すると、ある男性が事故物件であることを承知して、そこを購入したのです。集団自殺があった家でも気にしないし、それが理由で安くなるならむしろお得だ――ということだったのでしょう。

■シロアリ業者が床下を覗くと……

 それから10年ほどの月日が経ったある日のこと。変わらずその事故物件に住み続けていた男性は、シロアリ駆除の業者を呼びました。シロアリが出たのか、業者に営業をかけられたのか、それともなんだか床下が気になったのか……。理由はわかりませんが、その家を訪れたシロアリ業者が床下を覗くと、そこにはブルーシートに包まれた、人の体ほどの大きさの“何か”が2つ横たわっていたのです。

 ブルーシートを開けてみると、中から出てきたのは……1体ずつの、白骨化した女性の遺体でした。ブルーシートで厳重に巻かれていたからか、ほとんど臭いもしなかったようです。

■犯人は一体誰なのか?

 一体なぜ、この家の床下から遺体が出てきたのか。ブルーシートに包まれていたことからみても、これは何者かによる死体遺棄事件であり、殺人の可能性もあります。では、ここに埋めることができた人物は誰なのか。

 遺体の状態があまりにも悪かったため、正確なところまではわからなかったようですが、どうやらその遺体が埋められたのは、3階で集団自殺が起きるよりも前のことだったそうです。それを考慮すると、一つのシナリオとして思いつくのは、こんな状況です。

 元々この家に住んでいた男は、とある理由から2人の女性を殺害。その遺体をブルーシートに巻いて床下に隠します。しかし、罪の意識に苛まれたか、あるいは「もう逃げられない」と思ったか……追い詰められた男は、自殺サイトを通じて出会った仲間と一緒に自殺しました。

 その後、ここを「練炭自殺があった家」とだけ認識していた男性が購入。床下に2人の遺体があることにも気づかず、10年近くその上で住み続けていた――ということになります。

■ある日、自宅が突然“事故物件”になる

 日本中で日々起きている自殺や殺人。しかし、私たちはその全てを把握しているわけではありません。ある日、お気に入りの寝室が数年前に起きた殺人事件の現場だと判明したり、庭や床下から遺体が発見されたりして、自宅が突然“事故物件”になる――。そんな不幸に見舞われる可能性も、決してゼロではないのです。

 ちなみに、「練炭自殺があった家」を購入した男性は、床下から遺体が発見された後も引っ越しはせず、合計で5人もの遺体が発見されたその小さな家に、今も住み続けているそうです。

(大島てる)

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