白石加代子「役者人生50年のうち22年を費やした“朗読劇”の魅力」

白石加代子「役者人生50年のうち22年を費やした“朗読劇”の魅力」

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「恐怖」というキーワードで選ばれた小説を白石加代子さんが朗読する「百物語」シリーズは絶大な人気を博し、2014年に99話で“最終夜”を迎えた。

「『百物語』が終わる時はさほど抵抗なく、さっぱりした気持ちでした。ところがしばらく経ってから自宅の本棚に並んだ台本を抜き取って読んでみると、思い出がふわっと甦ってきたんです。作品に対して深入りしない方なのに『百物語』が身体に相当深く食い込んでいたみたい。今年で役者人生が50年を迎えますが、そのうち22年を朗読劇と共に過ごしてきました。その時間の大切さを改めてしっかり自覚した瞬間でした。そこで、少し違う形で新たな舞台を作れたら面白いかもしれない、と思いついたのです」

 その1年後にスタートしたのが、新企画「笑った分だけ、怖くなる」。台本を手に持ったまま舞台上で芝居をするスタイルは「百物語」を踏襲しつつ、共演者に俳優の佐野史郎氏、演出に小野寺修二氏を迎えた。

「佐野さんはシャイだけど協調的な方で、この企画自体をきちんと外側から見ていらっしゃる。実は前回の公演で使用した音楽は全て佐野さんの選曲だったんですよ。唐十郎さんの状況劇場にいた時に音響係をしていたそうで、センスがすばらしい。そして演出の小野寺さんはパントマイムを得意分野とする方だから、行間の読み方がとても新鮮で面白かった。何より3人がすっかり打ち解けて、一言いえば分かり合える仲になれたことが嬉しかったです。私が再演を持ち掛けると、他のお2人も同じ気持ちでいてくださった。それで、もう1度やることになったのです」

 第2弾のプログラムは2本立てで、筒井康隆作「乗越駅の刑罰」と井上荒野作「ベーコン」を上演する。

「筒井さんの作品は『百物語』で何度も演りましたが、あの方はマゾなのね?(笑) 乗越駅にやってきた小説家が駅員に理不尽な仕打ちを受けるのだけど、筒井さんご自身が虐められているとしか思えない。徹底的に主人公を痛めつける思いの深さに、佐野さんと2人でどこまで辿り着けるかな。もうひとつの『ベーコン』は、死んだ母の恋人に想いを寄せる女性の物語で、何ともエロティックで背徳の匂いがする。怖いだけでなく、大人の世界を表現したいと思っています」

 ライフワークとなった朗読劇の醍醐味を、白石さんはこう語る。

「小説はセリフと地の文から成り立っているでしょ。朗読で楽しいのは、地の文を読むこと。地の文は作家が物語の世界を作りあげたり、登場人物の運命を動かしたりするときの力業。その筆の力の魅力をいつも感じています」

しらいしかよこ/東京都生まれ。1967年、劇団早稲田小劇場(現SCOT)に入団。89年に同劇団を退団。蜷川幸雄氏をはじめ、現代を代表する演出家が手掛けた作品群に出演。92年にライフワークとなる「百物語」シリーズをスタート。2012年に旭日小綬章受章、14年に菊池寛賞を受賞。

INFORMATION

白石加代子女優生活50周年記念公演「笑った分だけ、怖くなるvol.2」
10月17日(火)〜22日(日)
あうるすぽっと(豊島区立舞台芸術交流センター)他、全国ツアーあり 
問い合わせ MTP TEL:03-6380-6299
http://mtp-stage.co.jp/wara2/top.html

(「週刊文春」編集部)

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