フランスの画家デュフィが描く「暮らしの美」が日本人の心を打つのはなぜか

フランスの画家デュフィが描く「暮らしの美」が日本人の心を打つのはなぜか

『公式レセプション』 1942年 油彩/キャンバス 大谷コレクション

 明るく軽やか、かつ親密で、画面の隅々まで光に満ち満ちている。

 ラウル・デュフィの描く絵画は、いつだってそうだった。ときに「お手軽な装飾用の絵」などと軽く見られることはあれど、それがあるだけでその場の雰囲気が華やぐ作品なんて、なかなかない。

 デュフィの絵画と、盛んに手がけていたテキスタイルデザイン作品に着目した展覧会が始まっている。東京汐留、パナソニック汐留美術館での「ラウル・デュフィ展 絵画とテキスタイル・デザイン」。

■南仏で才能が開眼

 デュフィはフランス・ノルマンディー地方の港町ル・アーブルの出身。そこは今も昔も寂れた漁港というよりは、カラフルな建築に陽光が降り注ぎ、海面がキラキラと輝く美しい土地だ。つつましくも音楽好きな一家に育ったデュフィは、美術学校へ進学して絵画の道を志す。

 絵画については、いろいろな方面から影響を受けた。モネやルノワールらの印象派。マティスらが主導したフォービズム。形態と色彩について根元に遡って突き詰めたセザンヌにも心酔した。

 そのうえでデュフィは、1920年ごろから南仏に腰を据えて制作をするようになった。土地との相性もよかったのか、ここで独自の画風が開花する。華やかで柔らかい色調と優美な輪郭線で描き出されるモチーフは、海辺の光景やコンサートホール、楽器など心が浮き立つようなものばかり。画面から人生の愉しみ、生きる歓びが放散される作品が続々と誕生した。

■日本文化とも呼応する「暮らしの中の美」

 人生の愉しみ、生きる歓びをうたい上げる画風なのだから、当然ながら描く題材は、生活に密着したものとなった。デュフィはさらに、生活の中にあるものをアートにしていくことにも積極的だった。自身の才能をキャンバス上に展開するだけではなく、本の挿絵、雑誌の表紙、舞台美術、陶器デザインなども広く手がけた。

 人気を博したのはテキスタイルデザインだった。リヨンの絹織物業者と共同で、大胆な色柄の布地を発売して、上流階級の女性のあいだに大いに流行した。

 今展ではまず、「これぞデュフィ」と思わせる幸福感あふれる絵画作品が観られる。次いで、テキスタイルデザインの原画や下絵、オリジナルのテキスタイルなどをまとめて見せてくれる。

 確信を持って装飾に満ちた作品や生活を彩るモノを生み出したデュフィの「美」への向き合い方は、美がいつも生活とともにあった日本の文化と呼応するところが大きい。それゆえデュフィは日本で高い人気を誇っているのだろう。会場でデュフィ流の「暮らしの美」を感得したい。

(山内 宏泰)

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