2019年のスワローズを“スポーツ紙の見出し”で振り返る【後編】

2019年のスワローズを“スポーツ紙の見出し”で振り返る【後編】

プロ野球300人目となる通算1000安打を達成した山田哲人 ©文藝春秋

■寺原隼人、山田大樹の相次ぐ活躍

 前回は2019(令和元)年の6月中旬時点までお届けした「2019年のスワローズを“スポーツ紙の見出し”で振り返る」の後編は6月29日、秋田で行われた対巨人戦から。この日、ヤクルトは2対6で巨人に敗れるのだが、そこにあるのは「もう自力V消滅」という寂しい見出し。まだペナント折り返し前だというのに、何という切ない終戦宣言であることか……。

 同じく秋田で行われた翌30日の対巨人戦もヤクルトは敗れるのだが、日刊スポーツでは試合写真ではなく、山田哲人の大きな写真とともに、「山田 1000安打」と、26歳11カ月での偉業をたたえている。7月3日のマツダスタジアムでは「村上 満弾20号」が勝利の呼び水となり、2カ月ぶりの連勝。この日、見事なピッチングを見せたのがベテラン・寺原隼人。今季2勝はいずれも対広島戦だった。これが寺原にとっての最後の勝利。プロ18年目の大ベテランの凄みを感じさせるピッチングだった。

 前回、「山田本塁打打つとチーム10連敗」(6月21日付)という屈辱的な見出しを紹介したが、今季初の4連勝となった7月6日の対中日戦を報じる記事では「12連続空砲から抜けた 山田ダ〜ン ヤク立った ヤク勝った」と華やかな見出しが掲載された。8日の対DeNA戦では山田大樹が移籍後初勝利。ソフトバンクから移籍後、2年目にして待望の初勝利だった。「僕にとっては長くなかったけど、家族や妻にはそういう思いをさせた。今年契約してもらって、割り切れた」と喜びを語った。さて、10日の対DeNA戦に勝利して、ここで前半戦終了。前半戦終了時の成績は次の通り。

 84試合34勝48敗2分――勝率.415

 もちろん最下位である。首位・巨人とは15.5ゲーム差。5位・中日とは4ゲーム差。それでも、小川淳司監督は「まだあきらめる数字じゃない。Aクラスは十分可能性があると思う。1試合を全力で戦っていくだけ」と後半戦への意気込みを語っている。もちろん、僕もまだ全然あきらめてはいなかった。ねっ、みなさんもそうでしょう? そして、7月11日、夢のような一日が訪れる――。

■辛いことを忘れさせてくれたドリームゲーム

 19年7月11日――。この日はあいにくの空模様だった。しかし、神宮球場には2万7727人という大観衆が詰めかけた。もちろん、「スワローズ ドリームゲーム」を観戦するためだ。野村克也監督率いる「GOLDEN 90's」と、若松勉監督率いる「Swallows LEGENDS」の激突。両チーム全員が懐かしい顔ぶれだった。

 この日、忘れられない名シーンはたくさんあったけれど、白眉は4回に代打で登場したノムさんだった。日刊スポーツには「バット振った 代打ノムさん84歳 相手ビビった申告敬遠」とある。ノムさんが代打で登場したときの神宮の盛り上がりはすごかった。僕もスタンドで歓喜の涙を流した。なぜなら、現役時代はパ・リーグひと筋だったノムさんにとって、これが生涯初となる「ヤクルトユニフォームでの打席」となったからだ。これで泣くのは仕方ないよ。

 ここには池山隆寛のコメントも載っている。「また神宮でプレーする姿を見せられて、よかった。野村監督、若松監督、先輩、後輩と一緒にプレーできてうれしい」とあるが、池山のユニフォーム姿を見ることのできたファンの方が嬉しかったはずだ。そして、シーズンオフには池山隆寛二軍監督就任というサプライズが待っているのだ。

 憂き世を忘れる夢のような一夜が過ぎると、待っていたのは厳しい現実だった。後半戦も、やっぱり波に乗れない日々が続いた。後半戦最初の明るい話題は7月24日の「167センチ石川167勝」だろう。その脇には「身の丈勝ち星」というかわいいフレーズが。石川雅規は今年も頑張ってくれた。本当に頭が下がる。しかし、いつまでも石川に頼っている場合じゃないよな。……って、何年、同じことを言っているんだろう? 7月終了時点で首位・巨人とは17ゲーム差。ますます僕らは現実逃避をしていくことになる……。

 夏の訪れは村上宗隆の一発とともに始まった。8月1日対DeNA戦では「松井超え 村上21号&王以来 70打点」とある。松井秀喜さんと王貞治さんを超える記録で連敗を5でストップした。3日の対中日戦では「22号!!高卒2年目72打点 村上 王超え!!」、翌4日は「村上2戦連発23号」と続く。前編でも書いたけど、「19年は村上の年」だと言っていいだろう。19歳のお肌ツヤツヤ青年に、僕らはどれだけ救われたことだろう。

 東京ドームでの巨人戦を報じる10日付では「自力CS消滅した」の文字が躍るものの、ハナからCSなど意識していないからノーダメージ。12日の対DeNA戦のヒーローもまた村上だった。「村上 史上最年少サヨナラ弾」が飛び出した。神宮球場で不覚にも落涙したことは、この文春野球でも書いた。13日は「サザエさんナイター」が行われた。それを受けて14日付では「YSきょうもいい勝利〜? バレV打」。翌14日は石川の見事なピッチングをたたえる「39歳石川 快投B斬り」。8回一死までノーヒットノーランという実に見事な投球だった。

■村上宗隆に救われ、奥川恭伸に希望を見る2019年

 さぁ、ここからは「村上ウィーク」の始まりだ。17日の対中日戦で「村上プロ初2発 清原並ぶ点83」を皮切りに、21日の対広島戦で「村上 清原も超えた84打点」、22日は「中西 清原以来だ 村上30号」。27日の対DeNA戦では「村上 清原に並んだ31号 中西に並んだ86打点」と続く。誰か、今すぐ村上に国民栄誉賞をあげてくれ!

 一方、山田哲人も負けてはいない。14日の対DeNA戦での「山田30号」を筆頭に、18日の対中日戦では「履正社OB山田31連続盗塁成功」、23日の対阪神戦ではついに「33連続盗塁成功 山田日本一」の文字が躍る。昨年8月26日以来、33連続盗塁成功という日本記録を達成したのだ。30日には「山田 日本新シーズン32連続盗塁成功」とあり、翌31日には「山田『ここぞ』10回決勝3ラン」と続く。バットでも、足でも魅せるミスタースワローズなのだ。これで8月が終了。首位・巨人とのゲーム差は20・5ゲーム。我々は異空間を生きているかのような真夏の夜の夢が続いた。

 辛い日が多い夏の日ではあったが、9月4日は「YM砲記念日」と名づけたい。「村上最強10代」と「山田200号サヨナラ満弾」が並んで大見出しとなっている。村上は清原和博氏を超える32号、中西太氏を超える90打点を記録。山田は通算200号をサヨナラ満塁ホームランで決めたのだ。

 さて、時代の一歩先を行く我々ヤクルトファンは、9月に入るとすぐに2020年を生き始める。覚悟はしていたけど、9月8日付では久しぶりの一面。「小川監督進退伺 宮本ヘッドは退団」という恐れていた現実を突きつけられた。このときの衝撃は文春野球で書いたけど、今でも悔しくて、悔しくて仕方がない。

 また、この日の中面にも衝撃的な記事が掲載される。「ヤクルトV戦士 畠山引退」。こちらも、覚悟はしていたがやっぱり辛い出来事だった。記事にある「寂しさや悔しさはない。ボロボロになるまでできたことは幸せ」というひと言に救われる思いがした。10日付で正式に「館山 畠山引退発表」とあり、翌11日付では小川監督が正式に辞任を表明。「そういう世界」という見出しが躍っている。……勝負の世界は非情だ。

 16日付では「寺原今季限り引退」とある一方、21日付には「高津新監督内定」と報じられた。23日付も、忘れられない選手の引退記事が掲載された。「こんなヤツはなかなかいない 三輪ヘッスラで引退」。降雨コールドで勝利した後の雨中の引退セレモニーとビショビショになりながらのヘッドスライディング。三輪正義選手、僕はあなたを忘れない。

 9月28日に全日程が終了。首位・巨人と何ゲーム離れたのかは記録を紛失してしまったため、よくわからない。近々、「記録がないため19年シーズンは無効」という閣議決定がなされることだろう。同時に来年から宮本ヘッドも公人ではなく私人と閣議決定される見込み。

 さて、19年シーズン、最後の最後に大ニュースが飛び込んできた。そう、10月17日に行われたドラフト会議である。「ヤクルト 奥川」! 二つの固有名詞の羅列なのに、どうしてこんなに夢と希望がダダ漏れしてくるのだろう? 我々ヤクルトファンにとってはファンタジーの世界であり、空想上の生き物だと思っていた「甲子園準優勝投手」という存在が、荒木大輔以外にこの世に実在するのだということを初めて知った。高津監督ありがとう! 2020年のスワローズには、やはり、「希望」という言葉しか浮かばない。

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(長谷川 晶一)

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