北九州で4人の女性が集団自殺……“事故物件を知り尽くす男”大島てるは、なぜそのニュースに驚いたのか?

北九州で4人の女性が集団自殺……“事故物件を知り尽くす男”大島てるは、なぜそのニュースに驚いたのか?

大島てる氏 ©文藝春秋

 これまでの連載では、まずは関東、次に関西の事故物件を取り上げてきましたが、今回は九州の事故物件を紹介したいと思います。注目したいのは北九州市。本州最西端の山口県下関市とは、関門海峡を挟んでお隣の市になります。

( 全3回の1回目/ #2 に続く)

■なぜか“特殊な”事故物件が集中している「トライアングル」

 そんな北九州市の事故物件というと、「 北九州監禁殺人事件 」を思い出す方も多いのではないでしょうか。男が内縁の妻とともに、拷問や虐待によって被害者たちをマインドコントロールし、合計で7人もの命を奪った凄惨な事件。2002年(平成14年)に監禁されていた女性が逃げ出して事件が発覚した際には、非常に大きなニュースになりました。

 とはいえ、今回紹介したいのは、それとは全く違う物件です。ただ、「北九州監禁殺人事件」の現場からは、車を使えばすぐの場所にある物件で、エリアとしては近いところに位置しています。

 そこには非常に“特殊な”事故物件が、ほとんど距離を置かずに3つも存在しています。地図上でそれぞれの物件を頂点にして線を引いてみると、綺麗な直角三角形を描くことができます。この「トライアングル」で起きた事件を、1つずつ紹介していきましょう。

■高層マンションで発見された4人の女性の遺体

 もっとも新しい事件は、そのうちの1つの頂点である高層マンションで起きました。タワーマンションとまでは言えませんが、それなりの高さがあるビルの一室で、4人の女性の遺体が発見されたのです。

 しかし4人は家族でも、友人同士でもありませんでした。1人はその部屋の住人でしたが、残りの3人はSNSを通して集まった、おそらく初対面の自殺志願者たち。練炭を用いた集団自殺でした。

■4人は閉め切った室内で練炭を燃やした……

  前回の記事 の中で、「集団自殺はなぜ練炭で行われるのか」について述べました。首つりや刃物を用いた集団自殺では、誰かが失敗する可能性が高く、そうなると「自殺を装った殺人事件ではないか」と疑われることにも繋がる――というのが、その大きな理由でした。この事件でも、4人は確実に全員で死ぬために、閉め切った室内で練炭を燃やしたのでしょう。

 ただ、大家の立場からすると、4人もの人間が同じ部屋で集団自殺するというのは、とてもショックが大きいはずです。たとえばこれが飛び降り自殺であれば、遺体が発見されるのは屋外になるので、部屋そのものは直接の死亡現場にはなりません。ただ、練炭自殺となると、正真正銘「この部屋で○人が死んだ」ということになり、その影響を考えると、経済面でも大家へのダメージは少なくないでしょう。

■すぐに忘れ去られてしまった事故物件

 この事件は、当初こそ大きく報じられたものの、殺人というわけでもなく、有名人や小さな子供が亡くなったわけでもなかったので、続報はなく、すぐにほとんどの人から忘れ去られてしまいました。しかし、私はその現場の住所を確認して驚きました。そこはすぐ近くにあと2ヶ所、とても印象的な事故物件がある場所だったからです。

 ここで公平を期すために、というと少しおかしいかもしれませんが、一応補足しておくと、高層マンションなどが集まるエリアに事故物件がいくつも存在している、ということ自体は、実は当たり前のことです。

■世帯数が多ければ事件も事故も起きる

 法令上の制限があるため、高い建物は通常大通りに面した土地に建っています。すると、東京などでは特にそうですが、ある程度発達した都市に住む日本人は、その多くが大通り沿いに住んでいるということになります。

 細い路地が入り組む住宅街に住んでいる人ももちろんいますが、大通り沿いに建つ集合住宅、なかでも高層マンションは入居している世帯数が桁外れに多いからです。

 世帯数が多ければ、中には火事を起こす人も、自殺する人も、孤独死する人もいる。家族や住民同士のいざこざから殺人を犯す人もいる。そして高い建物が存在すれば、そこから飛び降りる人もいる――。そう考えると、大通りに沿った一帯に事故物件が何軒も存在することは、特段珍しいことではないのです。

■他の殺人事件が平凡に思えてしまうエリア

 しかし、「普通ではない死に方」となると、話は別です。今回紹介した集団自殺などはその一例で、4人もの人が同じ部屋で同時に亡くなるというのは、事故物件の中でも“例外”に含まれる事件です。実は、この“トライアングル”のすぐ近くでは、父親が小さな子供をテレビ台の下に閉じ込めて殺害してしまった、という悲しい事件も起きています。しかし、これからお話しする2軒を見ていくと、それすら平凡な殺人事件に思えてしまうのです。

 さて、次は三角形の“2点目”のマンションを紹介しましょう。北九州の“トライアングル”を語る上では、ここからが本番と言えるかもしれません。その事件は、「あの部屋に住んでいる女性の姿が見えない」という、とある住人の通報から始まりました。

( #2 に続く)

マンションの一室で発見された“ミイラ化した遺体”……大島てるが語る「事故物件の裏にちらつく謎の祈祷師」 へ続く

(大島てる)

関連記事(外部サイト)