【日本ハム】ライバル球団の視点で考えた「則本昂大はなぜ攻略されたか?」

【日本ハム】ライバル球団の視点で考えた「則本昂大はなぜ攻略されたか?」

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■「知り抜いた相手」と戦うCSの面白さ

 CSファーストステージは両リーグともに1勝1敗で第3戦にもつれ込む展開となった。パ・リーグ党の筆者はもちろん西武と楽天の「赤い決戦」を楽しんでいる。西武が圧倒的な勝率を残した「炎獅子ユニホーム」(楽天戦は着用の8戦全勝!)を選んだため、前代未聞の同色系対決が実現してしまった。グラウンド上はパッと見、敵味方の判断がしづらい。ファンにもわかりにくいし、もし選手が見間違てミスするようなことがあったらせっかくのビッグゲームが台無しだ。これはシーズン中、そうであったように楽天がホーム用の白いユニホームを着る等のハンドリングができなかったかなぁと思う。

 本稿の締切タイミングは10月16日午後イチ、第3戦プレーボールの5時間前だ。ここまで2戦は密度が濃くて、本当に見応えがあった。秋の長雨と重なってグラウンド整備に苦労しているセに比べ、ドーム球場の多いパは過密日程には強い。これは選手にしてみたらやりやすさがかなり違うと思う。最初に旗幟(きし)鮮明にしておきたいが、筆者はファイターズファンである。西武も楽天も本当になじみ深い相手だ。今季はこてんぱんにやられたなぁ。つまり、本稿は「ライバル球団の視点」でCSを読み解く主旨になる。

 ポストシーズンの密度の濃さに関して、異を唱える野球ファンはたぶんおられないのじゃないか。長丁場のレギュラーシーズンは持久戦だ。これはあんまり春から総力戦をやっていても息切れする。スランプに陥る選手や故障者が出たりしてもガマンである。やりくりしながらペースを保つ。今季はソフトバンクが見事にこれをやり切った。西武や楽天の勢いが勝った時期もあるけれど、ソフトバンクはペースを崩さなかった。

 が、短期決戦のポストシーズンはガマンしてたら終わってしまう。指揮官の見切りや見極めがカギを握る。濃密なのだ。1試合に3試合分くらいの要素が入る。重圧もものすごくて、見ているほうもクタクタだ。

 で、日本シリーズとCSの違いなのだが、もちろん華があるのは日本シリーズだ。全7試合あるから起伏に富んだドラマが展開される。日本一を決めるにふさわしい舞台だ。それはもう当たり前の話。

 ただ「他流試合」の日本シリーズと比べて、知り抜いた相手と戦うCSはまた別のコクがあるのだ。データを集め、クセを研究し、場合によってはシーズン中にエサを撒いておく。僕は毎年、あぁ、この打者にはこういう攻め方があったのかとか、この投手はこういう風に攻略可能なのかとか、うなってばかりいる。あるいはなぜこのエースがこうも簡単に攻略されたのか、すぐにはわからないながら録画を見ながら考えてみる。それをノートに取っておいて、後日、取材のときにぶつけてみたり。

 CSは「知り抜いた相手」の知らなかった部分、見落としてた部分を発見する機会なのだ。ビッグゲームはそうした隠された部分にスポットを当てる。両球団のスコアラーにとっては腕の見せどころだろう。「知り抜いた相手」に新解釈を施すのだ。と、ここまでの前フリで賢明な読者は既にお気づきじゃないか。僕はCSファーストステージ最大のミステリーは「則本昂大はなぜ攻略されたか?」だと考えている。

■則本昂大はなぜ攻略されたか?

 パリーグのCSは予告先発があって、第1戦が「菊池雄星vs則本昂大」と発表になったときは胸が高鳴った。リーグを代表するエース対決だ。菊池が今季の最多勝、最優秀防御率なら、則本は最多奪三振、奪三振率1位だ。投手戦必至。1点勝負かもしれない。ただ対戦成績を見ると気になる点があった。菊池は対楽天8試合8勝0敗(防御率0.82)と圧倒しているのに対し、則本は対西武4試合1勝2敗(防御率5.76)と芳しくない。

 で、フタを開けてみたら9回5被安打1四球無失点(121球、9奪三振)の菊池と、4回7被安打6四死球7失点(105球、1奪三振)の則本だ。明暗くっきりだ。キレッキレの菊池雄星は(想像以上であったが)ある程度、予想していた。ショックだったのは則本の姿だ。ストレートを打たれ、ボール球を見極められ、最後はスライダーもフォークも打たれて、投げる球がなくなっていた。あんな則本昂大は滅多に見ない。調子が悪かったかというと、絶好調ではないにしても、いい球もたくさんあった。何であんなにあっさり攻略されたのか。

 以下は単なる僕の見立てである。取材準備としてメモしておく類いだ。まず、西武打線の狙いがはっきり絞られていた。基本はストレート狙いだ。低目の変化球は全部捨てていた。で、早い回にストレートをガツンと叩くのだ。変化球は振らないからカウントがすぐ投手不利になる。あれは、A「(クセを見つける等して)投げる前から球種がわかっていた」可能性がまず考えられる。1シーズン通して投球フォームを研究し、秋まで温存して、大事な試合で使ってくるケースもあり得る。

 が、印象を言うと投球フォームのクセじゃなさそうなのだ。とすれば次に考えるのは、B「配球のクセ」だ。僕は則本昂大は球種、球速、制球、性格すべてにおいてトップクラスの投手だと思う。性格というのはエースの自覚や責任感のようなことだ。つまり、最高の投手なのだ。が、制球の良さ、エースの責任感が逆目に出ることもある。

 僕のシーズン中の則本の印象を言うと「勝負が早い投手」だ。奪三振王なのに球数が少ない。5球で勝負をつけたがる。これは捕手の嶋基宏もイメージを共有してると思う。おそらくエースとして完投を考えるからだ。またハートが強いから、ランナーを置いた場面で内角ストレートをズバッと投じる傾向がある。西武打線はそれを狙い打ちしていたと思う。

 これは「ランナーを置いた場面でカウント球はこう入る傾向がある」とか「カウント2ボール1ストライクではこういう配球が多い」とか、プロのデータの取り方はもっと具体的になるはずだ。狙い打ちの精度はその分、高くなり得る。また絶好調時は「わかっていても打てない」から、CS第1戦の則本は本来のキレじゃなかったのだろう。本来の則本はすべての球種が勝負球になるクラスだ。それが一つずつ勝負球を打ち込まれ、投げる球のないショック状態に陥った。

 僕らパ・リーグ党はあの則本の姿を覚えておかなくてはならない。各球団のスコアラーは来季のために映像をチェックしまくるだろう。CSにはそういう面白さがある。研究しがいがあるのだ。今夜、第3戦の行方は皆目わからないが、また新しい発見があるだろう。そしてファイナルステージではぜひ菊池雄星、もしくは岸孝之攻略の糸口をソフトバンクに示してほしい。どっちの「赤」が勝ち上っても楽しみは尽きない。

 附記  第3戦は楽天が見事勝利し、「下克上」を果たしたのだ。梨田監督の用兵(枡田起用&継投)がハマっている。こうなると本稿のテーマはもうひとつ別の色彩を帯びるだろう。則本は次回登板、何をどう変えてくるか? ?ファーストステージの屈辱をいかにはね返し、エースの責任を果たすのか?

(えのきど いちろう)

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