グレタ・トゥーンベリをサポート宣言 なぜシュワルツェネッガー72歳は『ターミネーター』に出演し続けるのか?

グレタ・トゥーンベリをサポート宣言 なぜシュワルツェネッガー72歳は『ターミネーター』に出演し続けるのか?

©2019 Skydance Productions, LLC, Paramount Pictures Corporation and Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.

 家電も自動車でも定番商品となったものは、マイナーチェンジを繰り返したり、大胆な変更を行なってみたりすることで消費者の心を繋ぎ止めるもの。それは4年ぶりの最新作となる第6弾『 ターミネーター:ニュー・フェイト 』にも登場する、殺人サイボーグ“ターミネーター”ことT-800にも同じことがいえる。

■今年72歳を迎えるシュワルツェネッガー

 ただしT-800の仕様変更は、30年以上にわたって同機を演じてきたアーノルド・シュワルツェネッガーのキャリアの紆余曲折が大きく作用している。ボディビルダーから肉体派俳優へ、アクション・スターから誰からも愛されるスターへ、俳優から政治家へ、政治家から酸いも甘いも噛み分けたベテラン俳優へ……。

 今年72歳を迎えるシュワルツェネッガーの生き様が歴代T-800の仕様を変えていったことになるわけだが、T-800がシュワルツェネッガーの人生を支えてきたともいえなくもない。シリーズを振り返りながら、そんな役柄と俳優の持ちつ持たれつな関係に迫っていきたい。

■元妻殺人の容疑者の起用が検討されていた

 未来から送り込まれてくるサイバーダインシステムズ社製のT-800が初登場するのは『ターミネーター』(1984)で、任務はウェイトレスのサラ・コナーを殺すこと。未来では人工知能スカイネット率いる機械軍と人類の抵抗軍の戦いが繰り広げられており、人類の勝利が確実のものとなっていた。その抵抗軍のリーダーが、後にサラが産む息子のジョン・コナー。スカイネットはジョン誕生を阻止すべく、サラ抹殺をプログラミングしたT-800を1984年のロサンゼルスに送り込む。後続の作品も、基本的にはT-800とコナー母子の対峙、スカイネットとの戦いが描かれると考えていい。

 いまでこそターミネーター=T-800といえばシュワルツェネッガーだが、当初スタジオ側は元アメフト選手で1994年に元妻殺人の容疑者となって世間を騒がせたO.J.シンプソンを、監督のジェームズ・キャメロンは同作で刑事役を演じていたランス・ヘンリクセンを起用しようと考えており、シュワ自身もサラを守るために抵抗軍が送り込む兵士カイル・リース役を希望していた。しかし、キャメロンはシュワと対面するやT-800に相応しいのは彼しかいないと直感。その読みは見事的中、ボディビル大会の最高峰ミスター・オリンピアで6連続優勝を成し遂げた人並み外れた筋肉隆々にも程がある肉体の重厚さ、オーストリア出身であることから生じる独特のイントネーションはたしかにマシーン感を醸し出すことに一役も二役も買っていた。

 こんなのが鎖のジャラついたジャケットやライダース・ジャケットをまとい、顔面右半分の表皮が剥げて金属製の骨格が露出しようとも追いかけるのをやめず、警察署の受付でサラとの面会を取り付けて「I'll be back(また戻ってくる)」と言い放って数秒後にパトカーで突っ込む形で署に戻って数十人の署員を皆殺しにしてしまう。

 日本公開時のキャッチコピー“冷酷!非情!残虐!史上最強《悪》のヒーロー!!”を地でゆく暴れぶりに観る者すべてが圧倒されると共に魅了され、シュワは新たなアクション・スターとして注目を浴びる。ちなみにT-800の顔面半分の表皮が必ず破れるのは本作からのお約束。「I’ll be back」も決め台詞として微妙にアレンジされたものが言い放たれるように。

■『ターミネーター2』で悪のヒーローから真のヒーローに

『ターミネーター』を足掛かりにシュワは『コマンドー』(85)、『プレデター』(87)、『トータル・リコール』(90)とヒット・アクションを連発、『ツインズ』(88)と『キンダーガートン・コップ』(90)でコメディにも進出してアクションを観ない層にも受け入れられた。そんなブレイク時にジェームズ・キャメロン監督と再びタッグを組んだ『ターミネーター2』(91)が放たれる。

 演じるのは、未来のジョン・コナーが1994年の自分を守るために送り込んだ2体目のT-800。前作とは真逆のプログラミングを施された設定だが、ジョン少年を守るためにバイクに跨ってライフルを撃ちまくり、自ら盾となって敵のターミネーターT-1000や警官隊が浴びせかける銃弾を全身で受け止める守護者ぶり、ヒーローぶりには逆転の興奮を感じた。さらに、ジョンと親子のような絆まで育み、溶鉱炉に身を投じて別れを告げる際には「(機械なので)泣くことができないが、泣く気持ちがわかった」なんて語るものだから、こちらも劇中のジョン同様に涙と鼻水でグシャグシャになりながらスクリーンのT-800に手を振ったもの。

 人を殺さず、少年を守るターミネーターを演じたシュワはスターのなかのスターに。こと日本では“シュワちゃん”の愛称で親しまれて数多くのCMに出演、かの淀川長治大先生も対面した際に「一緒に風呂に入りましょう」と熱望するほど。

■“反肉体派”俳優のアクション進出

 しかし、1993年に主演した超大作『ラスト・アクション・ヒーロー』でキャリアが大きくグラつきはじめる。あらゆる層にも受け入れられようとして緩すぎるアクション・アドベンチャーに仕上がってしまったこともあるが、無謀にも『ジュラシック・パーク』(93)と公開時期をぶつけたばかりに同作は、『ジュラシック〜』よりも巨額の製作費8500万ドル(93億円)を投じたにもかかわらず全米興収5000万ドル(54億円)しか稼げない大惨敗を喫する。また『ザ・ロック』(96)のニコラス・ケイジ、『ダイ・ハード』(88〜2012)シリーズのブルース・ウィリス、『ヒート』(95)のロバート・デ・ニーロといった“反肉体派”俳優のアクション進出もあって、シュワの存在感は徐々に薄いものになっていった。

■まさに惰性の『3』 州知事就任後の『4』

 そこへ放たれたのが『ターミネーター3』(03)。ジェームズ・キャメロンは作品の権利を手放してシリーズから完全離脱している状態で、シュワ自身もかねてから興味のあった政治活動に移行しようとしていたわけだが……なんだかんだいっても出た。演じた3体目は、心理分析回路が組み込まれたT-800のアップデート版T-850。未来から送り込まれた理由が『2』で完結した物語をひっくり返すような代物で、妙味となるはずの心理分析回路も活きておらず、『1』『2』の恐怖、感動、興奮を凌ぐものも特になし。まさに惰性の第3弾だったが、シュワの12年ぶりとなるシリーズ復帰はどうしても気になるということで世界興収4億3000万ドル(469億円)のヒットとなったが個人的にはなんだか弾けられない作品であった。

 2003年11月17日にシュワが第38代カリフォルニア州知事に就任してから6年、『ターミネーター4』(09)が作られた。人類と機械軍が激突している2018年のロスで、ジョン・コナーが抵抗軍のリーダーになるまでをカイル・リースとの出会いなどを交えて描く物語で、シュワ演じるターミネーターが登場するのかしないのかと話題に。嫌な予感がしつつもやっぱり気になって観に行くと、現れた4体目は試作段階のT-800。それは別に構わないのだが演じるのはシュワ本人ではなく、CGで再現した若い頃の彼の顔面に肉体がシュワと酷似していることから遠縁ではないかとも噂されるボディビルダーのローランド・キッキンガーの肉体を合成したもの。CG製ゆえに微妙にぎこちない動きをするフルチンのツギハギT-800に、なんだか切なくなってきた覚えがある。

■そこまでして出たいのかと切なくなる5作目

 2011年1月3日に知事を離任したシュワは、俳優業に復帰。『エクスペンタブルズ』シリーズ(10〜14)と『大脱出』(13)でライバルだったシルヴェスター・スタローンと共演を果たし、『ラストスタンド』(13)や『サボタージュ』(14)といった快作にも主演するが、さすがに往時の人気を取り戻すことができず。そこでスターとしての存在感を改めて示したいと挑んだ『ターミネーター:新起動/ジェニシス』(15)だが、サラとカイルが1984年から2017年へ時空移動したり、パラレルワールドが発生したりと話が支離滅裂の極み。

 加えてなんとも痛々しかったのが、老境に差し掛かったシュワの姿。彼が演じる5体目は1973年から40年以上にわたってサラを守るT-800で、シュワ本人の年齢(当時68歳)を考慮したかのようにきちんと老いていくのである。「表皮は生体なので老化する」との設定が言い訳に、「古いがポンコツではない」というセリフが強がりにしか聞こえず、そこまでして出たいのかと切なくなると共にキャメロンが未来から強大な権力を持った者を送り込んで『3』『4』あたりでシリーズを止めてくれないかとも思ってしまった。

■6作目の『ターミネーター:ニュー・フェイト』は観るべきか

 そうした筆者を含めたファンの想いを受け取ったのか、『ターミネーター:ニュー・フェイト』ではキャメロンが製作としてシリーズに復帰。しかも『3』以降はなかったものとする『2』直結の正当続編として制作されている。そしてシュワが演じる6対目は『〜ジェニシス』と同様に初老のT-800だが、今度はそれが見事にハマっているのである。

 謎の女グレースを邪魔することなく共闘し、ここぞというところで真価を発揮するT-800の姿が、『アフターマス』(16)や『キリング・ガンサー』(17)などの小品へ積極的に出演し、16歳の環境活動家グレタ・トゥーンベリをサポートする現在のシュワ自身の姿と重なって見えるのだ。そりゃあ、歴代ターミネーターでどれが最高かといえば、絶対の恐怖と至高の興奮を与えてくれた『1』『2』のターミネーターに決まっている。

 とはいえ、これまでの人生を滲ませたような今回のT-800も悪くはないのだ。先日の来日記者会見では「(T-800を演じるのは)これが最後」と発言し、劇中にもそれを暗示させる台詞が飛び出してくる。しかし、どんなに失敗作を突きつけられても「もう戻ってくるな」とは言い難くさせるものが、このシリーズにはあるのである。

(平田 裕介)

関連記事(外部サイト)