宮本浩次と西川貴教の共通点はシャウトの魅力。相違点は?――近田春夫の考えるヒット

宮本浩次と西川貴教の共通点はシャウトの魅力。相違点は?――近田春夫の考えるヒット

絵=安斎 肇

『Do you remember?』(宮本浩次)/『Crescent Cutlass』(西川貴教)

 今週は宮本浩次と西川貴教を聴いてみた。

 全く違う方向を向いているようにも思えた二作品ではあったが、案外共通点もあった。先ずは、何といっても、驚異的喉の強さ/安定感を誇っていることであろうか。

 昨今、我が国で“ロック”といったとき求められるもののひとつに、シャウトの魅力はあるだろう。まあ一種力自慢のようなものだが、そうした競い合いならば、双方ともにトップクラスの域といえる。

 ロックといわずいずれのジャンルにせよ、発声が楽曲の評価を左右する大きな要素であることは、いうまでもない。ただ、私が若かった頃は、強さや上手い下手とはまた別に“味がある”という文脈が、今よりは幅を利かせていたような気もするのだが……。

 ところで、全く違う方向を向いているといったのはサウンドプロダクションのことだ。

 西川貴教が――それこそデジタルというのがよろしいか――シンセサイザー/コンピューターを駆使した“打ち込み”を中心に、音響世界を構築するスタイルを展開してみせるのならば、宮本浩次はまさに堂々のアナログ。生バンド演奏の音での勝負と来た。

 やはり声に似合うサウンドというのはあるもので、それぞれのバックトラックとの相性は申し分ない……とかいいつつ、いや待てよ! 例えば、宮本浩次がEDMをやるとか、西川貴教がオーセンティックなギターバンドを従えてブルースロックを歌うとか、ふとそんな景色を想像してみたら、ちょっと音を聴いてみたくもなったものである。意地悪くいってしまうと、二人の新譜に「意外性」はあまりない。

 それにしても思わず見入ってしまったのが、宮本浩次の――ネット上でも検索可能な――『Do you remember?』の動画だ。スタジオでこの曲をバンドでプレイしているところを、ただまんま映像に残しただけな風の構成なのだが、宮本浩次の高音での絶叫が尋常ではない。こんなこと毎日やってたらもう絶対に死んじゃうョォ、と心配せずにはおれぬほどの、もの凄い熱唱ぶりを披露してみせるのである。

 そして見入ってしまった理由はもうひとつある。今、まんまスタジオでの演奏を映像に残しただけと書いたが、よく見てみるとこの動画、リアルはリアルなのだけれど、肝心な宮本浩次の口元が上手くマイクで隠されていたり、ギターなども音と絵がピッタリ合っているようないないような……? そのあたりの塩梅が、色々と気になって仕方のない編集になっているのだ。結局見ていくと、だまされてたんだぁと気付かされる寸法なのだが、宮本浩次の“エアボーカル”がなかなかの芸なので、是非チェックしてみてね! 笑えるから。あ、俺ひょっとして“ネタばらし”しちゃいました? 失礼失礼。

 西川貴教。

 映像に限って申せば、今回は、真面目なふりして実はおちょくった振る舞いの宮本浩次に、ちと太刀打ちできなかったかもしんねーなぁ(笑)。

ちかだはるお/1951年東京都生まれ。ミュージシャン。現在、バンド「活躍中」や、DJのOMBとのユニット「LUNASUN」で活動中。近著に『考えるヒット テーマはジャニーズ』(スモール出版)。近作にソロアルバム『超冗談だから』、ベストアルバム『近田春夫ベスト〜世界で一番いけない男』(ともにビクター)がある。

(近田 春夫/週刊文春 2019年11月14日号)

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