三代目JSB今市隆二のソロ ’90年代初頭の港区の景色を思い出す――近田春夫の考えるヒット

三代目JSB今市隆二のソロ ’90年代初頭の港区の景色を思い出す――近田春夫の考えるヒット

絵=安斎 肇

『RILY』(RYUJI IMAICHI)/『VOXers』(ゴスペラーズ)

 三代目ジェイ・ソウル・ブラザーズのボーカリスト今市隆二が、2018年にソロ活動を始めてからの最初のシングルとなるのが、この『RILY』である。

 作詞・作曲には本人も名を連ねるが、R&BシンガーのJAY'ED、Chaki Zuluとの共作である。

 ちょっと懐かしい“ニュージャックスウィング”を想い起こさせるリズムを基調としたビートのサウンドプロダクションには、EXILE一家というかAVEXというか、何か今市隆二の出自/ルーツを感じさせるものがある。

 ニュージャックスウィングというと、俺もふとBobby BrownやGUYといったアーチストのヒット曲が幅をきかせていた、そして“バブル崩壊”のすでに始まっていた、’90年代初頭の港区の景色などを、思い出さずにはいられない。ちょいと切ない気分に襲われたりもする。

 ニュージャックスウィングのブームも、そういった、時代のダイナミックな変動のあおりをくらったか、一気に衰退していってしまったが、元来が特徴のある音だっただけに、聴こえてくるだけで、世界が特定されてしまうというか、匂いがつき過ぎていて、jpopのプロデューサー連は、誰もなかなかあらためて手を出してこようとはしなかった。

 それにしてもあの時代の湾岸には、ウィル・スミスが、まだフレッシュプリンスの名で、がら空きのハコでヒップホップの営業していたりとかetc……色々いいものを見させてもらったよなぁと、感謝の念に堪えない。

 おっと話がそれ出した。

 そんな訳で、今このリズムを打ち出して来るからには、それなりの読み/勝算はあるのだろう。そのあたりは、フロアでの場数は踏んできているLDHだ。このような“スウィングする”ビートが、もうあの頃を知らない令和の若者たちには、きっとフレッシュに響くのでは? との判断があったのかどうか……。

 いずれにせよこの曲、かつてよりは打ち込みのドラムもしっとりとした音で、ダンス曲にも使えるし、スローナンバーとして聴かせることも出来る、絶妙なテンポに収めてある。

 惜しむらくは、このスウィング感にボーカルがイマイチ厳しく呼応していない箇所がすこーしだけあることだろうか。まぁ、それはこの曲に限らず日本語歌詞の持つ課題といえば課題なのであるが……。

 今回、CDではなく、まず動画で味わった『RILY』だったが、映像の冒頭に長々と外人の女性が英語のセリフをいう部分があった。こういうのって、普通に日本人が日本語で喋るんじゃダメなの?

 なんかさぁ、この手のハリウッドっぽいステレオタイプな当たり障りのないシチュエーションって、いかにもで、俺には新鮮味がないんだよね。

 ゴスペラーズ。

 本人たちのアイデンティティをテーマとした、相当に意欲的な企画なのはわかるんだけど、ちと真面目過ぎた?

ちかだはるお/1951年東京都生まれ。ミュージシャン。現在、バンド「活躍中」や、DJのOMBとのユニット「LUNASUN」で活動中。近著に『考えるヒット テーマはジャニーズ』(スモール出版)。近作にソロアルバム『超冗談だから』、ベストアルバム『近田春夫ベスト〜世界で一番いけない男』(ともにビクター)がある。

(近田 春夫/週刊文春 2019年11月21日号)

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