『マチネの終わりに』映画化対談 福山雅治が「かなり悩みました」と明かすシーンとは?

『マチネの終わりに』映画化対談 福山雅治が「かなり悩みました」と明かすシーンとは?

©文藝春秋

福山 試写会でお会いしたとき、平野さんが『まさか自分の映画で泣くとは思いませんでした』とおっしゃって、『やった!』と思いました。

 累計発行部数が50万部を突破したベストセラー『マチネの終わりに』(平野啓一郎著)が映画化された。

 天才クラシックギタリストの蒔野聡史(福山雅治)と、国際ジャーナリストの小峰洋子(石田ゆり子)。ともに40代という、微妙で繊細な年齢に差し掛かった二人は出会った瞬間に惹かれあう。しかし、二人は運命に翻弄され、互いへの気持ちに踏み込まないまま別々の道を歩むことに。6年間でたった3度の邂逅の中で育んだ愛の行方を描いた大人の恋愛物語だ。

 パリ、ニューヨークの美しい景色を舞台に撮影された映画について、平野さんは開口一番「思わず涙がこぼれてしまって……」とつぶやき、福山さんが嬉しそうに応えた。和やかな雰囲気で始まった対談は、福山さんが平野さんの出身地のイメージについて明かす意外な方向に進み……。

◆◆◆

■平野さんの出身地・北九州市のイメージは?

福山 ところで、平野さんが育った北九州市って、長崎生まれの僕にとってのイメージは不良として別格な土地なんです。

平野 まあ、その通りです(笑)。

福山 北九州ナンバーのヤン車が長崎に入ってくると、「キタキューが来たぞ!」ってビビりまくってました(笑)。そんな土地から、こんな美しい文学を書く人が現れた。

平野 美輪明宏さんも長崎出身でしょう。言われましたよ、「どうして北九州からこんな作品を書く人が」って(笑)。

 さらに二人の話は、映画のハイライトのひとつである、蒔野の洋子への告白シーンへと移る。たった一度会っただけの洋子の結婚を止めるために、蒔野はパリへと向かい、切実な思いを打ち明けるのだ。

■「蒔野は、相当に不器用ですよ」

福山 「地球のどこかで、洋子さんが死んだって聞いたら、俺も死ぬよ。」という言葉で洋子に告白する蒔野は、相当に不器用ですよ。でも、それが彼の魅力ですが。

平野 あの告白は難しいですよね。一歩間違えると、「こいつ、アホか」って思われちゃう。

福山 あまりにモテモテの人でも説得力がなくなる。僕は、蒔野がまとう暗さと不器用さが大切かなと思いました。

平野 モテる男でも、嫌なモテる奴と、男にも愛されるモテる人がいるんですよ。福山さんがモテることに対しては「それはそうだろう」と思う男性がほとんどですから、イメージにぴったりです。

 蒔野と洋子は、踏み込めなかった二人なのかなとも思います。もっとグイッとお互いの領域に踏み込めば、「来てくれてありがとう」にしろ、「そんなグイッとこないでよ」にしろ、違う展開が待っていた。でも、それができなかった。

■こんな関係、福山さんにもありますか?

平野 SNS等を見ていると、皆さん押し切れなかった恋の思い出も過去に一つや二つあるようですね。リアルな関係にならなかったからこそ尾を引いているような関係、福山さんにもありますか?

福山 あります。成熟した大人の男ですから(笑)。

平野 それもまた人生ですよね。今さら今の人生を否定できないし。

◆◆◆

 意気投合した二人の話は、二人の愛用するクラシックギターや、蒔野の内面の演出についての福山さんの試行錯誤、平野さんがスタジオ見学に来た際の「かっこいい」エピソードへと広がっていった。二人の対談「 福山雅治×平野啓一郎『まさか自分の作品で泣くとは』 」は「文藝春秋」12月号および「文藝春秋digital」に掲載されている。

 福山さんが「映画も何度も観てもらいたいですし、小説も何度も読んでほしい」と語る『マチネの終わりに』、秋の夜長のお供にお薦めしたい。

(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2019年12月号)

関連記事(外部サイト)