《ロッテと契約》背番号17・佐々木朗希の命運を握る魔球「浜風フォーク」

《ロッテと契約》背番号17・佐々木朗希の命運を握る魔球「浜風フォーク」

指名のあいさつに訪れたロッテの井口監督(左)と握手を交わす大船渡の佐々木投手(10月29日) ©共同通信社

 ロッテからドラフト1位指名を受けていた大船渡高の佐々木朗希投手(18)は、11月30日に入団交渉を行い、契約金1億円プラス出来高払い5000万円、年俸1600万円で合意した。

「将来は170キロを投げて欲しい」という思いを込めて背番号「17」に決まった“令和の怪物”が、プロ入りしてまず直面するのが通称「マリン風」だ。

■元守護神が語る「鯉のぼりも吹き飛ぶ強風」

 佐々木投手のホーム球場となるZOZOマリンスタジアム(千葉市美浜区)は、12球団の球場の中で最も気象状況に左右されやすい球場。海岸から200メートルしか離れていない珍しい立地で、秒速10メートルを超える浜風は名物となっている。

「とくに春先は荒れる印象がありますね。マリンスタジアムでは、ゴールデンウィークになるとスコアボードの上に、球団旗と並べて鯉のぼりを揚げるんです。でも強風で飛ばされて、気付くといなくなっている(笑)。海風が秒速20メートル近くなると、高く上がったホームラン性の打球が上空の風で押し戻されて外野フライとなって得した気分になることもありました」

 そう語るのは、ロッテで通算227セーブを挙げた“幕張の防波堤”こと、小林雅英氏(45)だ。2007年まで9年間、守護神としてマリンスタジアムのマウンドに立ち続けた小林氏は、佐々木投手を待ち受ける「マリン風」の特徴について、次のように語る。

「スタジアムが円筒のような形になっているので、バックスクリーン方向からホームベース側に入ってきた風は、バックネット後方の壁に当たって、向かい風となってマウンドに跳ね返ってくるんです。つまり、上空とマウンド上の風向きが真逆になる現象が起こる。その風の影響で、変化球は曲がり過ぎたりすることもあります」

■佐々木が風を活かすなら、この変化球

 投球に影響を及ぼす“マリン風”は、佐々木投手のような速球派の投手に有利なのか。それとも不利に働くのだろうか。

「ストレートは、向かい風を受けて空気抵抗でボールが少し浮く感じになって武器になるでしょう。それ以上に期待されるのが、佐々木の持ち玉であるフォーク。マリン風で一段と鋭く落ちるんです。1995年に当時オリックスの野田浩司投手がマリンスタジアムで1試合19奪三振の日本記録を出しましたが、浜風であおられた落差の大きいフォークボールが冴え渡った結果でした。

 変化球については、海風による変化球の曲がり幅の感覚をしっかり掴んで、自分の思い通りの所に投げることができれば有利。逆にいつまでも慣れないと、ボールが先行してカウントを整えられず苦しむ。そういう投手を沢山見てきました。どのくらい曲がるかといえば、私の得意な変化球だったシュートを右打者に投げると、打者が当たると思ってバットを振っても、急に打者近くで曲がって空振り、ボールは打者の右足に当たることもありました」

 佐々木投手は、今夏の岩手大会決勝を肩の負担を考えて回避、韓国で開催されたU-18W杯では韓国戦に先発するも19球で降板するなど、デリケートな印象が付きまとう。「マリン風」は、投手の精神面や投球フォームに影響は与えないのだろうか。

「投手というのは非常に繊細で、ユニフォームが風になびくだけで集中力が途切れる要因になります。佐々木投手は足を高く上げて投げますが、私も左足を上げた投球動作の途中で風に煽られてバランスを崩し、一塁側に倒れながら投げたことが何度かありました。速球派の投手はちょっとした煽りでコントロールが乱れたりします。

 また、風が強いとどうしても砂埃が立って砂が目に入ったり、投げようとした瞬間に打者や審判からタイムが掛かったりします。緊迫した試合展開では特にマウンドで集中力を保つのが大変でした」

■“幕張の防波堤”が伝授する対処法は?

 マリンスタジアムでは12球団の球場で唯一、風速に加えて風向もスコアボードに表示されるなどの対策が取られているが、投手自身がとれる“マリン風”の対処方法はあるのだろうか。

「風の対処方法は基本的にはないです(笑)。私はとにかく登板前のマウンドでの投球練習で、その日の風を把握していました。私の場合は、いつも直球、直球、スライダー、スライダー、直球の順番で5球投げることに決めていた。一球一球、風を計算してボールの動き方を掴むんです。まあ、あとは実際にあのマウンドに立って、経験を重ねないと分からないでしょうね」

 メジャーリーグも経験したマリーンズのOBとして、小林氏は佐々木投手にこんなアドバイスを送った。

「高校で活躍した佐々木投手でも、年間を通して野球をする環境に慣れるまでは時間がかかるでしょうし、体力面での不安もありますが、高いポテンシャルを秘めている投手なのは確かです。浜風の大変さばかり強調しましたが、晴れて穏やかな日のマリンスタジアムは投げていてとても気持ちがいい。パ・リーグは、ロッテと楽天以外の4球団はドーム球場ですけど、やはり屋外でやる野球は楽しいですよ。素晴らしいロッテファンに囲まれて、佐々木投手が投げる姿を早く見たいです。地道に努力をして日本を代表する投手になってほしいですね」
 
 海風を味方に“佐々木旋風”を巻き起こしてほしい。

(「週刊文春デジタル」編集部/週刊文春デジタル)

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