《二宮和也結婚》“炎上元アナ妻”A子さんの「暴力的な”匂わせ”行為」を社会人類学で分析

《二宮和也結婚》“炎上元アナ妻”A子さんの「暴力的な”匂わせ”行為」を社会人類学で分析

二宮和也 ©文藝春秋

 12月1日、嵐の二宮和也(36)が、ラジオ「BAY STORM」(bayfm)の放送中に、自らの口で初めて結婚を報告した。

 二宮がファンクラブサイトで元アナウンサーのA子さん(38)との結婚を発表したのは11月12日。SNSには結婚への批判が溢れかえった。Twitterでは「#二宮の唯一の欠点はA子(※実際は名前)」というタグがトレンド入りし、嵐の公式Instagramのコメント欄にはファンからの悲痛な叫びが投稿され続けた。ジャニーズを20年以上取材してきた芸能リポーターの駒井千佳子氏も、13日放送の「情報ライブ ミヤネ屋」(日本テレビ系)で、翌日に嵐のドーム公演が札幌で開催されることに触れ、「やっとチケット当たって、みんなオシャレしていくわけで……」とファンの心情を慮るなど、世間をざわつかせていた。

 二宮の結婚はなぜここまで批判を集めてしまったのだろうか。

 この現象について、某国立大学在学中にジャニーズファンの心理や行動を社会人類学の視点から研究し、論文を執筆したこともある川島ノエ美氏に話を聞いた。川島氏は自身も熱心なジャニーズファンで、二宮結婚の話題をふると、熱っぽく語ってくれた。

 ニノの結婚と、A子さんという存在、そしてそれを取り巻くファンの反応は、社会人類学を学んだ者として、とても興味をひかれる現象でした。

 今回ここまで批判が大きくなったのは、二宮ファンやジャニーズファン以外にも怒りが伝播したからなんです。私は嵐ファンではないのですが、ニノの結婚には複雑な感情を抱きました。悲しみや驚きもありましたが、怒りを強く感じたんです。SNSをのぞくと、私と同じように感じている人がたくさんいました。私のように嵐以外のジャニーズファンもいましたし、K-POPファンや声優ファンなど、ジャニーズには興味のなさそうな人も怒っていました。

 批判の核となったのは、みなさんもご存じの通り、A子さんの“匂わせ行為”です。

 A子さんは2014年頃から、ブログにたびたび嵐や二宮の存在を“匂わせる”投稿をしていました。嵐のグッズやCD、ニノの洋服などが写真に写り込んでいたり、ニノが撮影のクランクアップでもらったと思われる花束がA子さんの家で生けてあったり。それを発見する度に、ファンは怒り狂っていました。

■“匂わせ行為”はなぜ罪深いのか

 ジャニーズファンも様々ですが、“匂わせ”をしたA子さんとの結婚に怒っているのは、“大人なファン”が多いというのが私の印象です。大人なファンというのは、アイドルが「虚像」だと理解したうえで応援している人達です。

 私もいわゆるジャニオタですが、アイドルも1人の人間で、私ではない誰かと恋愛をして結婚もすることくらい、重々承知しています。なかにはあわよくばプライベートでも繋がりたいと思ってストーカー行為に走る“ヤラカシ”と呼ばれるファンもいますが、良識ある大人のファンは「好きなアイドルにはプライベートでも幸せになってほしい」と願っているんです。

 この大人なファンの心理状態は、社会学者の大澤真幸氏によるところの「アイロニカルな没入」だと言うことができるでしょう。みんな「結局アイドルとは恋人同士にはなれない」と斜に構えて冷静に見つつも、コンサートへ足繁く通い、CDやグッズを買いまくり、アイドルを目にしたときには「愛してる〜!」「結婚して!」と叫んでしまう。本人は冷静だと思っているけど、はたから見ると我をなくして熱狂しているように見える。この状態がアイドルビジネスを健全な形で支えているのです。

 そしてこのファンによるアイロニカルな没入は、アイドルとファンの“共犯関係”によって成立しています。

 例えば週刊誌にアイドルが熱愛写真を撮られたとき、少なくないファンが熱愛の事実ではなく、「こんな写真を撮られるなんて無防備だ」「アイドルとしての自覚がなさすぎる」と、その事実を隠しきれなかったことに怒りの声を上げます。アイドルとファンはお互いが騙し騙されていることを自覚しながら関係を構築していくという、高度なメタ・コミュニケーションを行っているのです。

 そうして大切にあたためてきた共犯関係を崩しうる脅威が“匂わせ”なんです。しかもその脅威はアイドル側からもたらされる。ファンからすると裏切り行為に他なりません。そして今回ニノは、ニノとファンの関係を崩壊させる“匂わせ”に手を染めた女性を人生の伴侶に選んだわけです。いくら大人のファンといっても、愛するアイドルの幸せを願えないのも仕方がないことではないでしょうか。

■嵐ファンへ伝播した二宮結婚への怒り

 そしてこの怒りは伝播していきました。まずは“二宮以外の嵐ファン”です。

 ジャニーズファンには「担当制」という独特の制度があります。ジャニーズにおける“担当”とは、「一番好きなアイドル」といった意味合いで使われます。ニノが好きなファンは自分のことを「二宮担当」「ニノ担」などと自称します。そしてジャニーズファンにはこの担当制を通して、ジャニーズタレントへの愛を深めているという側面があります。

 ファンは担当に対して恋愛に近い感情を抱いているので、彼との距離をなんとか縮めたいと思っています。ファンがコンサートでアイドルを「観る」ことを「会う」と表現するのも、その欲求の表れでしょう。しかし相手はアイドルですから、その欲求が満たされることはありません。だからコアなファンは「メンバー同士の関係性をファン同士で疑似的につくる」という行動に出ます。たとえばニノ担なら、松潤担や大野担ら、ニノ以外の嵐メンバーを愛するファンと“身内”と呼ばれるグループを作るのです。

 身内はことあるごとに会い、絆を深めていきます。DAM(カラオケの機種。ジャニーズ本人が登場するPVが流れる)が入っているカラオケ店で「ジャニカラ(ジャニーズの曲を歌うカラオケ)」をしてそれぞれの担当のパートを歌ったり、コンサートには必ず一緒に参加して「反省会(コンサート帰りに行うファン同士の飲み会)」で興奮を共有したりする。そうすると、ファンの間にはかたい“女の友情”が生まれます。それはアイドル同士がグループ内で育んでいる友情にも似た関係で、嵐だと櫻井担はしっかり者の調整役を演じ、相葉担はムードメーカーになっていくこともあります。

 このアイドルグループと身内の関係は、「トーテミスム」という人類学の言葉で説明することができそうです。

■未開社会にもある、アイドルグループと身内の関係性

 そもそもトーテミスムとは人間集団が特定の動物や植物などと自分たちがつながっているとする信仰の一形態で、いわゆる「未開社会」では動物や植物からとった名前を付けた氏族などの人間集団がよく見られます。呪術や宗教の原始的な形態だとも言われています。

 たとえば、ひとまず“ネコ族”がいるとしましょう。ネコ族はネコにとても親密なつながりを感じていて、殺したり食べたりすることはしません。そしてネコ族は、ネコと仲のいいイヌに親密なつながりを感じている“イヌ族”と仲良くなることがあるんです。このネコやイヌをトーテムといいます。そしてネコとイヌ、ネコ族とイヌ族全体の関係をトーテミスムと呼びます。

 嵐メンバーをトーテムだとすると、嵐メンバー同士の仲睦まじい関係に呼応するように、“身内”の女の友情が育まれている関係性が浮かび上がってきます。ジャニーズファンは身内でアイドルグループ内の人間関係を繰り返し模していくことで、実際には決して近づくことのできないアイドル(トーテム)への心理的距離を縮めていこうとしているんです。実際、ファンのなかには担当と自分の同一視が進んだ結果、身内や他のファンに対して、担当のことを「うち」や「うちの子」と呼ぶ強者もいます。

■“推し”のいる人間すべてを敵に回した

 嵐ファンにとって、身内との絆=アイドルとの絆なのです。そんな大切な身内であるニノ担を“匂わせ”という暴力的な方法で傷つけるなんて許せない。そのためニノ担以外の嵐ファンらも怒りの声を上げたのでしょう。

 Twitterにもこのような書き込みがありました。

《大野担の私でさえショックなのに にの担心配》
《ニノ結婚おめでとう でも翔担なのになんか複雑な気持ち》

 そして、この怒りや悲しみ、悔しさは、“推し(熱狂的に応援する対象)”がいる人にも広まっていきました。ニノ担、嵐ファン、ジャニーズファン、そして誰かを応援するすべての“ファン”が批判の声を上げたことで、ここまでの騒ぎになったのでしょう。

■理想の“アイドルの妻”になれないA子さんの“同担拒否”

 ここまでA子さんに批判的なことを述べてきましたが、実はA子さんにはジャニーズファンとして理解できるところもあるんです。A子さんの“匂わせ”投稿は、ファンから批判されてもしばらく続きました。アナウンサーとして活動していながらバッシングを受けることは、A子さんの仕事にとっても良くないはずです。なぜ批判を浴びても“匂わせ”続けたのか。A子さんの行為は、ある種の“同担拒否”と言えるのではないでしょうか。

 同担拒否とは、自分と担当を同じくする人(=同担)を避けることです。ジャニーズファンのなかには、同担のファンを“恋敵”のように感じ、あまり関わらないようにする人がいます。私もコンサートに行って隣が同担だと、「ちょっと嫌だな……」と思うこともあります。また前述のように、ファン同士はアイドルグループの疑似的な関係を育むことでアイドルへの距離を縮めようとしているわけですから、そこに同じ担当がもう1人現れては困るわけです。

 ニノの恋人であり、のちの結婚相手であるA子さんは、最上位のファンとしてみることもできるでしょう。彼女にとって自分の担当(恋人であるニノ)が不特定多数の女性に推されていることに我慢ならなかったのではないでしょうか。だから“匂わせ”という禁じ手を繰り出してしまった。A子さんとジャニーズファンの心理的構造や行動原理は非常に似通っている。良くも悪くも同じ穴のムジナなんだと思います。

 でも、やはりアイドルビジネスはファンがあってこそ。理想の“アイドルの伴侶”は、ファンと似たような考え方をしていてはいけなくて、アイドル側に立ち、アイドルとファンの共犯関係を守っていく存在でなければ支持されません。

 ジャニーズを愛するファンの1人としては、A子さんにはぜひアイドルと私たちファンとともに、素敵な共犯関係を築いていってほしいと切に願っています。

(「週刊文春デジタル」編集部/週刊文春デジタル)

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