AKB商法を逆手にとった「日向坂46偽造握手券」被害続出! 事件関係者が語る“犯人像と悪質手口”

AKB商法を逆手に取った犯罪、日向坂46の「偽造握手券」がネットで出回り詐欺被害続出

記事まとめ

  • 日向坂46の偽造握手券がネットで出回り、詐欺被害が続出していると文春が報じた
  • 今回出回っているのは「こんなに好きになっちゃっていいの?」の購入特典の偽造品
  • こうした偽造握手券の販売は「AKB商法を逆手に取った」犯罪だという

AKB商法を逆手にとった「日向坂46偽造握手券」被害続出! 事件関係者が語る“犯人像と悪質手口”

AKB商法を逆手にとった「日向坂46偽造握手券」被害続出! 事件関係者が語る“犯人像と悪質手口”

日向坂46に改名した当時。左から佐々木美玲、齊藤京子、小坂菜緒、加藤史帆、柿崎芽実、佐々木久美 ©時事通信社

 乃木坂46、欅坂46に続き3番目の坂道グループとして、2019年3月にデビューしたばかりの日向坂46。デビューから1年経たずして、今年大晦日の「第70回NHK紅白歌合戦」に出場することが決定している。だが、今年10月頃から日向坂46の「偽造握手券」がヤフーオークションやメルカリ上で出回り、ファンの間で詐欺被害が続出していることが「週刊文春デジタル」の取材でわかった。

■「AKB商法を逆手に取った」犯罪

 そもそもなぜCDに付いている握手券がこれほど大量に出回るのか。これぞ、CD不況の時代にミリオンヒットを連発する「AKB商法」の副産物なのだ。

「AKB商法ではCDをたくさん売るために、握手券だけでなく、生写真がおまけとして付いています。この生写真を全種類コンプリートしたいというファンが少なからずいるのです。今回のケースで言えば、日向坂の18人のメンバーの生写真が各6パターン、つまり計108種類の生写真がランダムに封入されている。『生写真は欲しいが、握手券は不要』というファンも多いので、余った握手券がヤフオクやメルカリに流れるわけです」(スポーツ紙記者)

 ファンの間での転売行為はいまや日常と化している。今回の偽造握手券の販売は、こうした「AKB商法を逆手に取った」犯罪なのである。

■偽造防止のホログラムまで再現されている

 ちなみに、運営サイドは「転売行為は禁止」としているが、骨董通り法律事務所の福井健策弁護士は「それ自体は違法ではない」と説明する。

「2019年6月に施行されたばかりの『チケット不正転売禁止法』ですが、今回の全国握手券をヤフーオークション、メルカリなどで出品、購入する行為自体は同法の違反にはあたりません。今回の握手券は特定興行入場券の条件を満たしていないからです。身元確認が必要となる『個別握手券』については違法になるという可能性があります」

 今回出回っている偽造握手券は、日向坂46が10月2日に発売した3rdシングル「こんなに好きになっちゃっていいの?」の購入特典として同封されている「日向坂46『3rdシングル』発売記念全国握手会参加券orスペシャルプレゼント応募券」の偽造品だ。偽造防止のホログラムまで再現されている。

■「この偽造券なら(制作コストは)1枚10円前後でしょうね」

 しかし、こうしたホログラムも含め、実際には簡単に偽造することは可能で、「ホログラムだけで安心をしてはいけない」と某大手印刷会社従業員は説明する。

「多くの人はホログラム入りの模倣品を作ることは難しいと思っているようですが、実際は通常の印刷過程にひと工程を加えるだけで、そんなに難しいことではないんです。通常のホログラムが入っていない紙単体に比べるとコストは多少上がりますが、べらぼうに高くなるわけではない。この偽造券なら(制作コストは)1枚10円前後でしょうね。プロが見たら紙質や色合いなどで本物との違いは一目瞭然ですが、素人目にはわからないでしょう。それなりに高い完成度だと言えます」(同前)

 日向坂46の前身である「けやき坂46」時代から熱心に応援していたというファン歴4年のAさん(20代・男性・大学生)も被害者の一人だ。Aさんはシングルが出るたびにヤフーオークションやCDショップで50万円ほど握手券を買っているという。今回はCDだと1枚定価1900円するところ、ヤフオクで握手券は1100円だった。

 Aさんに話を聞いた。

「10月27日、いつものようにヤフーオークションで全国握手券を購入しました。150枚を16万5000円で落札し、券は3日ほどで届きました。この時はまだ偽造された握手券だということを知りませんでした。僕はCDに同封されている生写真も欲しいので、ショップなどでちゃんとCDを買うこともありますが、全国握手券を大量に購入したい時はやはり安価で購入できるヤフーオークションを利用しています。僕の周りでも当たり前のようにヤフオクやメルカリで同じように購入しています。まさかこんなことになるなんて……」

■「偽造券を使うってことは偽札を使うと同じようなこと」

 いざ握手会当日の11月3日、京都で開かれた日向坂46の全国握手会で、何も知らないAさんは握手券を使うと突然会場のスタッフに呼び止められた。

「まとめ出し(複数枚握手券を出すこと)をした後、運営から『ちょっと来てもらってもいいですか?』と呼び止められました。その時は何で呼ばれているか、まったく見当もつかなかった。握手会会場の2階にある別室に通され、運営の4人の方と話をすることになりました。運営の方から『申し訳ないんだけど、この握手券は偽造されたものだから使えない』と言われました。

 そして、『転売行為で出禁処分にします』と言われ、頭の中が真っ白になった。『偽造券を使うってことは偽札を使うと同じようなこと。犯罪だから』とも言われ、そこからは言われるがまま、《今後の乃木坂46、欅坂46、日向坂46のイベントに一切参加できない》という旨の誓約書にサインをしました。京都から帰りの新幹線では放心状態で、その後1週間、何も手に付かず大学にも行けなかったです。

 出品者への怒りは収まらず、《警察、弁護士に相談して法的措置を取る》と連絡をしました。すると《返金対応をします》と連絡がきた。出品者曰く、『10月19日に行われた幕張メッセの握手会会場で20代くらいの男性から突然声をかけられ、1枚600円で300枚の全国握手券を購入したが、偽造握手券だとは知らなかった』と。その後、実際に返金されたのですが、そこから音信不通になってしまいました。お金は戻ってきたけれど、握手会への出禁は解除されません」

■泣き寝入り状態になっているファンも

 Aさんのように返金されるパターンは珍しい。ファンになってまだ数カ月しか経っていないというBさん(10代・会社員・男性)も偽造された握手券とは知らずにメルカリで全国握手券を200枚22万円で購入。Aさんと同じく11月3日の京都全国握手会で偽造握手券を使用してしまい、出禁になってしまったという。

 だが、Bさんが握手券を購入したメルカリの出品者のアカウントは削除されていて、連絡を取る手段はなくなってしまった。返金を求めることもできない。どうすることもできず、泣き寝入り状態だ。

 同様の被害に遭っているファンは他にもいる模様だ。AさんもBさんも被害届を提出するために警察と相談中だという。

「今回の偽造握手券を出品・売却するという行為は極めて悪質で、恐らく重い罪に問われます。握手券を偽造する行為は『有価証券偽造罪』。偽造握手券だと知りながらも売却し、金銭を得るという行為は『詐欺罪』にあたると考えられます。罰金刑はなく、最大で懲役10年に処される可能性があります」(前出・福井弁護士)

■悪質なファン数人による組織的な犯罪か

 実はAKB48が全盛期だった2010年にも握手券を偽造しファンに売ろうとしたという事件が発生し、30代の男性が有価証券偽造容疑で逮捕されている。この事件に関係していたというC氏が、実体験をもとに解説する。

「相場やトレンドが多様に変化するアイドル業界の性質を考えると、専門知識を持った悪質なファンが絡んでいる可能性が高いでしょう。2010年の事件のときは、全体の犯罪プランを考えるブレーンは30代前後の数人のファン。そして実行犯は高校生や大学生の売り子が十数人いました。売り子たちへの報酬として偽造握手券を数百枚あげるという約束をすると、彼らはアイドルと握手がしたいのでそれだけで協力してくれた。

 偽造握手券を売り上げた利益はすべてブレーンが持っていく。バレてしまった場合を考えて売り子とは事前に口裏を合わせていました。今回の件と同じように『偽造握手券だとは知らず、見ず知らずの人から買ってしまった』という言い訳が常套句。労力や握手券の精度から見ても、今回の件も悪質なファン数人による組織的な犯罪だとみて間違いない」

 日向坂46の運営事務所「Seed & Flower」は今回の偽造握手券問題をどのように考えているのか。今後の対処などを確認したが、期日までに回答はなかった。

(「週刊文春デジタル」編集部/週刊文春デジタル)

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