“鉄道マニア”が教えてくれた「何度も列車に轢かれているリュックを背負ったおばあさん」の話

“鉄道マニア”が教えてくれた「何度も列車に轢かれているリュックを背負ったおばあさん」の話

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始まりは「知らない人が家にいる」という子供の言葉だった。ある新築一戸建て物件でおきたこと から続く

京都・蓮久寺の三木住職のもとには、助けを求める人が絶えない。ポルターガイストに悩まされる人、人形をお祓いしてほしい、さまよう霊を供養成仏させてほしい……。そんな実話や自身の体験など、現代の怪談、奇譚の数々を収めた 『怪談和尚の京都怪奇譚』 (文春文庫)よりちょっぴり心温まる「鉄道マニア」を特別公開。見えない世界に触れることで、あなたの人生も変わる……のかもしれない。

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■鉄道に「取り憑かれた人」

「マニアな人」という言葉がありますが、言い換えると、「取り憑かれた人」と言えるのではないでしょうか。

 私の知り合いに、「鉄道に取り憑かれた人」がいます。そんな彼から、興味深い話を聞きましたので、ご紹介したいと思います。

「線路沿いに部屋を借りたのは、大学への通学に便利だからではなく、また家賃が安いからでもありません。単に電車が好きなんです。さらに部屋の窓からは踏切が見えて、踏切が下りる警告音が聞こえてくるという、まさに最高の立地条件だったんです。踏切が近いということは、電車は減速し、時には汽笛が聞こえてきたり……」

■鉄道マニアが差し出した数枚の新聞記事

 彼が電車にまつわる話をし出すと、相づちを必要とはしません。相手が聞いているかどうかなど、おかまいなしにしゃべり出します。あと何分くらい話が続くのかと思っていると、先ほどとは打って変わって、話のスピードがゆっくりになりました。

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「そうそう。そういえばこんな話を知ってますか」

 そう言いながら、彼は鞄から数冊のノートを取り出しました。そこには、電車に関係のある新聞の切り抜きや、使用済みの切符がたくさん貼られていました。

「この記事読んで見て下さいよ」そういって数枚の新聞記事を見せてくれました。記事にはこんな事が書いてありました。

■老女がいるのに気づき、急ブレーキをかけたが…

 平成15年8月12日。午後1時40分頃、青森発八戸行き回送列車(6両編成)の運転士が、前方線路内にリュックを背負った老女がいるのに気が付き、急ブレーキをかけて停止。運転士は「接触した」と感じ警察に連絡。周辺を捜索したが、老女の姿はなく、車両にも接触した形跡はなかった。

 平成19年12月10三日。 午後7時25分頃、名古屋発札幌行き貨物列車が、青森市奥野付近で緊急停車。運転士は、警察などに「線路におばあさんがしゃがんでおり、人身事故を起こした」と連絡。警察や消防、駅員らが捜索するが、「おばあさん」は発見できず。車両にぶつかった痕跡もなかった。運転士は「確かに人がいた」と話している。

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 平成22年8月1日。午前10時48分頃。野々市駅で、通過予定の名古屋発富山行き特急「しらさぎ1号」(8両編成)が急停止。男性運転士が「ホームから飛び降りた人をはね、衝突音も聞いた」と連絡。警察が人身事故とみて付近を捜索したが、けが人は見つからなかった。しかし、先頭車両には衝撃を受けたとみられる破損個所があり、JR西日本金沢支社は「全国でも例がないケースで原因は分からない」としている。

■「死んだら仲間に加わるつもりです」

「どう思います」彼は何故か得意げに私に問いかけました。

「どうかな。ひょっとしたら疲れもあって、見間違いかもしれないよ」と私が答えると、彼はゆっくり手を振って、「見間違いじゃないですよ」と言うのです。

「リュックを背負ったおばあさんは、きっと電車が好きだったんですよ。だから、死後も色々な電車に乗って旅を続けているんですよ。ゆっくりと眺めたいときには、運転手をびっくりさせて、止まらせて見る」

「どうして言い切れるの」

「だって、私の部屋から何度も見ましたからね。そのおばあさん」そう言うと、少し笑みを浮かべた彼は、続けてこう言いました。

「最近、近所では見ないから、今頃またどこか遠くの線路や駅に、しゃがんで電車を待ってるんだと思いますよ。私も死んだら仲間に加わるつもりです」と。

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(三木 大雲)

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