「日本経済をまわすために、やはり浪費しなくては」辛酸なめ子×劇団雌猫 浪費女の生きる道座談会#2

「日本経済をまわすために、やはり浪費しなくては」辛酸なめ子×劇団雌猫 浪費女の生きる道座談会#2

©釜谷洋史/文藝春秋

『浪費図鑑 ―悪友たちのないしょ話―』 (小学館)でオタク女子の生態を明らかにした劇団雌猫の4人と、近著 『おしゃ修行』 (双葉社)でさまざまな浪費を告白している辛酸なめ子さんの座談会後編は、浪費とその効用について。どれほどまわりから白い目で見られようと、幸せのためにお金を使って、経済をまわす。「浪費女」としての正しい生き方指南です( 前編 が公開中です)。

■貯金がなくなると「家の中の何を売ろう」

ユッケ 貯金がない、どうしようってなったときに、出費を減らすよりも家の中の何を売ろうって考えちゃいますね。本や古着を、とりあえず売れるものと売れないものに仕分けていく。

辛酸 でも服って、たいした値段がつかないですよね。査定が厳しい。古着屋にもちこんだとき、元手は数十万なのに、0円をつけられてショックでした。

ユッケ だから大学時代は、後輩とかに売りつけていました(笑)。

辛酸 ああ……私も昔、友達に呼びだされて古着を売られたことあります。特にいらない服を、1枚1000円とかで。

かん 被害者側だったんですね(笑)。私は、SEVENTEENのイベント抽選に申し込むためにCDを何枚も買っちゃって。フリマアプリとかで売ればいいんでしょうけど、めんどくさいから布教用に配ってます。

辛酸 売るのも大変なんですよね。この前、ブランドのバッグを買ったんですが、手持ちの服に合わなくて。2万円くらいで出品してみたら、いきなり「1万円でいいですか」というメッセージが届いて。しかも傷を全部写真に撮って送れ、と。

ユッケ えーっ! そんな、一方的な。

辛酸 さらに、ギャランティーカードと袋もちゃんとつけて欲しいとか。売るためには、ひとつひとつの要求に、瞬時に返信しなきゃいけないんですよ。それでようやく売れたと思ったら、知らされていない細かい傷があったとマイナスのコメントを書かれてしまいました。物を売る苦労がわかっただけに、なおさらセールストークを断れなくなりましたね。

ユッケ 店員さんに悪い、と?

辛酸 これだけ長く会話したんだから、労働時間も考えると買わないと悪いかな、みたいな。

かん わかります。ノルマもあるだろうし、と使命感が芽生えちゃうこと、よくあります。

■飲み会は「人の悪口で盛り上がることも多いので、運気が下がる気がします」

ひらりさ 辛酸さんは、節約はしていますか?

辛酸 最近、格安スマホに変えましたね。あとは飲み会にあまり行かないとかでしょうか。あんまりお酒が飲めないので、場がしらけると悪いですし。それにああいう場って、けっきょく人の悪口で盛り上がることも多いので、運気が下がる気がします。

かん わかります。飲み会って、グダグダしていて波動が悪い。私も気が乗らない飲み会には行かないのが最大の節約です。

ユッケ 最後の1時間は、無意味な話しかしていないことも多いですよね。私もけっこう、交際費を削ってしまっていますね。究極は、あまり親しくなかった地元の同級生の結婚式。

辛酸 ドレスを買ったり、髪をセットしたり、ご祝儀以外もかさみますもんね。

ユッケ そうなんです。交通費もかかるし、大変申し訳ないけど用事があるから代わりにこれを、ってちょっとしたプレゼントを贈ったほうが安い。すごく嫌な奴ですけど。

辛酸 でも、そのほうが向こうも嬉しいんじゃないですか。

ユッケ だといいなと思っているんですが。

■「無駄に使っていることに愛しさを感じている気もする」

もぐもぐ 私は、しょうもないものを我慢してるかもしれない。自転車の修理とか。

一同 (笑)

もぐもぐ 1万2000円もする帝国劇場のチケットは迷わず買うのに、自転車の修理代とか、クリーニング代とか、2000〜3000円で済むものはあとまわしにしちゃう。

ユッケ なんにでも浪費しているわけじゃなくて、無駄だと思うお金はちゃんとあるんだよね。ただ、好きなものにかけるお金は、まったく気にならない。自転車は乗れる限り修理も買い替えもしないけど、好きなアイドルのコンサートや、好きな俳優の舞台なら、同じ公演を何度も観ちゃう。

もぐもぐ 無駄に使っていることに愛しさを感じている気もする。正直、舞台もコンサートも一度行くだけで十分満たされるけど、何回も行くことが楽しいし、お金を費やしていること自体がストレス発散になっている。

ひらりさ みんなそうだと思うけど、わりと節約するよりも稼ごうというマインドが強い気がします。私は最近、格安スマホのアフィリエイト記事をブログに書いて5万円くらい稼ぎました。

辛酸 それは賢い。

ひらりさ URLをシェアすると、私も広めてくれた人も2000円のAmazonギフト券が手に入るというやつで。30人くらい協力してくれたので、そのギフト券を使ってまたBLグッズを買いましたね。あくまで出費は減らさない。

「DEAN&DELUCAに行くと精神が安定するんです」

もぐもぐ あとは節約しているとしたら交通費かな。遠征はやっぱりお金がかかるので、夜行バスを使うことが多いです。効率重視っていうのもありますけど。

ひらりさ わかる。寝てる間に移動したいよね。でも寝られない人は難しいだろうし、節約方法もそれぞれだなあと思います。他人からは浪費だと思われることも、自分には必要だったりしますし。私は、なんとなくだらだら、色んなことにお金を使ってるのがよくないなと思いつつやめられない。毎朝、スタバで700円くらいの朝ごはんを食べてるし。

かん それはリッチだ。

ひらりさ 減らそうと思えば減らせるんだろうけど、でも、できない。

辛酸 私もカフェはつい寄っちゃいます。1日に2回行くこともある。DEAN&DELUCAが好きなんですが、行くと精神が安定するんですよね。

ひらりさ そうなんです。毎日スタバの抹茶ティーラテが美味しいと安心するんです(笑)。スタバとか美容院とかネイルとか、自分が調えられてる感じがするとき、いちばん幸せになれる。

辛酸 東京は雑然としていますから。おしゃれ空間に身を置くことでバランスをとっているのかもしれません。

■「今月は出費が少ないなというとき、発作的に伊勢丹へ駆け込む」

かん お金を使うことでバランスをとっているというのは、すごくわかります。私、今月は出費が少ないなというときに、発作的に伊勢丹とかに駆け込むんですよ。それで10万円くらい使っちゃう。

もぐもぐ もはやアブない人だよ(笑)。

かん ほんとそう(笑)。でも、勢いで高い洋服を買うとなんだかスッキリするの。服が欲しいからというよりも、達成感がほしいんだと思う。

辛酸 私も高い服を買って、家でタグを切っているときは高揚します。

かん そうなんです! それで「〇万円使ったぞ〜!」ってみんなにLINEします。

ひらりさ 突然、くるよね(笑)。

ユッケ 私はやっぱり、コンサートに行くのがいちばん幸せかな。開演の合図に暗転したとたん、若い女子がみんな、歓声をあげて一斉に立ち上がるんですよ。その瞬間、心も体もジェットコースターが落ちるみたいにふわっとなる。コンサート自体ももちろん楽しいんですけど、その場にいるというだけで精神が安定します。人間として正しくテンションが上がっている感じがするというか。

もぐもぐ そこにいる全員が、コンサートをつくりあげるひとつのパーツになっている感覚がいいよね。

ユッケ そう。タレントの全力パフォーマンスに、オタクも全力の声援で返すから、生のエネルギーが端から端まで充満している。

かん 私は、推しがステージの後方で笑っているのを見つけたとき、泣く。

辛酸 なにげなく、人知れずの表情に。

かん そうです、そうです。みんなに気づかれなくても笑ってる。あの人、いま楽しいんだ。よかった、って。

ユッケ 好きな人の笑顔って、いいよね。

辛酸 ほとんど慈愛に近い感情ですね。

■「お金は使ってこそ生きるもの。使われないとフラストレーションが溜まるでしょう」

ひらりさ それぞれ、気持ちが満たされるのが大事ですよね。生きてる実感が湧く。

もぐもぐ ひらりさが言ったみたいに、使うためには稼がなきゃというモチベーションにもなるし。

ユッケ コンサート前は服も買うし、美容院も行くし。

辛酸 欲望は欲望を呼びますから。1ヶ月服を買わないでいたら、店に入っても心が動かなくなったことがありましたが、それが日本のGDPを下げているのかもと反省しました。お金は使ってこそ生きるもの。使われないとフラストレーションが溜まるでしょうし、日本経済をまわすためには、やはり浪費しなくては。

かん 幸せのためにお金を使って、経済をまわす。それが浪費女の生きる道ですね!

写真=釜谷洋史/文藝春秋

(立花 もも)

関連記事(外部サイト)