伊藤智仁は何故「BCリーグの監督」就任を選んだのか

伊藤智仁は何故「BCリーグの監督」就任を選んだのか

©HISATO

■ヤクルトを去った伊藤智仁

 2017年10月3日、スワローズの神宮最終戦。試合後に真中満監督が胴上げされた。
その後、選手の輪がもう一度縮まった。その人の背中をぐいぐい押し込んだのは、ベテラン投手の松岡健一だ。伊藤智仁投手コーチは少々抵抗しつつも、最後には笑顔で選手の手に身を委ねた。ファンは涙で見送ったものの、本人はサバサバした顔で、伊藤智仁らしい潔い去り際だった。

 その時にはまさか、その2か月後にBCリーグの監督就任を発表するとは思わなかった。いつかどこかでまた会える、と漠然と思ってはいたが、よもやこんなにすぐイベントで何度も会えるとは。そして報道カメラの前でダブルピースする姿を見られるとは!

【TV放送出演のお知らせ】 #伊藤智仁 監督が生出演!
??日時:12月8日(金)18:15〜
??放送局: #チューリップテレビ 「ニュース6」内にて
ぜひ!ご覧ください

#富山GRNサンダーバーズ pic.twitter.com/Z1eC0w4sX6

― 富山GRNサンダーバーズ (@T_birds) 2017年12月8日

 私がヤクルトファンになったのは92年で、だからその年のドラフトで入団した伊藤智仁とは、ずっと一緒に過ごした25年だった。25年間で、いや今まで見た中で一番すごいと思うのは伊藤智仁で、あれ以上の投手はいなかった。折しもこの秋、長谷川晶一氏著の『幸運な男』という彼のこれまでを綴った本が発行された。故障してからの苦闘、人々との関わり、自分を「幸運」と言える強さ。投手としては無論だが、本当にすごいと思うのはその野球人生そのものだ。

 12月5日の長谷川氏との発行記念トークイベントでは、富山GRNサンダーバーズ監督就任を発表してから初めての声を聞かせてくれた。

「『監督はやりたくない』と言っていたのに、何故監督に?」

 そう問われると、「体がユニフォームを欲した」のだと言う。NPBはどうしても勝利が優先になる。NPBの監督になりたいとは思わない。育成をしたい。新しいことにチャレンジしようと思った、とも。どんなタイプの監督になるか、という問いには「ノムさんのようにはなりませんよ! ノムさんよりは体が動くので」と答えて笑わせた。やはりこの人は野球が好きで、野球に関わって汗を流すのが好きで、野球から離れたくないのだろう。

 この日は長谷川氏がトークテーマを「93年の伊藤智仁」に絞っていたので、ルーキーイヤーの試合を本人の談を交えて振り返った。時にはノムさんや石井一久さん、果ては長嶋茂雄さんのモノマネまでも見せてくれる。金沢の次の巨人戦では「篠塚を抑えた!」とドヤ顔。さらには「落合さんを怖いと思ったことはない」としれっと言い放った。

 ルーキー時代そのままの勝気な顔で語るかと思えば、今年のチームや選手を語る時には冷静な投手コーチの顔になる。伊藤智仁の様々な表情が見られる貴重な機会だった。元々茶目っ気はあるし毒もある。解説やコメンテーターでも見てみたいが、やはりユニフォームの方が似合いそうだ。

 BCリーグのチームについては、やはりNPBよりもレベルが低いだろうということ、NPBのレベルに達しない選手については、諦めさせるのも仕事だろうと言っていた。夢を見るのはいいが、現実も見せなければならないと。

■独立リーグの厳しい現実

 以前、貴規、江村将也といった元ヤクルト選手が在籍していた頃、福島ホープスの試合に何度か足を運んだ。岩村明憲監督を取り上げたTV番組も見た。それまで独立リーグに関する知識は乏しかったが、内情を知り一層応援したくなった。球団代表としても尽力する岩村監督には尊敬しかない。

 選手の給料の低さだけでも驚く。10月から3月は無給。選手はバイトで何とか暮らす。練習生は無給。何年も続けることすら難しい。スタッフも少なく、岩村監督は手ずからノックや打撃投手をし、NPB球団にも働きかけ続けていた。それでもNPBの門はなかなか開かない。貴規も江村も程なく福島を去った。

 今秋のNPBドラフトでは何人も指名が出たチームがあったが、地域もチームも盛り上がる一方、目立った選手が抜けるとチームが弱くなることも多い。夢を諦めた選手が毎年何人も辞めていく。強いチームでい続けるのは難しい。地域に貢献し、地域に密着したスポーツビジネスとして成り立たせるためにも、監督の果たす役割は大きいはずだ。

 独立リーグ自体まだ発足して10数年、BCリーグの歴史も10年。リスクはあるが、リーグも球団もこれからの可能性を秘めている。高名な監督の影響力は大きいし、チームのために自分のネームバリューはとことん使うだろう。足りないものの多い中、伊藤監督はどう動くのか。想像するだけでワクワクする。

 早速富山GRNサンダーバーズの後援会に入会した。BCリーグも西地区だと、関東には年に何度かしか来ない。富山は遠いが行ける距離だ。泊りがけで見に行って富山の美味しいものを食べるといった楽しみもある。独立リーグは観客と選手の距離も近いから、選手を覚えれば興味も増す。知った選手がNPBに行けば嬉しいだろう。遠くて行かれない人でも、注目し声援を送るだけで違う。後援会での貢献もできる。ファンが集まれば、チームにとって大きな力になれるのだ。

 さて、レギュラー会員で8枚(早期入会特典で+2枚)付くチケットを何枚使えるか。頑張って富山に行った暁には、笑顔と勝利のダブルピースを見せて頂きたいと思う。

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(HISATO)

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