「クイズだよ、人生は」 87歳“伝説のクイズ王”村田栄子がクイズを続ける理由

「クイズだよ、人生は」 87歳“伝説のクイズ王”村田栄子がクイズを続ける理由

(c)杉山秀樹/文藝春秋

『アップダウンクイズ』全問正解優勝をはじめ、数々のクイズ番組で優勝したスーパー主婦クイズプレイヤー、村田栄子さん。87歳のレジェンドだからこそ語れる、深イイ話を伺いました。クイズだよ人生は。( 前編 から続く)

■クイズに強いからって、脅迫状来たことありましたよ

―― テレビのクイズ番組で軒並み優勝した「クイズレジェンド」の村田さんですが、今でもクイズ番組はご覧になりますか? 

村田 もちろん。私、テレビは全部録画して見ますから。クイズ番組にはいっぱい、知ってる人が出てくるじゃないですか。会員とか。『東大王』も見ますし、『Qさま!!』なんかも見ますよ。まあ、私もそうだけど、クイズマニアっていうのは変わり者が多いですよね。昔の話ですけど脅迫状はくるわ、いたずら電話はくるわ。

―― 脅迫状なんて来るんですか。

村田 すっごい人がいました。『タイムショック』で5週目に負けたとき、「チャンピオン大会に出てください」ってテレビ局から電話が来たんですよ。「私はチャンピオンではないので」と断ったんですが、結局「それならば、強豪大会とします」ということになった。ところが、私の前に全問正解の女の人がいたんですよ。で、自分が呼ばれないのはどういうことかと恨みを買いましてね。

―― 嫉妬ですか。しかし、よく住所がわかりましたね。

村田 当時は戸籍謄本とか自由に見られた時代ですよね。だから私も、何々区の何々荘まで相手の家を突きとめて、激しい手紙の応酬をして。

■「ダメです、村田さんは」って、クイズハンターから止められた

―― テレビで目立つと、ご近所からの風当たりみたいなものもありましたでしょう?

村田 近所の人って意外とそっぽ向いてますよ。やっぱり、やっかみってあるでしょう。クイズ番組に出るたびに何十万とかもらっていれば、腹も立ちますよ。

―― 石野さんは、もらった賞品を近所の人におすそ分けしていたとか。

村田 私も賞品はほとんど配りました。コーヒー1年分、アメ玉1年分とかもらってもしかたないですから。

―― 賞品の多さといえば、『100万円クイズハンター』に出られたことは?
 
村田 あの番組は『タイムショック』と同じプロデューサーだったんですよ。で、「ダメです、村田さんは」って向こうから言われました。「この人みんな持っていくぜ」って視聴者に言われるから、出るのやめてくださいって(笑)。

■「クイズのエリート、社会の落ちこぼれ」

―― クイズ番組では、どれぐらい優勝されているんですか。

村田 よくわからないんです。横浜のTVKの番組とか小さいものも合わせると。

―― 初優勝は?
 
村田 NHKの『ホントにホント?』かな。今60過ぎのメタボの長男が学生の頃だから、47か48歳ぐらいのときかと。

―― ということは1977、78年ぐらいですね。村田さんがデビューされた頃と現在のクイズでは、問題の作りもだいぶ変わったと思いますが。

村田 違います、違います。昔は、『クイズグランプリ』あたりで、「野球は1チーム9人、ではサッカーは何人?」という牧歌的なのが問題としてまかり通ってましたし、クイズする人が今みたいに尊敬されませんもの。「クイズのエリート、社会の落ちこぼれ」という言葉もあったんですよ。なにせビデオがない時代ですから、クイズを見たいと思ったら家にいなくちゃならない。クイズ番組に夢中になってるクイズに強い人なんて、要はヒマ人ってことじゃないですか。子どもが2人いて、どこかに遊びに行くわけにもいかない私も、クイズに夢中になれるヒマ人でした(笑)。まぁあの時代は、女は働くものじゃないみたいな雰囲気でしたから。子離れしてからちょっとだけ働きましたけれども。

■「宝石店経営」というウィキ情報の真相

―― ウィキペディアに宝石店経営者とありましたが、あれは違うんですか。

村田 経営者じゃないです。宝石屋のアルバイトですよ。ただ、テレビで顔を知られているおかげでムチャクチャ売れたんです。小さい会社で月に1000万売れたらいいというところ、私一人で、展示会で月に1000万以上売ってましたからね。年に何億ですよ。今もそれの引き続きで、月に何回か宝石屋さんに顔は出しますけど。

―― 宝石屋さんには何かご縁があったんですか。

村田 何もありませんよ。だけど、孫が生まれたとき息子の嫁が言ったそうですよ。「お母さんが子どもの面倒みてくれたら、私は仕事を続けられる」って。冗談言うなって(笑)。だいたい私ひとりっ子だから、子どもが苦手なんですよ。それで一念発起して、働くことを決めたんです。

■私、嫌なババアと思われたいんですよ

―― お孫さんは何人いらっしゃるんですか。
 
村田 4人。ひ孫もいるみたいです。こないだ生まれたらしいですよ。「おばあちゃんというのは孫が来たら喜ぶものじゃない?」って孫が言うから、「よそはそうかもしれないけど、私は家で退屈してることがないから、客なんてみんな時間泥棒よ」って言ったら、「へえ!」ってあきれてた。私、嫌なババアと思われたいんですよ。いいおばあちゃんって思われて、たびたび来られたら困るじゃないですか。私だってやりたいことはたくさんある!

―― 目指すところが嫌なババアとは(笑)。お孫さんは、おばあちゃんがクイズの女王だということはご存知なんですか。

村田 知ってますけど、あまり関心はないですね。

■認知症のテスト、100点満点で97点。クイズで優勝したようなもの

―― 現在87歳ですよね。とにかくパワフルにお見受けしますが、何か秘訣はありますか。特別な健康法とか。

村田 月曜日と木曜日の午前中はストレッチ体操ね。体操をしたあとには近所の整骨院で鍼。ここの院長、イケメンなんですけど、先生に「根性の他、悪いところなし」と言ったら「ハリとおきゅうで根性直せる」と調子のいいこと言っていました。「7年通っているのに治らない」と言ったら「力不足で申し訳ない」だと。「謝るな!」って(笑)。食べ物は肉が好きですね。ステーキなんか週に2回は食べますから。安いのを家で焼いて歯を食いしばって食べるから、ますます歯は強くなるばかりで、入れ歯なしで27本自分の歯。あとはぐっすり寝ること。寝たら最後、7時間は目が覚めないです。

―― 若い年代のご友人のほうが、村田さんのリズムに合いそうですね。

村田 そうですね。耳が非常にいいのも自慢ですし。メガネはしてるけど、メガネ忘れて出歩くぐらいですから。この10月には、メガネなしで運転免許の更新ができましたから。3年前の認知症のテスト、あれも100点満点で97点取ってますからね。こんな人、2人目ですって。クイズで優勝したようなものです(笑)。

―― 免許証は返却されないんですか。

村田 私はもらったものを返すのが嫌なたちなの。運転はしませんけど。メガネをはずして新聞の一番小さい字も読めますしね。

■こないだは寺門ジモンが食べてた巣鴨の店に行きました

―― 新聞はクイズのことを意識しながら、毎朝くまなくお読みになるんですか。 

村田 もちろんそうですよ。ただ、毎日目は通しますけど、くまなく読んだら1日潰れちゃう。テレビの録画も見なくちゃならないし、パチンコも好きなんです。私は漫画が読めないから、漫画の知識はパチンコで得ますね。『キャプテン翼』とか『エヴァンゲリオン』とか、『北斗の拳』のラオウとか。名前ぐらいは覚えるじゃないですか。

―― ご趣味としては、パチンコのほかには?
 
村田 食べ歩きもわりと好きですね。こないだは寺門ジモンが食べてた巣鴨の店。朝、テレビで見て、お昼には巣鴨のとげぬき地蔵にいました。アタリハズレもありますけどね。横浜の食べ放題で食べた北京ダックはマズかった。あれ、ペテンダックだよ。

■トム・ハンクスの映画はどういうわけだか全部見てますね

―― それにしてもフットワークが軽いですね。

村田 だから同年配からは嫌われますね。一緒に歩いてて「ねえ」って振り返ったら、ずっと遠く後ろにいたりして(笑)。「あなたといると疲れるのよね」って言われるけど、私もそういう人たちといると疲れます。それに、お昼だからあっさりお蕎麦にしようって、お昼にお蕎麦を食べたら午後から力が出ないでしょうって私は思うんですよ。

―― 映画はご覧になりませんか。お好きなスターとか? 

村田 最近はあんまりですけど、『戦場のピアニスト』は好きでした。あとは、あれ、『グリーンマイル』の……ええと、トム・ハンクス! 

――正解!

村田 トム・ハンクスの映画はどういうわけだか全部見てますね。好きというわけでもないのに、あの人の映画は「あら、また見ちゃった」という感じ。『ラストエンペラー』は5回見たな。ジョン・ローンが好きだったので。

―― ジョン・ローンは今でもお好きなんですか? 

村田 いや、もう飽きちゃった(笑)。私はなんでも3年か、長くて5年周期で飽きるので。そのあと好きになったのはリュ・シウォン、あの人の本から何からいっぱい買い込んで。あの人DV、家庭内暴力かなんかで離婚したでしょう。もう飽きました。あと、『チャングムの誓い』に出てた……忘れちゃったな……あ、チ・ジニ。もともとカメラマンだったのが俳優になった人。で、今はピかな、RAIN。

――日本人俳優はダメですか。
 
村田 考えてみたら好きなのお笑い系だけ。ユースケ・サンタマリア、ラバーガール……。

■顔のしわより脳のしわですよ

―― 長い人生、クイズがご自身に教えてくれたことって何だと思いますか? 

村田 そうねえ……。昨日の自分より今日の自分のほうが私は好きってことかな。やっぱり昨日より今日、何か1つよけいに覚えたいんですよ。人間って猛烈な勢いで忘れるでしょう。その流れに逆らうことはできないけど、昨日より1つよけいに利口になっていく。そう考えると前向きに生きていけると思いません? 

―― 力がわいてくるお言葉です。もういい年だとか言ってられませんね。

村田 顔のしわより脳のしわですよ。私の我流ですけど、首から上のしわって一定してると思うんです。だから、顔のしわをできるだけ脳のしわに入れると、それだけいいんじゃないかなと思って。だから、顔は一生懸命しわを作らないように手入れしてますよ。それから、自分以外の人はみんな自分の先生とすることですね。よく「バカは教えたがり、利口は学びたがり」って言うじゃないですか。生きているとね、私の知らない世界や知識ってまだまだあるんだと思いますよ。だから毎日、いろんな人に会いたいって思ってます。

―― 今、新しくチャレンジしていることはありますか。

村田 こないだずっと暗記していたのは円周率。ホノルルクラブのメンバーが1000桁まで書いてあるのを持ってきてくれたので、トイレに貼って770ぐらいまで覚えたんですけど、もう忘れました(笑)。まだまだ、覚えることはたくさんありますね。

構成=皆川秀
写真=杉山秀樹/文藝春秋

むらた・えいこ/1930(昭和5)年、北海道美唄の生まれ。『タイムショック』『アタック25』『アップダウンクイズ』など数々のクイズ番組を優勝。「ホノルルクラブ」会長を務める。

(「文春オンライン」編集部)

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