「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」本当はこうして欲しかった!「理想のクライマックス」を妄想する

「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」本当はこうして欲しかった!「理想のクライマックス」を妄想する

©getty

 大手マスコミの元気な若手社員「恋ちゃん」と、その先輩で重度のこじらせオタク・小石輝のガチンコシネマトーク。今回はいよいよ「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」編です。その出来を高く評価しつつ、どうしても納得いかない点もあると言う小石輝。とうとう「自分にとって理想のクライマックス」を妄想してしまいます。果たしてその内容は? ネタバレありなので、未見の方はご注意を。

■エピソード8のルーク=「自信と威厳なき現代の熟年世代」

恋ちゃん「小石さん、小石さん。『最後のジェダイ』もう観ましたよね!」

小石輝「うん、まあな」

恋「おもしろかったじゃないですか! これまでスター・ウォーズは『まあ、お付き合いしておこうかな』という程度だったんですけど、今回は観ていて結構ハマリましたよ。従来のシリーズにあった数々の『お約束』をどんどん裏切りつつ、物語がヒートアップして、最後には怒濤の盛り上がり。各キャラクターも生き生きしているし、『エンターテインメントの王道』と言っていいぐらいの出来だと思いましたけど」

小石「確かになあ……」

恋「あれれ、ノリが悪いですねえ。何か気に入らなかったところでもあったんですか?」

小石「いや、君の感想はすごくまっとうやと思うよ。まあ、オレのひっかかりの半分は、中学生以来、オレがずっと愛し続けてきた『従来のスター・ウォーズ』はこれで完全に終わったんやなあ、という感傷。後は、『ものすごくよく出来た作品やけど、一番肝心な所が抜けとるんやないか』という不満。そして『これで次にうまく続けられるんかいな』という不安やな」

恋「ふーん。スター・ウォーズは面倒くさいことを考えずに、素直に楽しむのが一番だと思いますけどね。それに、今回はタイトル通り『最後のジェダイ=ルーク・スカイウォーカーの物語』と言ってもいいぐらい、ルークが美味しい所をかっさらっていったじゃないですか。オールドファンも大満足だったと思うんですけど」

小石「オレも『ルークの物語』としては、完璧な出来栄えやったと思う。一番良かったのは、ルークを成熟した大人ではなく、『挫折し、自信を喪失した、むさ苦しいオヤジ』として描いたことやな。朝日新聞の石飛徳樹記者が紙面で指摘していた通り、ルークは『自信と威厳を持ち合わせない現代の熟年世代を体現する存在』と言ってええやろう。自らの甥であるベン・ソロ=カイロ・レンを導く上で致命的な過ちを犯し、そのトラウマのせいで、新たに教えを求めてきた主人公のレイとも、まともに向き合えない。

 1回目に観た時には『なんでオレたちのルークが、こんな情けないヤツになってしもうたんや!』とイライラしたけど、2回目で『ああ、オレたち自身のことを描いているんか』と気づいたら、すうっと納得できたわ」

恋「そう言えば、小石さんも仕事ではもう後輩を指導するべき年代なのに、自分のことばかり熱心で、ほとんど構ってあげませんよね。たまに若手社員と組んでも、ダメ出しするばっかりで、建設的アドバイスや励ましはゼロ。確かにレイに対するルークの態度を彷彿とさせますね(皮肉な笑み)」

小石「ギクッ……(汗)」

恋「一人で勝手に悟りを得て、フォースを使えるようになる日も近いのでは(微笑み)」

小石「……(クソッ、こいつの毒舌には勝てん!)。何とでも言えや。君にはルークや俺の苦悩と孤独は、到底理解できんやろうからな。そこをきちんとフォローしてくれたのが、まさかの再登場を果たしたヨーダや。『Young Skywalker、Missed you, I have. (若きスカイウォーカーよ、会いたかったぞ)』『失敗こそが最高の教えじゃ』なんて、あの厳しかったヨーダが、こんなにも温かい言葉をかけてくれるとは……。もうそれだけで、涙があふれそうになったわ」

恋「(完全に自分とルークの見分けがつかなくなっている。やっぱりこの人は本物のアホだ!)。それはよかったですねえ……」

■マーク・ハミルとキャリー・フィッシャーによる「天下の名演」

小石「あと、ぐっときたのはルークとレイアの再会シーンやな。ほんのちょっとした表情の変化やさりげない目配せだけで、長い年月の間に降り積もった感情や、お互いへの温かい気遣いをしみじみ感じさせてくれる。ルーク役のマーク・ハミルも、レイア役のキャリー・フィッシャーも、スター・ウォーズ後は決して華々しい役者人生やなかったけど、このシーンを観るだけで、伊達に年を喰ってきたわけじゃないことが分かる。『天下の名演』と言ってええやろう」

恋「私がスター・ウォーズに惹かれるのも、そういう深い面が、時折顔を見せるからかも」

小石「これらのシーンも含め、今作中で示される旧作へのリスペクトについては、文句のつけようがないわ。作り手たちの『スター・ウォーズ愛』の現れやな。だけどそれが、今作の最大の弱点とも言える」

恋「誉めたと思ったら、またひねくれたことを言い始めましたね」

小石「俺が素直なことしか言わなくなったら、ただのくたびれたオヤジやで。ところで、君に質問やけど、『最後のジェダイ』が今後のシリーズ展開のために目指したミッションは、何やと思う?」

恋「(突然先輩から振られて、ちょっと緊張)。……それは、これまでずっと続けてきた『スカイウォーカー家の物語』としてのスター・ウォーズを終わらせて、世界観を広げることでしょうね」

小石「俺も、その通りやと思う。最初に作られたエピソード4〜6は、ルーク・スカイウォーカーと、その父親であるアナキン・スカイウォーカー=ダース・ヴェイダーを巡る物語やったし、次に作られたエピソード1〜3は、アナキンが母や妻を深く愛するがゆえに、フォースのダークサイドに堕ちてしまう悲劇やった。そして、銀河系の命運を決するのが、強大なフォースの使い手であるルークやアナキンが、ダークサイドへの誘惑に対してどう抗うか、ということや。つまり、『銀河系全体の運命は、スカイウォーカー家の親子ゲンカや夫婦ゲンカの動向次第』というわけや」

恋「世界の運命と主人公の運命が直接結びついてしまう。いわゆる『セカイ系』の走りですよね。だけど、そこがスター・ウォーズの魅力でもあったのでは?」

小石「俺もそう思うよ。エピソード4〜6は、ルーカスが自らと父親との葛藤を投影した作品やし、エピソード1〜3は、スター・ウォーズで自らが成功の階段を駆け上がったにも関わらず、仕事上のパートナーでもあった妻とは別れざるを得なくなった、苦悩と悔恨が反映されている。要するに、ルーカスが自らの生々しい情念やトラウマをぶつけた作品でもあったわけや。理性的に考えれば矛盾だらけの荒唐無稽な物語なんやけど、どこか人間の実存に迫る深みや重みがあり、だからこそ多くの人々を引きつけた。だけど、映画のシリーズとしてみれば『スカイウォーカー家の話』をずっと続けていたら、当然マンネリになって飽きられてしまう。ルーカス自身、『スター・ウォーズは6作で打ち止め』と宣言していたのは、それに気づいていたからやろう」

■「スカイウォーカー家の物語」からの脱却と「誰もがヒーローになり得る世界」の再構築

恋「でも、スター・ウォーズはもうルーカスの手から離れてしまったし、それを受け継いだディズニーは、どんどんスター・ウォーズの新作を出し続ける意向ですからね」

小石「そこでどうしても必要となるのが、スター・ウォーズを『スカイウォーカー家の物語』から脱却させ、『誰もがヒーローになり得る世界』として再構築することやった。そやけど、いきなりそれをやったら、旧作ファンの猛反発を喰らうやろう。だから、前作の『フォースの覚醒』では、過剰なまでに旧シリーズを意識し、エピソード4の物語の流れを、ほとんどそのまま辿ってみせたわけや。主人公のレイについても、スカイウォーカー家とのつながりを暗示するような演出をしていたしな」

恋「だけど、今回の『最後のジェダイ』は明らかに群像劇ですよね。前作から主要キャラの一人だった脱走兵『フィン』はもちろんのこと、エースパイロットの『ポー・ダメロン』や、新キャラクターの整備兵『ローズ』、レジスタンスの指揮をとる女性提督『ホルド』など、それぞれのキャラクターにきちんとした物語が与えられ、成長の過程や見せ場が描かれている」

小石「そこが今回の一番の見どころやな。俺が特にぐっときたのが、ホルドおばさんや。『組織の論理を貫徹し、しかもかっこいいキャラクター』なんて、跳ねっ返りばかりが活躍するこれまでのスター・ウォーズでは、考えられへんかったからなあ。彼女とレイアとのやりとりの際に、スター・ウォーズのメーンテーマ曲でもある『ルークのテーマ』がBGMでちょこっと入る。『彼女だってヒーローであり、この世界に欠かせない存在の一人なんや』という本作の主張を、明確に感じさせる演出やな」

恋「フィンの相棒となるローズも、旧シリーズだったら『その他大勢の一人』という扱いしか受けられなかったでしょうね。この群像活劇路線、私は好きだし、スター・ウォーズ世界の奥行きがぐっと広がったと思いますよ」

■唯一にして最大の弱点は、主役のレイが全然目立たないこと

小石「そやけど、群像劇でもやっぱり主役は大事やで。『最後のジェダイ』の、ほとんど唯一にして最大の弱点は、主役のレイが全然目立たへんことや。彼女がなんでダークサイドに堕ちず、レジスタンスの側で戦い続けるのか、その理由がさっぱり見えてこない。要するに『主人公の物語』がきっちりと描かれてへんのや」

恋「うーん。そこは私も同意せざるを得ないなあ。ダーク・サイドに堕ちたカイロ・レンとはフォースを通じて何度も心を交わらせ、明らかに共感しあっている様子なのに、師匠になるはずのルークとは、最後まで心を通わせることができない。前作ではいい感じだったフィンとの関係も、今回はまったく描かれないし。彼女がカイロ・レンから『仲間になろう』と手を差し伸べられた時には、レイが本当にそれに乗っちゃうかと思ったぐらいですよ」

小石「そうやねん。レイがダークサイドに堕ちる動機は山ほどあるのに、敢えてライトサイドにとどまり続ける理由がよう分からん。決定的にまずいのは、『ルークとレイの関係』にきっちりとケリがつかないまま、物語が終わってしまうことや。ヨーダだって、ルークに『ベン・ソロ(カイロ・レン)を失い、レイまでも失うことはない』『お前が学んだことを彼女に伝えよ』とアドバイスしているのに、結局ルークはそれをやらずじまいやからなあ……。別にレイの出自がスカイウォーカー家でなくても構わんし、レイだけを目立たせる必要もないけど、旧シリーズの主役だった『ルークの魂』は、しっかりとレイに受け継がれた、という描写だけはきっちりやってもらわんと、俺は納得できん!」

恋「物語の流れ上、これ以上レイとルークを絡ませるのが無理だったのでは?」

■本当はこうして欲しかった! 妄想クライマックス

小石「いやいや、そんなことはないで。例えば、クライマックスの直前、ルークがフォースを使って、レイに『私は自分の犯した過ちを償わなければならない。君の力が必要だ。助けてくれ』と語りかけるシーンを入れるんや。『ルーク最後の大芝居』が、実は二人のフォースの力を合わせた共同作業だった、ということになれば、ルークとレイの和解にもなるし、二人の絆もぐっと深まるやないか」

恋「ルークは『ジェダイの帰還』で銀河皇帝に殺されそうになった時にも、ダース・ヴェイダーに『お父さん……、助けて!』と言っちゃうぐらいのへたれキャラですからね。『助けて』で過去作の韻を踏むのは、確かに効果的かも」

小石「今となっては、そのひ弱さこそがルーク最大の魅力や。ルーカスが、自分自身の弱さをルークに託してさらけ出したことで得られた『人間としてのリアリティ』やろう。そして、レイが仲間を助けるために無数の岩をフォースで動かそうとする時には、今度はルークがレイをサポートする。『There is no try. Do it !(やってみるんじゃない。とにかく、やるんだ)』とか、ヨーダっぽいことを言いながらな。そして、エピソード4の最後でオビ・ワン・ケノービがルークに告げた『Remember. The Force will be with you, always(忘れるな。フォースは常に君と共にある)』という言葉をレイに残して、去っていくんや」

恋「ルークがやり残していた『レイを導くこと』を、先人たちの教えと共に完結させるんですね」

小石「劇中ではこの二つのことが同時並行で起きるけど、演出を工夫すれば時系列をずらすことは十分可能やと思うで。本当は、今回のルークは、『新主人公であるレイのキャラを立たせるための踏み台』になるべきやったんやけど、逆にレイが『ルークの物語を完結させるためのサブキャラの一人』みたいになってしまっとる。俺はレイを携帯の待ち受け画面に使っているぐらい、前作のレイが好きやったから、そこが残念でたまらんのや」

恋「なんだかんだ言っても、新シリーズも大好きなんですね……。しかし、作品の不満な部分を自分の妄想で補完しちゃうなんて、小石さんのスター・ウォーズ愛も行き着くところまで行っちゃってますね」

小石「スター・ウォーズは、俺がこの世界を生き抜くための支えの一つやからな。失うわけにはいかん。これからは、ディズニーが作るスター・ウォーズと、俺が妄想するスター・ウォーズと、どっちがおもしろいか勝負じゃ!」

恋「……(やっぱりこの人とは、あんまり関わらないほうが良さそうだ)」

(小石 輝)

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