脳性麻痺の若き女性、過保護な母との2人暮らし……直面する様々な現実とは?

脳性麻痺の若き女性、過保護な母との2人暮らし……直面する様々な現実とは?

HIKARI監督

 今の生活から脱け出したいと願う1人の若き女性。映画は、身体に障害を抱える彼女が直面する様々な現実問題を、大胆に照らし出す。

 2月7日(金)より公開される映画『37セカンズ』の主人公は、漫画家のゴーストライターとして働くユマ。出生時に脳性麻痺の障害を負い車椅子で生活する彼女は、過保護な母と2人暮らし。自立を願うユマは、やがて外の世界と対峙していく。監督は映画教育の名門南カリフォルニア大学院(USC)で学んだHIKARI。その激動の半生にも驚かされる。

「昔から色んなことに興味がある子供でした。小学生の時に大阪の合唱団に入り、ミュージカルやオペラに出演していました。次第に日本が窮屈に感じられてきて、高校3年生で単独渡米。南ユタ州立大学で舞台芸術やダンス、美術学を学び、その後は役者として活動していました。当時はアジア人には全然役が付かず、オーディションを受けては落ちてを繰り返し、ミュージックビデオやCMに出演したり。その合間に、俳優やダンサーの写真を撮る仕事もして。でも30代が近づき、やりたいことはもう全部やりきったなという気がしてきた。そんな時、母に『昔、8ミリで映画を作ってたじゃない』と言われ、じゃあ映画を作ってみようと(笑)。常に新しいことをしたいという欲求が強いんです。何の偶然か難関校と言われるUSCに入れたわけだし、腹をくくって必死で勉強しました」

 劇中では、障害者と性をめぐる問題が真摯(しんし)に描かれる一方で、母と娘の依存関係や搾取される労働といった様々なテーマが盛り込まれる。

「母に離してもらえず葛藤する娘という構図はよくあるし、仕事のボスに抑圧され苦しむ人も多い。映画を通して障害者への理解を深めてほしいと思うと同時に、誰もがどこかしら共感できる作品にしたかった。この映画について『こんなのおとぎ話じゃないか』と言う人もいるかもしれない。でも私は、映画の持つポジティブな部分を大事にしたい。非現実的な世界に没頭させてくれる映画もあるけど、登場人物と一緒にその人生を体験できる作品を作りたいんです」

 主演の佳山明(かやまめい)は、ユマ同様、出生時に身体に障害を負った。演技は全くの初心者だが、ハードな演技も見事にこなしてみせた。

「有名な女優さんに演じてもらうことは全く考えませんでした。有名じゃなくてもいい、きっとどこかに本物のユマがいる、私の仕事は彼女を探し出すことだと信じてオーディションを続けました。そうして明ちゃんに会えた。もう彼女しかいないと直感しました。とはいえ、体調面でも、精神的にも、どこまで彼女が役を演じきれるか不安はありました。だから彼女とじっくり話をし、彼女自身の体験、人生を話に盛り込んだ。リアルな部分に少しずつ踏みこむことで、彼女の良さを自然と引き出せると思ったんです」

 その言葉通り、映画には、1人の女性の“リアルな”感情がたしかに刻まれている。

HIKARI/大阪市出身。USCの卒業制作『Tsuyako』(11)で監督デビュー。米国テレビシリーズ数話分の監督や、ユニバーサルピクチャーズの長編映画が決定するなど、様々な企画が進行中。

INFORMATION

映画『37セカンズ』
http://37seconds.jp/

(月永 理絵/週刊文春 2020年2月13日号)

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