【アカデミー賞】17部門的中のMs.メラニーが語る、ポン・ジュノ監督の“恩返し”スピーチに感動した理由

【アカデミー賞】17部門的中のMs.メラニーが語る、ポン・ジュノ監督の“恩返し”スピーチに感動した理由

ポン・ジュノ監督(左)と通訳を務めたシャロン・チョイ氏 ©?AFP/AFLO

 映画会社23年間勤務の“オスカー予想屋”、Ms.メラニーは2019年度第92回アカデミー賞で、作品賞の『パラサイト 半地下の家族』をはじめとする17部門を的中させました。Ms.メラニーはポン・ジュノ監督の受賞スピーチを振り返り、こう語ります。

「ポン・ジュノ監督の監督賞受賞スピーチで印象に残ったのが、いかにスコセッシ監督を尊敬し、彼の背中を追ってきたかと、西洋では無名の自分を常に応援してくれたタランティーノ監督に対する感謝でした。映画業界で働いていると、タランティーノ監督やスコセッシ監督がいかにアジア映画を称賛し、若い監督をサポートしているかが良く見えます。ポン・ジュノ監督が、その恩返しを最高の晴れの場でしているのを見て、心から感動しました」

 著書『 なぜオスカーはおもしろいのか? 受賞予想で100倍楽しむ「アカデミー賞」 』(星海社新書)から、過去30年間の授賞式で心に残った名スピーチを特別公開します。

■「ドモアリガト、ミスター・ロボット」

 私が見てきた30年間の授賞式のなかで、特に心に残っているスピーチや思い出深いエピソードを、いくつかご紹介しましょう。

 30年も見ていますから、その年々で印象に残るスピーチは結構あります。そんな中、日系人や日本人の受賞はやはり特別。受賞するたびいつも嬉しくなります。

 私のオスカー鑑賞史の中で最初に見た日本人の受賞は、名誉賞の黒澤明監督です。80年代、90年代ではほかに、スティーブン・オカザキ監督(91年作品『収容所の長い日々/日系人と結婚した白人女性』で短編ドキュメンタリー映画賞受賞)や伊比恵子さん(98年作品『ザ・パーソナルズ〜黄昏のロマンス〜』で短編ドキュメンタリー映画賞受賞)などが日系人、日本人として印象に残りました。

 2007年度には、2人の日本人が受賞をします。『おくりびと』(08)の滝田洋二郎監督と、『つみきのいえ』(08)の加藤久仁生監督です。この時の加藤監督のスピーチは、私の中でいまだに歴代ベスト3に入っています。

 加藤監督はちゃんとスピーチを考えてきていたようで、ゆっくりと、ちょっとたどたどしい英語で話し始めました。「サンキュー、マイサポーター」「サンキュー、オールマイスタッフ」「サンキュー、マイペンシル」「サンキュー、アニメーション。」それは、シンプルながらも心のこもった、とてもオリジナルなスピーチで、見守る観客も皆、温かく微笑んでいました。

 そしてそのスピーチの最後を、日本語で締めくくったのです。

「どうもありがとう、ミスター・ロボット」

 ここで会場には大きな笑いが起こりました。なぜならこの締めの言葉は、米国のバンドStyx(スティクス)の「MR.ROBOTO(ミスター・ロボット)」という懐かしの名曲の歌詞を借りたものだったから。同曲の歌詞は「ドモアリガト、ミスター・ロボット」というフレーズが何度も出てくるのです。

 さらに言うと、『つみきのいえ』の制作会社が日本のROBOT(ロボット)という会社で、実はこの締めの言葉は会社名と歌をかけている――とわかっている協会員がどれくらいいたかはわかりません。が、日本人の私たちにはそれが伝わりましたし、その歌のフレーズを引用することで、会場の協会員たちもジョークだと気づき、笑いが起きました。

 このスピーチは本当にブラボーでした。現地の人にも伝わり、まぎれもなく自分の言葉で心のこもったスピーチをする。ROBOTのスタッフたちも本当に嬉しかったでしょう。今まで見た中で一番くらい、心に残ったスピーチです。

■アンナ・パキンとキャシー・ベイツ

 日本人以外で忘れられないのは、第66回『ピアノ・レッスン』(93)で助演女優賞を獲ったアンナ・パキンです。当時まだ11歳の可愛い少女でした。

 壇上に上がった彼女は興奮しすぎてしまい、最初の1分くらいはぜいぜいと呼吸を繰り返すだけで何もしゃべれませんでした。

 しかし、周りが「ちょっとどうしようかな」と思い始めた時、突然彼女はすらすらと話し始めたのです。「ジェーン(・カンピオン監督)、ジャン(・チャップマンプロデューサー)&ホリー(・ハンター/同作の主演女優で、主演女優賞を受賞)に感謝します」ああ、良かった、ちゃんと喋れたとホッとするとともに、その子供らしさに魅了されました。ものすごく可愛かったです。

 第63回『ミザリー』(90)で主演女優賞を受賞したキャシー・ベイツのスピーチは感動的でした。その内容は、同作で演じた狂人アニー・ウィルクスの役柄とは違い、落ち着いた、時にユーモアを交えたもの。関係者に一通り感謝した後、友人、そして家族に感謝の言葉を述べたのですが、最後、「お父さん、どこで見てるかは分からないけど、見ていてくれているといいなと思います。ありがとう」と、どこにいるか分からないお父さんに向けて涙を堪えながら感謝を伝えたのです。それまでが落ち着き払った大人のスピーチだっただけに、最後にエモーショナルになったのは印象に残りました。

■エイズ患者に寄り添ったトム・ハンクスのスピーチ

 授賞式で涙する人は少なくありませんが、第66回『フィラデルフィア』で主演男優賞を獲ったトム・ハンクスも良かったです。

 同作はエイズにかかった主人公が裁判で戦い、最後に勝利を勝ち取る話なのですが、彼のスピーチはそれまでに亡くなった無数のエイズ患者に寄り添う内容で、涙ぐみつつ話す彼の姿には心を打たれました。

 彼はこの次の年も『フォレスト・ガンプ』(94)で主演男優賞を獲りますが、この1度目の受賞の方がずっと感動的だったと記憶しています。

(Ms.メラニー)

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