今どき男児のリアルな気分 『コロコロコミック』編集長が考える“子どもトレンド”2018

今どき男児のリアルな気分 『コロコロコミック』編集長が考える“子どもトレンド”2018

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 月日が経つのは本当に早いです。子どもトレンドの一年を振り返るということで今回のお題をいただき、ちょうど一年前の弊誌「コロコロコミック」をパラパラと眺めました。突然ですが、去年の今ごろ子どもたちの間で一番人気のあった芸人を覚えていますか? 一年前の号にてギンギンの笑顔で誌面に登場していたのが、今となってははるか昔のようにも思えます。その方は……、そうです! ピコ太郎です。もちろんピコ太郎さんは今も活躍していると思います。でもクラスの人気者のお笑い好きな小学生男児が「35億!」とドヤ顔で言ったとしても、もう「PPAP!」とは言わないでしょう。そう、大人たちの世界と同様に子どもたちのトレンドも移ろいやすいのが常です。

■子どもの脳内は好奇心のみ、脈略は二の次

 そんな移ろいやすい読者を相手にしている「コロコロ」の誌面は、ある意味子どもたちの頭の中そのものを目指しているのかもしれません。かつて「コロコロ」を愛読してくれていた方であれば理解いただけるかと思うのですが、「コロコロ」の誌面レイアウトやページ構成は、大人から見ればかなりめちゃくちゃです。読めないと思います。ですが、編集部は読者の特性をこうとらえています。さっきまでAの事を熱心に話していたと思っていたら、いつの間にか意味が取りづらくなって、よくよく聞いたらとっくに話題はBに移っていて、おいおいと思ってる間にあっという間にCへと変わっている。

 大人から見れば意味不明でも、小学生男児にとっては当たり前。脳内は好奇心のみ、脈絡は二の次です。

 だから「コロコロコミック」の誌面は、できるだけそんな子どもたちの頭の中に近づければと思っています。そんな毎日を過ごしながら誌面作りをしていますので、申し訳ないですが、お題に対して評論家のように系統だった解説をしてゆくことはできません。私たち編集部が、日本中の小学生男児を熱狂させるべく誌面作りをする際に最も重要視しているのは、日本の子どもたちを取り巻いているリアルな“気分”をとらえることだと思ってます。

■子どもたちはテレビのチャンネルを合わせなくなっている

 さて、先に名前のあがったピコ太郎は、「YouTube」動画から火がついたヒーローでした。

 編集部では、子どもたちの世界では「YouTube」をはじめとした動画サイトとそれを視聴するハードとしてのスマホやタブレットが、テレビと同等いやそれ以上の影響力を持つようになってきているのではないかと思っています。

 今の小学生が学校から帰宅して最初にする娯楽活動は、おそらく家族全員が使用できるタブレットか親のスマホでYouTube動画を見ることです。

 かつての子どもたちだったら、テレビのリモコンを自分の観たいチャンネルに合わせる事が日常でした。しかし現代の小学生にとってテレビ番組とは、好きな番組を録画しておいて、自分の好きなタイミングで観るものになっています。昨年から始まった録画視聴率において、アニメは他のジャンルより抜きんでて録画視聴率が高くなっています。リアルタイム視聴の減少。録画視聴あるいは各種配信サイトでの視聴習慣化。「何曜日の何時はあの番組の時間だから、絶対にテレビの前に座らねば」という“気分”は、今の小学生には希薄なものになっています。信じがたいことですが、たまたまリアルタイムで好きなアニメを見ていた子どもが、CMになった時、リモコンの早送りボタンを押しても画面が変わらないことを親に訴えるといった話を複数の方から聞きました。

 テレビの地位が弱まったとは思いませんが、今の小学生にとって、テレビとはそのような存在に位置付けられています。

■ポケモンGOはなぜ子どもにウケないのか

「ポケモン」の人気は健在です。11月に発売された「ポケットモンスターウルトラサン/ウルトラムーン」も年内200万本の売り上げに届く勢い。20年を迎えた人気作は、子どもだけでなくかつて子どもだった30歳前後の「ポケモン第1世代」にも、いまだ支持されています。

 では昨年より大ブームとなっているアプリゲーム「ポケモンGO」はどうでしょうか。「ポケモンGO」は現在、主に40代、50代に厚い支持層があるといわれています。翻って子ども層はどうかというと、どうもいまイチ感が漂っています。先ほどまでスマホやタブレットの浸透を言ってきたのと、これでは辻褄が合わないのではと思われるかもしれません。が、ここに現代の子どもとスマホとの関係性が浮かび上がってきます。

■親子間のスマホリテラシーは、今どうなってるのか?

  編集部が年に一回行っている大規模アンケートから推測する小学生男児のスマホ所有率は9%前後。対して、スマホやタブレットなどのアプリである程度日常的に遊んでいるという比率は70%前後。このパーセンテージの差から浮かび上がるのは、2017年の親子間のスマホリテラシーです。すなわちまだ子どもに専用のスマホは持たせたくないが、家庭のWi-Fi環境下でのスマホやタブレットの使用は認めるというのが親の気分。本当は自分のスマホが欲しいけど、親に従って家庭内でアプリゲームを楽しむので我慢というのが子どもの気分です。ご存知のように「ポケモンGO」は、リアルにその場に赴いてポケモンをGETするゲームです。子どもたちだって自分一人で歩き回ってポケモンをGETしたいでしょう。でも2017年の親子はここで線を引いているようです。

■「マイクラ」のリビング革命

 子どもにおけるアプリゲームのある種の停滞をしり目に、従来の家庭用ゲームで人気を二分したのは、「マイクラ」こと「マインクラフト」と「スプラトゥーン」です。第1作の発売は2017年ではありませんが、両ソフトとも、2017年にニンテンドースイッチ版が発売されました。

「よっしゃー、○○君の宝箱からいい剣が出たー!」

 やっと休みの土曜の朝、もう少し寝てたいんだけど、10歳になる長男の興奮した声で起こされます。寝室から這い出てリビングへ。

「パパ、声出さないで!今、通信中だから」

 見ると、テレビ画面には「マイクラ」が映し出されています。そして画面からはひっきりなしに子どもたちの声が。

「よし、次はオレが行く」

「○○君の作ったガチャ引いていい?」

 など、声の主は顔見知りの長男の友だちたち3、4人です。

「マイクラ」おそるべし!

 小学生男児のゲーム事情はここまで進化しています。

 友だち複数人で、同じゲームを、会話機能を使って話しながらプレイする日常。
まるで我が家に遊びに来てみんなでワイワイガヤガヤ遊んでいるのと何ら変わりない空気感。

 でも、確かにそこには長男しかいないのです。

“とにかく何でもできる”という以外、私は「マイクラ」がどんな内容のゲームなのかいまだ理解できません。しかし子どもたちの熱中ぶりを見るに、このゲームは無限のポテンシャルを秘めているようです。一過性のブームの類のゲームではなく、新しいスタイルを創りつつあるゲーム。子どもにしか理解できない面白さがそこにはあります。

■「スプラトゥーン」グラフィック革命

 一方「スプラトゥーン」は、任天堂から発売された、老若男女問わず幅広く支持を集めるアクションシューティングゲーム。なんと主人公となる自分は、人の姿に変身できる「インクリング」というイカ! そうです、このゲームはトガってます。 

 ゲームの面白さは当然ですが、スプラトゥーンが子どもたちから支持を集めている大きな要因は、人物をはじめとするグラフィックの斬新さに負うところが大きいと思います。一見海外のゲームのようにも見えるバタ臭さを、絶妙の味付けで処理。その新しさとオリジナリティに子どもたちはワクワクするのです。

■「コロコロ」が乗り遅れたブームたち

 小学生男児の関心事には何でも首を突っ込む「コロコロ」ですが、残念ながらうまく関われなかったヒット商品もありました。

 一つ目は「ハンドスピナー」。親指と中指で挟んで本体を回転させるとベアリングの力で数分回り続けるこの玩具は、春ころにネット記事で散見、すぐに編集部でも購入する者が現れました。しかし、手慰み的あるいは中毒的に回し続けるものの「だから何なの!」と記事として取り上げる切り口が見出せず、いつの間にかブームも過ぎ去ってしまいました。子どもたちが気持ちよさそうに回してる姿が印象に残ります。

 もう一つは「うんこ漢字ドリル」です。“うんこちんちん”を編集方針の柱とする弊誌にとって、この本の出現は「やられた」感が強かったです。立案者の方にお会いする機会もありお話を伺って共鳴する部分も多分にありました。“うんこちんちん”はいつの時代も小学生男児の“鉄板”です。まだまだ伸びしろはあるのだと、勇気をもらったヒット商品でした。

 守備範囲ではないのですが、このクリスマスシーズンになって女児向けの玩具「ミラクルちゅーんず!」が突如売れ始めたのも印象に残りました。

■バトルホビー最後の砦

 アプリ及びコンシューマーと、ここまで主にゲームについて取り上げてきましたが、「コロコロ」にとって一番の得意分野はバトルホビーです。“勝った負けた”から生まれる感情は、男児の原初の衝動であり、それを体現するホビーは、ミニ四駆の時代から「コロコロ」の看板です。勝負に負けた子どもが泣いている姿を見ると「このホビーはブームになる」と確信します。大人から見ればたかがホビーですが、子どもたちにとってはそれだけの情熱を傾け、一心不乱に打ち込むべき事なのです。

 2017年、そんな男児たちの手の中にあったもの、それは「ベイブレード」でした。現代版ベーゴマ遊びである「ベイブレード」のブームは今回が3度目となります。しかし今までの2回と同じやり方では人気は獲得できません。そこで今回開発された新しい機構が「バーストシステム」。なんとコマ同士がぶつかり合うと、まれにパーツがバラバラに弾け飛ぶ仕掛け。単純明快!このバーストシステムが子どもたちを興奮させました。タカラトミーの商品開発力と、手前味噌ですが編集部のキャラクター及び世界観構築力が見事に調和したからこそ、新たなベイブレードブームが生まれたのです。

 ただし、バトルホビーで成功を収めているのはベイブレードのみ。勝ち負けのある遊びをしたくない、あるいは自分が傷つきたくないという“気分”が子どもたちの世界に確かに存在します。そしてもしかすると2017年の現在では、そういった子のほうが多数派かもしれません。

「コロコロ」読者が将来なりたい職業の上位に、数年前からユーチューバーがランクインしています。“好きなことで、生きていく”というユーチューバーの提示する生き方が、今の子どもたちの気分にピッタリで、カッコよく見えるのでしょう。“人生そんなに甘くないぜ”とおじさんは当然思うのですが、一方で、せめて小学生のこの時期だけでも、そんな夢を見させてあげたいとも思うのでした。

(和田 誠)

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