ロッテ井口資仁新監督が見せたい「我慢した先にあるもの」

ロッテ井口資仁新監督が見せたい「我慢した先にあるもの」

©千葉ロッテマリーンズ

■「見せたいですね。我慢した先にあるものを」

 多忙を極めたオフも精力的に日本全国を動いた。千葉ロッテマリーンズを新たに指揮することになった井口資仁監督は12月も積極的な活動を続けた。球団行事に顔を出し、殺到する取材のオファーに応えた。そして日本各地に出向いては野球教室を繰り返し、子供たちに野球をする楽しさを伝えた。このオフ、いろいろな場面で新監督の活動に立ち会う機会があった私だが、今も心に強く残っている若き指揮官のメッセージがある。あるインタビューでの事だ。最後に「若い世代に伝えたいことはなにかありますか?」と聞かれた。少しだけ考えるとグッと目に力を込めた。そして力強く語り出した。

「見せたいですね。我慢した先にあるものを。今の若い子って、すぐに仕事を辞めたりするじゃないですか。しんどいとか、こんなはずではなかったって。でも、そこを乗り越えて欲しいですよね。もうちょっと頑張って、なにくそとやっていけば見えるものがあるかもしれない。そういう事を野球を通して見せたいですね」 

 思わず唸りたくなった。それこそが現役時代から背番号「6」がグラウンドで伝え続けてきたことの一つであった。09年にマリーンズ入りをして今日まで、この男が弱音を吐いたことや、悲しい顔をしたところを私は一度も見たことがない。爽やかな笑顔を見せてくれるか、攻めの表情。いつだって、どんな時だって前を向いていた。

 死球はプロ野球歴代5位の146個。患部が大きく腫れ上がった時もあった。骨折をした時もある。それでもファイティングポーズをとり続けた。その口調と表情からは本当に何事もなかったのではないかと錯覚をしてしまうほど、ケロッとした表情でグラウンドに立ち続けた。「全然、大丈夫」。それが口癖みたいなものだった。そこには逆境に負けてなるものかというプロ根性が凝縮されていた。

■背番号「6」が若い世代に伝えたいメッセージ

 そしてこれこそが多くのファンを魅了し続けた所以だ。どんな事態にも立ち上がり前に進み、ベストプレーを見せ続けるスーパーヒーローにこそ人は憧れ、勇気をもらう。それが分かっているからこそ指揮官となった今、自身がそうであったように強く勇ましく苦難を乗り越える力を持った選手作りを目指す。

「オレは疲労が溜まっているとか、痛いからと試合を休む選手を使う気はない。そんなのプロじゃない。どんな事があっても試合に出てやるという選手を作っていきたい。そういう選手は心の準備が違う。気持ちは大事。気持ちを見せて欲しい。そもそも一年間、100%の状態である選手なんていない。みんな痛みを抱えながら戦っている。それを乗り越えてプレーをするからファンは感動をする」

 2017年という一年がまもなく過ぎ去ろうとしている。周囲の想いが最下位に沈んだ屈辱感から、徐々に熱い期待感に変わりつつあることを肌で感じる。それは自分が井口イズムを誰よりも目の前で見てきたからかもしれない。練習中の待ち時間を極力なくし効率的に選手を動かした鴨川秋季キャンプ。そして機動力を駆使し3戦3勝で終えた台湾遠征。そのすべてに新鮮な出来事が凝縮されていた。若き指揮官はつい最近まで現役選手であることを長所とし選手とコミュニケーションを深め、個々の選手の課題、そして悩みを聞き出していった。どん底に沈むチームの状況も、今年一年、ベンチの中にいたからこそしっかりと把握し、改善点は見出している。来春の石垣島キャンプでは一、二軍の枠を完全撤廃。フラットな状態で選手たちに競争を促す方針を伝えた。

 だからこそなのだ。ワクワク感が止まらない。なによりも背番号「6」が若い世代に伝えたいメッセージを指揮官に立場を変え、今度はどのような形で伝えていくのだろうかという興味が湧く。なにかと辛い事も多い現代社会の日々の中で、苦難を乗り越えた先にある感動を井口マリーンズはきっと見せてくれる。だから、だからこそ新しいシーズンを楽しみにして欲しい。寒くて、すぐに陽が沈む冬に耐えて、桜が咲き誇る春を待ちわびて欲しい。井口マリーンズの船出(開幕戦)は3月30日。本拠地ZOZOマリンスタジアムでの東北楽天ゴールデンイーグルス戦だ。

梶原紀章(千葉ロッテマリーンズ広報)

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(梶原 紀章)

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