今年の「主役」は高橋一生か、竹内涼真か? テレビっ子会議2017【ドラマ編】

今年の「主役」は高橋一生か、竹内涼真か? テレビっ子会議2017【ドラマ編】

(c)榎本麻美/文藝春秋

数々の名作テレビドラマが生まれた2017年。生粋のテレビっ子4人に、それぞれのベストドラマと、ベスト番組5作について語り尽くしていただきました。今年を代表する「主演」と「作品」は? 

■まだ『逃げ恥』余波が続いている

岡室 テレビドラマは今年もいい作品がたくさんありましたね。坂元裕二さんの『カルテット』、宮藤官九郎さんの『監獄のお姫さま』、岡田惠和さんの『ひよっこ』、木皿泉さんの『富士ファミリー2017』といった名脚本家による作品、ビートたけしさんと山田孝之さんの『破獄』、昼ドラ『やすらぎの郷』『トットちゃん!』……。

スーパー・ササダンゴ・マシン(以下ササダン) さすが岡室さん、早稲田でテレビドラマ史の講義を持ってるだけありますね。

岡室 いえいえ、今年は本当にベスト作品を選ぶのが悩ましいですよ。WOWOWでは佐藤浩市と江口洋介W主演の『石つぶて』も豪華なキャストでよかったし……。

エスムラルダ(以下エスム) WOWOWでは中谷美紀・桐谷健太が出演した東野圭吾作品を原作にした『片想い』もよかった。

てれびのスキマ(以下スキマ) エスムラルダさんは脚本も書かれるので、自然とテレビドラマは熱心に見ているんじゃないですか?

エスム はい、かなりのドラマ好きです(笑)。今年はやっぱりTBS火曜夜10時がすごかったですね。1月から3月にかけての『カルテット』、10月から12月にかけての『監獄のお姫さま』。

スキマ 僕もこの2作は、とにかくよかったと思う。

岡室 私もそう思います。あの枠は去年の『逃げ恥』以来、何かと話題作を生みますね。

エスム 以前は、深キョンとおディーン様の出演していた……。

岡室 『ダメ恋』ね。『ダメな私に恋してください』。その次に『重版出来』があって『せいせいするほど、愛してる』があって、それからの『逃げ恥』『カルテット』。

ササダン 『逃げ恥』はこの大晦日とお正月に一挙放送だそうですね。星野源のオールナイトニッポンで知ったんですけど。

スキマ 1年経っているのに熱の冷めなさ具合がすごいですよね。聞いた話ですけど、今年のビルボード日本版のランキング「Billboard JAPAN Hot 100 of the Year 2017」だと昨年発売された「恋」が1位なんですって。だから、今年は『恋』以上のヒットが出てない。

■TBS日曜劇場は他人事じゃないんです

エスム ササダンゴさんはどの作品がよかったですか?

ササダン 『陸王』ですね。というのも、僕、実家が金型工場でして、本当はすぐにでも継がなきゃならないんですけど、こうしてプロレスやったり、タレントやったりしてるんですよ。まあ、工場の専務もやってはいるんですけど。

岡室 まあ、専務も!

ササダン なので『下町ロケット』の頃からTBS日曜劇場は他人事じゃないんです(笑)。

岡室 NHKで今年放送した『マチ工場のオンナ』も金型工場じゃありませんでした?

ササダン 愛知県の金型や冶金工具を作る会社ですね。『陸王』見てても思うんですけど、ドラマって普通は起承転結の構成ですよね。でも、町工場系のドラマって起承転結というよりはPDCAなんですよ。プラン・ドゥ・チェック・アクション。工場の品質管理の手法がそのままストーリーテリングになっているというか。

岡室 おもしろい!

ササダン だから話のゴールがライバル企業に勝つことではないんです。むしろ、勝つことは過程であって、自社のブランディングに成功し、企業を存続させることがゴール。企業生存率って言葉があるんですけど、この時代、会社を続けていくって本当に難しいんですよ。だからこそ、人はそこにカタルシスを求めているのかもしれませんけど。悪代官を懲らしめるのと同じくらい、ドラマチックなこととして。

スキマ 日本のドラマの一つの金型が、時代劇から町工場に移ったという感じ。

岡室 ササダンゴさんの論はTBSのホームページに載せたいくらいですね。

■高橋一生がよく脱がされてた1年

スキマ 『カルテット』については、僕も岡室さんもエスムラルダさんもイチオシという感じがするんですけど、とにかくここから高橋一生の2017年が始まりましたよね。もう、今年は高橋一生に頼りすぎってくらいに活躍してた1年。よく脱がされてたし(笑)。

岡室 『民衆の敵』ですね。あと大河の『直虎』。高橋一生が死ぬところで号泣しちゃいました。

エスム 私は『直虎』好きだったんですけど、みんなが知っている人物じゃないだけに視聴率的には苦戦気味でしたよね。でも、資料がない中で、よくここまでの物語を紡いだなあと、森下佳子さんの脚本のすごさに圧倒されました。森下さんはこれまで原作ものが多かっただけに、余計にそう感じました。

岡室 朝ドラの『ごちそうさん』はオリジナルでしたが、『JIN―仁』『わたしを離さないで』『天皇の料理番』……。

エスム 『白夜行』『世界の中心で、愛をさけぶ』もそうですね。

スキマ 今年の原作ものだと、僕は『アシガール』すごい好きでした。黒島結菜が主演ですけど、役者陣の健気さが伝わってきて。

エスム 愛おしいんですよね。原作ものって脚本家の力量が問われると思うんですが、『アシガール』はうまかった。原作漫画も読んでみたんですけど、原作を殺さない程度のプラスアルファがあって、ドラマとして完成させていた。脚本は宮村優子さんです。

■山田孝之に対して視聴者が「ボケ」たという出来事

スキマ 今年は高橋一生の他に、竹内涼真のブレイクもありましたよね。『ひよっこ』『過保護のカホコ』。

ササダン 『陸王』でも走ってます!

エスム 『過保護のカホコ』の竹内涼真くんのキャラ設定は、もう個人的にはすごいツボで、毎回キュンキュンしてました。

スキマ 同時期に出演していた『ひよっこ』の紳士的な青年とは真逆の、上から系のキャラクターでしたからね。

岡室 そうそう、あのギャップがよかった。

エスム 脚本は『家政婦のミタ』の遊川和彦さんでしたが、遊川さんのドラマって、割とオカマ的に心惹かれる男子キャラクターを出してくるんですよ(笑)。

スキマ あと個人的には山田孝之のことも触れておきたいんです。特に今年はテレ東系で『山田孝之のカンヌ映画祭』『破獄』『緊急生放送! 山田孝之の元気を送るテレビ』って、それぞれタイプの違う作品で存在感を発揮してたので。

エスム あ、私も『カンヌ映画祭』は今年のベストの一つですね。芦田愛菜、村上淳の「使い方」含めて、テレ東的な「何をやるんだ」というワクワク感がたまらなかった。

スキマ これまでの、テレ東深夜の山田孝之ドラマって『勇者ヨシヒコ』もそうですけど、ツッコミ不在で、視聴者がツッコミ役になるようなものが多かったんです。でも『元気を送るテレビ』は、初めて山田孝之に対して視聴者が「ボケ」として参加することになったんです。画面に向かって山田孝之が気を送ると、「シャワーの出がよくなりました」とかツイッターでみんな反応するという(笑)。

ササダン 「子どもが初めて寝返り打ちました」とか、SNSでボケ合うみたいな。

■「テレ東深夜」が他局の別時間帯に広がっていった

岡室 まさにそこに「テレ東深夜的なノリ」、送られてくる「気」じゃないですけど、届く人には届くんだという文化があると思うんです。その意味で、私が今年印象深かったドラマに『ハロー張りネズミ』があります。大根仁さんの脚本と演出でしたが、原作は弘兼憲史さんの漫画。この漫画もそうだったんですが、とにかく無節操というか、人情ものの要素、SFの要素、サスペンス、オカルトものと、毎週違うスタイルを遊ぶドラマになっていたので面白かった。思ったほど数字は取れなかったかもしれませんが、大根さんがテレ東で培ったものが全部投入されている感じがしました。録画視聴の時代とはいえ、これを金曜夜10時に放送したという意義も大きい。

スキマ 『サラリーマン佐江内氏』は日テレ系土曜9時でしたが、これもテレ東深夜枠的な匂いがするドラマでしたよね。

岡室 そう、「テレ東深夜」が他局の別時間帯に広がっていった感はあります。

スキマ 確かにここ数年、自由で実験的なドラマといえば「テレ東深夜」という感じだったと思いますが、今年はそれに新たな潮流が加わったきがします。Netflixと組んだ『100万円の女たち』とか、Huluで先行配信されたバカリズム原作・脚本・主演の『架空OL日記』とか、FOD(フジテレビオンデマンド)で先行配信された『ぼくは麻理のなか』とか。動画で先行配信した後に、地上波深夜でやるドラマで秀作が多かったと思います。

 あと毎日放送制作の『光のお父さん』は、すごく新しかったです。原作は『ファイナルファンタジー』をプレイしていることを書いたブログなんですけど、オンラインゲーム上で父と息子が正体明かさずに出会って交流するって話。プレイ中のゲーム画面でも演技をするみたいな世界で……。主演は大杉漣と千葉雄大。

岡室 一方で伝統的なNHK連続テレビ小説での『ひよっこ』や、テレ朝系が新しく設けた20分の「昼ドラ」枠での『やすらぎの郷』は大きな話題になりましたよね。特に朝ドラが若い人にウケているのは、15分という尺の短かさ。60分とか90分とか、テレビの前に座って集中できないって話はよく聞きますから。

■『カルテット』『監獄のお姫さま』「視聴熱がすごい」とはどういうことか?

エスム どれだけ集中・熱中してドラマを観ているかを表す指標として、最近「視聴熱」とか「視聴質」という言葉が使われていますよね。例えば『ドクターX』は『水戸黄門』的に適度にハラハラしながらも、全部先が読めるくらいの安心感がある。だから視聴率がいい。数字に余裕ができるから、小ネタを挟んだり、どんどん面白いことができる。一方で最初からマスをターゲットにしていない作りのドラマは、一部の熱狂的なファンをつけるけど、得てして数字はあまり取れない。『カルテット』や『監獄のお姫さま』がそうだと思うんですが。

ササダン なるほど、SNSの盛り上がりなどを評価軸にする視聴熱ですか。

エスム はい。『カルテット』とか、私もものすごいハマって観てましたけど、ネットのニュースなんかで視聴率を知ると「え? あんなにツイッターで盛り上がってるのに」って思うことしばしばでしたもん。

スキマ ちょっとした時系列の矛盾にファンが気づいて、『カルテット』なんだからこれには意味があるに違いないってSNSですごい議論がされて、TBSが公式にコメントを出すみたいなこともありましたけど、それほどファンを釘付けにするドラマでした。というか、「ながら見」ができない、坂元裕二流の緻密な構成のドラマでしたから、自然と視聴熱を生み出す作品だった。

岡室 逆に言うと、エスムラルダさんが言う通りマス向けじゃない、お客さんを選ぶドラマだったんですよね。『監獄のお姫さま』も過去と現在と時間が交錯するじゃないですか。だから、1話目で「難しい、付いていけない」って脱落した人、多かったみたいです。

エスム その分『監獄のお姫さま』も視聴熱が高かったと思います。クドカン流の小ネタのぶっ込み方にみんなくすぐられて、反応せざるを得ない(笑)。第9話の「原宿駅から徒歩35分」っていうくだりも、SNSでは「どこだ、どこだ」って感じでみんなざわついて。

■木皿泉、岡田恵和……「日常」を細やかに描く名作が続々と

岡室 『カルテット』をリアルタイムで観終わったら、すぐに感想をツイートしてたんです。そしたら、すぐに何百リツイートもされて驚いたんですけど、熱のある作品については、みんなすぐに感想を交わしたいんですよね。録画視聴が習慣化されている中で、SNSが視聴者をリアルタイム視聴に引き戻してるところはあるなって、実感しました。

スキマ 事前情報が何もなく、突然クドカンが『カルテット』に重要人物の役で出てきたときは「うわーっ」ってびっくりしました。

岡室 坂元裕二作品にクドカンですものね。この2人に加え『ひよっこ』の岡田惠和さん、『富士ファミリー2017』の木皿泉さんと、今年は「日常」を細やかに描くのが上手い脚本家がさらに名作を生んだ年だった気がします。

■『脱力タイムズ』が今年も続いているという奇跡

――それでは、それぞれの2017年テレビ番組ベスト5本を発表いただけますか?

スキマ 僕は『カルテット』『光のお父さん』『陸海空』『山田孝之の元気を送るテレビ』『脱力タイムズ』です。

ササダン おお〜。『脱力タイムズ』ですか?

スキマ この番組が今年も続いていることに敬意を表して(笑)。あれだけボケに徹し続ける番組が見続けられるのは、今の時代、奇跡的だし、あの形式だとそんなにパターンがなさそうなのに、ちゃんと毎回驚かせてくれるのもスゴいと思います。
あと、今年は有田哲平の年でもあったかなと思って。『有田ジェネレーション』『しゃべくり007』のほか、『わにとかげぎす』はドラマ初主演ながらすごくよかったし。どの番組も絡む相手の面白いところを、むちゃぶりから引っ張り出しているところが有田さんのすごいところです。

■『インパール』『人殺しの息子と呼ばれて』ドキュメンタリーの名作

岡室 私はドラマに偏っちゃうんですけど『カルテット』『監獄のお姫さま』『富士ファミリー2017』『ハロー張りネズミ』『ひよっこ』です。『僕たちがやりました』や『トットちゃん!』も捨てがたいけど。一言付け加えるなら、今年のNHKのドキュメンタリーは本当に名作揃いでした。『戦慄の記録 インパール』『731部隊の真実』『沖縄と核』。山田孝之が戦後直後をレポートする『東京ブラックホール』、ビートたけしが自らを振り返る『オイラの師匠と浅草』も秀作でした。

スキマ フジテレビの『ザ・ノンフィクション』も話題作揃いでした。特に「人殺しの息子と呼ばれて〜北九州連続監禁殺人事件〜」は今年のドキュメンタリーとして記憶しておきたいですね。あれほど見る前に気が重くなった番組もありませんでしたが、同時に見なければという思いも持たされました。

エスム 私もドラマに偏ってしまうんですが『カルテット』『監獄のお姫さま』『アシガール』『直虎』『山田孝之のカンヌ映画祭』です。

ササダン 僕は『陸王』『陸海空』と陸シリーズが続いて、『めちゃイケ』『ねほりんぱほりん』『水曜日のダウンタウン』。

■「サイレントマジョリティー」の声を可視化した『陸海空』

エスム コンプライアンス重視が叫ばれる世の中で、『水曜日のダウンタウン』が続いているというのは喜ばしいことなのかもしれない(笑)。

ササダン いや本当に、企業と同じでいかにリスク管理をするかが重要なんですよね。その意味で『陸海空』みたいにリアルタイムで視聴者のツイートを画面下に流す仕組みは無用な炎上を予防するセーフティネットの発明だと僕は思っていて。

岡室 どういうことですか?

ササダン いわゆる普通の反応が可視化されて画面に流れるわけですよね。動画の世界にあるような「wwwww」でも「面白いー」でも「キャーーーー」でも何でもいいんですけど、どうやら多くの人が面白がっているらしい、ということが画面から伝わってくる。よく、クレームは一部であって、大多数は許容していると言われますが、まさにその「サイレントマジョリティー」の声を可視化したのが、このシステムなのかなと思うんです。だから尖った番組ほどこれを採用すべきじゃないかと(笑)。

エスム 道具も使いようですね。

スキマ ササダンさん、さすがのプレゼンでした(笑)。

ササダン いえいえ、でもまあ、来年も『脱力タイムズ』や『水曜日のダウンタウン』が続くような、風通しのいい1年になるといいですね(笑)。

写真=榎本麻美/文藝春秋

エスムラルダ/1972年生まれ。ドラァグクイーン、コラムニスト、脚本家。著書に同性パートナーシップ証明、はじまりました。』(ポット出版/KIRA氏との共著)など。

岡室美奈子/1958年生まれ。早稲田大学文化構想学部教授。早大演劇博物館館長。専門はテレビ文化研究とベケットなどの現代演劇論。

スーパー・ササダンゴ・マシン/1977年生まれ。プロレスラー。マッスル坂井としても活躍。実業家として家業も営んでいる。

てれびのスキマ/ 1978年生まれ。ライター。著書に『1989年のテレビっ子』『笑福亭鶴瓶論』など。

INFORMATION

TBSオンデマンド
TBSの番組を、24時間365日、見たい時に自由に楽しむことができます。プレミアム見放題も提供中。

『カルテット』『陸王』『監獄のお姫さま』はこちらでもご覧いただけます!
https://tod.tbs.co.jp/

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(「文春オンライン」編集部)

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