映画「パラサイト」に登場していた反日教育の傷痕 韓国が「独島は我らが領土」替え歌で大盛り上がりする理由とは?

韓国映画『パラサイト』に"独島は我らが領土"替え歌 監督「日本の観客も歌うらしい」

記事まとめ

  • 韓国映画『パラサイト』には「独島は我らが領土」の替え歌が登場する
  • 文在寅大統領との昼食会でポン・ジュノ監督は「日本の観客も歌うらしいですね」と発言
  • 韓国でこの曲は、クセになるコミックソングとして、世代を超え広く知られている

映画「パラサイト」に登場していた反日教育の傷痕 韓国が「独島は我らが領土」替え歌で大盛り上がりする理由とは?

映画「パラサイト」に登場していた反日教育の傷痕 韓国が「独島は我らが領土」替え歌で大盛り上がりする理由とは?

半地下の一家の長女・ギジョン(パク・ソダム、左)と長男のギウ 『パラサイト 半地下の家族』より ©2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

 2月9日に開かれた第92回米アカデミー賞授賞式で、外国語映画としては史上初の作品賞など計4冠に輝いた韓国映画「パラサイト 半地下の家族」。ハリウッドの歴史を塗り替える快挙に、日本からも大きな賞賛の拍手が送られた。

 だがそれから不穏な話が広まり出すまで、さほど時間はかからなかった。韓国が竹島(韓国名:独島)の領有権を主張する有名な曲 ”独島は我らが領土” の替え歌が、劇中に登場することが知られ始めたのだ。

 特に日本でこの件を有名にしたのが、2月20日に韓国の大統領官邸で開かれた昼食会。ポン・ジュノ監督はじめ出演者や制作関係者らが官邸に招かれ、文在寅大統領と昼食をともにした時のことだ。

■ポン監督「日本の観客も歌うらしいですね」

 文大統領が記者団の前で「“ジェシカソング”(”独島は我らが領土” の替え歌)、あのメロディと歌詞は誰が決めたんですか?」とたずねたところ、それを歌った女優パク・ソダムが「監督が…」と返答。するとポン監督が「日本の観客もあれを歌うらしいですね」と発言し、会場は笑いに包まれた。

 こんなやり取りが日本側の不快感を招いたのも、無理のない話だろう。

 その2日後の2月22日は、島根県が条例で定めた「竹島の日」。現地式典では従来通り閣僚が出席しないことに不満の声が上がったが、韓国メディアは、また例によって「今年も次官級高官を出席させた」(「聯合ニュース」2020年2月22日)と日本政府を非難していた。

■韓国で語っていた“ジェシカジングル”の意図

 主人公一家の長女ギジョンは、ある事情から “ジェシカ” のプロフィールを暗記する必要に迫られる。そこでプロフィールを替え歌にして覚えるという設定で登場するのが、”独島は我らが領土” だ。

 使われているのはメロディ冒頭4小節分、ほんの6秒ほど。だが耳についてクセになるフレーズが海外の観客の間でもちょっとした話題となり、“ジェシカジングル” または “ジェシカソング” としてネットに広まった。

 アメリカのネットメディア「BuzzFeed」は、「この映画はいろんな意味で素晴らしい。だが最も素晴らしい部分の1つはギジョン=ジェシカ、とりわけ彼女が偽の素性を覚えるために歌う歌だ」(2019年11月9日)と伝えている。ポン監督が「日本の観客も〜」と発言したのは、そんな海外での人気をふまえたジョークだったわけだ。

 この替え歌について、韓国メディアではポン監督のこんなコメントが紹介されている。

「脚本を書く時からメロディに合わせて歌詞を作ったので、正式に版権の手続きをして使った。テンポや言葉などがよく合っていて、こんな曲はほかにないだろう」(「iMBC」2019年6月2日)

「何かを覚える時にメロディをつけたりするが、”独島は我らが領土” は最もそれにうってつけだと思う」(「亜洲経済」2020年2月12日)。
?

 耳に残って覚えやすいという“?独島は我らが領土” の評判は、そもそもの成り立ちに由来している。というのもこの曲は、クセになるコミックソングとして世に知られた経緯があるからだ。

■放送自粛になった過去も

?”独島は我らが領土” は大衆歌謡調のアップテンポで単調なメロディに、「独島」の所在地や面積などを歌詞として並べた曲。もともとは、80年代初頭あたりにお笑い番組でコメディアンが歌ったのが最初だ。それが1982年6月発売の企画物オムニバスアルバムに収録されたのを機に、大学生らの間で広まった。

 当時は強圧的な軍事独裁政権下で世相が鬱屈する一方、発売翌月には日本の「歴史教科書問題」が大きな批判を招いた時期だ。そんななかで大学生たちは ”独島は我らが領土” を歌って反日感情を発散し、鬱積した不満を晴らしたのだろう。

 もっともこの頃はまだ「低俗な異色歌謡」として扱われ、日韓首脳の相互訪問が初めて実現した1983〜84年には、放送が自粛されたことさえある。

?”独島は我らが領土” は80年代後半から話題にならなくなったが、再び注目されたのが1996年。排他的経済水域(EEZ)を巡る竹島の扱いが取りざたされ、韓国国内では政府とメディア挙げての一大「独島守護」キャンペーンが始まった時期にあたる。学校で子供に歌わせるようになったのも、この年からだ。

 以来この歌は「独島」のテーマソングとして定着し、世代を超えて広く知られるようになった。

 したがって1996年生まれのギジョンが ”独島は我らが領土” の替え歌を暗記に使うという設定は、いまの韓国の世相を描写する上でごく自然な選択ともいえる。

■カニカマからスノーピークまで

「パラサイト」には、ほかにも日本が絡んだ場面がいくつかある。

 豪邸で飼われている3匹の愛玩犬のうち、”ププ” の主食は日本製のカニかまぼこだ。イヌのエサに人間用の輸入食材を買い与えるのは、富裕層に対する分かりやすいカリカチュアだろう。

 日本のアウトドアブランド「スノーピーク」のTシャツや屋外用コンロのパッケージも登場する。IT社長が日本製高級ブランドの愛好家というのも、いかにもそれらしい演出だ。一方で、コンロとつながりが深いグリル用の焼き網がキーアイテムとされる点も見逃せない。

 また豪邸の庭で一人息子ダソンの誕生日パーティを開く際、母親ヨンギョは “鶴翼の陣” の形にテーブルを並べさせる。“鶴翼の陣” とは1592年の文禄の役に際して起こった閑山島海戦で、朝鮮水軍が秀吉軍の船団を撃破した陣形だそうだ。

?“鶴翼の陣” は物語の重要な舞台となる。その背後に何か意図が読み取れるかどうかは、劇場に足を運んで自分の目で確かめるしかないだろう。

(高月 靖/週刊文春デジタル)

関連記事(外部サイト)