前回と同じ原作なのに! 今度はアクション映画だ――春日太一の木曜邦画劇場

前回と同じ原作なのに! 今度はアクション映画だ――春日太一の木曜邦画劇場

1961年作品(86分)/KADOKAWA/2800円(税抜)/VHSレンタルあり

 映画を評価する際の基準に「原作通りかどうか」を重視する人がいる。原作と異なる展開や設定を加えたり、新たな解釈を加えることはまかりならん――という感じだ。

 筆者は、そういう接し方にはあまり感心しない。

 というのも、原作と映画は別物であり、映画にとって大事なのは「面白いかどうか」その一点のみだと考えるからだ。極端に言えば、原作もまた映画の素材の一部。それをどう料理するかは、映画の作り手次第なのである。そして面白いのは、同じ素材を使っても作り手の調理法によって全く異なる料理になるということ。その違いを味わうのも、映画の楽しみの一つといえる。

 たとえば、ここのところ取り上げてきた長谷川伸。主演・中村錦之助、監督・加藤泰のコンビによる一連の抒情的で泣かせる人間ドラマが、原作の精神に準じた最もオーソドックスな調理法である。

 が、実はそれだけではない。作り手が変わることで、全く違う味つけがされたりもする。

 それが今回取り上げる『沓掛時次郎』。大映の作品で、池広一夫監督が撮り、市川雷蔵が時次郎を演じている。

  前回 取り上げた『沓掛時次郎 遊侠一匹』と同じ長谷川伸の原作を映画化した作品だ。『遊侠一匹』は、義理と人情の狭間で葛藤する男女の恋心をしっとりと描いた、詩情あふれる作品である。

 が、本作はそうではない。本作でも途中、橋幸夫の主題歌をバックに人情芝居も挟まるが、男女の接点はさほど掘り下げられておらず、錦之助版のような葛藤のドラマを期待すると肩透かしを食らう。

 池広監督は本作を西部劇タッチで描こうとしたという。つまり、加藤泰のしっとりした抒情ドラマの対極にある、乾いた空気感で繰り広げられるスタイリッシュなアクション作品ということだ。同じ原作でそこまで全く異なるアプローチができるものかと思うかもしれないが――できている。しかも、これはこれでかなり面白い仕上がりなのだ。

 序盤から一騎打ちに大乱闘、激しいアクションがテンポよく繰り広げられ、勢いよくスピーディな出だし。時次郎は追っ手に狙われる身にアレンジされており、それによるサスペンスも盛り上がる。

 終盤の展開が凄い。敵との決闘は二段構え。集団対集団の後、時次郎は一人で敵中へ。最初は静かな緊張感の中を時次郎が一人ずつ倒していく。そして、最後は燃え盛る炎の中、大量の馬まで出てくる壮絶かつスケールの大きい闘い。ド迫力である。颯爽とした雷蔵もヒロイックでかっこいい。

 ぜひ『遊侠一匹』と続けてご覧いただき、あまりの違いを楽しんでほしい。

(春日 太一/週刊文春 2020年2月27日号)

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