家入レオ、“超ヘヴィにフワフワ”が昨今の流行りなのか――近田春夫の考えるヒット

家入レオ、“超ヘヴィにフワフワ”が昨今の流行りなのか――近田春夫の考えるヒット

絵=安斎肇

『未完成』(家入レオ)/『母?』(氷川きよし)

 おかげさまで、こうして毎週毎週新譜を聴いて何かを考えるということをやっていれば、それなりに見えてくる/気付くことも、なくはない。

 ユーモラスだったり、あるいは景気のつくようなといった傾向は、年を追うごとにどんどん影をひそめ、今や売れ筋は、真面目/重め系が中心か? 今週の二曲の味わいも、そういった意味では――まさに歌は世に連れだ――時代を反映したものといえるだろう。

 先ずは家入レオの新曲だが、歌詞が本人と岡嶋かな多の共作で、作曲に久保田真悟。TVドラマの主題歌とのことだ。

 動画を観ていると、歌いっぷりも深刻な、いわゆる“思い詰めた表情”のオンパレード……。そうそう! 家入レオってこういう感じだったよなぁと、久しぶりのご尊顔拝見に、時の流れの速さを感じてしまったりした次第だ。

 ま、歌詞内容やサウンドの傾向などは、あくまでも「クライアントはTV局」というヒエラルキー構造のゆえ、オーダーに応えた部分のなきにしもあらずではあろう。それにしてもダウンロードの売り上げが、一月末には首位だったというのだから、彼女の存在を必要とする層は、いまだ根強く健在なのに違いない。

 聴いていると、この歌の主人公たち(僕と君)はどうやら非常に切羽詰まっているようだ。ただ歌詞から伝わってくるのは、ただただその大変なのが膨大な量なものであるらしいということのみで、そこに至るまでの経緯などについての情報/詳細は、我々聴き手には窺うことが出来ない。

 とは申せ、大変さの原因が、別れるも地獄、別れぬのもまた地獄! 的なことだろうなとは、俺にも推察は出来る。いい回しを変えながらも繰り返されるのが、二人に重くのしかかる現実を示す心理描写ばかりだからだ。だが理由は結局最後まで不明などころか、時として歌詞が本当に意味不明だったりする。あ、案外そこにストーリーの大切なカギが隠されていたりして……?

 ♪ 救えないなら 生まないで

 って、ひょっとして間違って妊娠しちゃって、それが問題になってるっていう設定? 何度か読み返し、とりあえずそう斟酌いたした私だが、仮にそうだとしてもよ、たとえば締めくくりの、

 ♪ もう 自由だよ

 などなど、展開が唐突過ぎて話の流れについていけず、どのような景色を脳裏に浮かべれば良いのか困ってしまう場面も多く、歌の世界に何とか感情移入したくとも、主人公たちの具体的関係性がイマイチ掴めぬのは、ちと辛い。

 jpopの歌詞については、よく“フワフワした感じ”と評するのを目にするが、これは“超ヘヴィにフワフワ”とでもいうんでしょうかねぇ? 検索すれば出てくると思うので、暇だったら是非! 歌詞チェックをしてみてくだされ。

 氷川きよし。

 ケレン味の全くない歌唱に、改めて力量は感じるものの、このままシリアス路線一本槍でいくのだけは、やめてよね。

ちかだはるお/1951年東京都生まれ。ミュージシャン。現在、バンド「活躍中」や、DJのOMBとのユニット「LUNASUN」で活動中。近著に『考えるヒット テーマはジャニーズ』(スモール出版)。近作にソロアルバム『超冗談だから』、ベストアルバム『近田春夫ベスト〜世界で一番いけない男』(ともにビクター)がある。

(近田 春夫/週刊文春 2020年2月27日号)

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