安室ベスト盤に曲提供のTK その出来栄えに興味津々だ――近田春夫の考えるヒット

安室ベスト盤に曲提供のTK その出来栄えに興味津々だ――近田春夫の考えるヒット

Finally/安室奈美恵(AVEX) 92年のデビューから現在にいたるオールタイムベストアルバム。「ミスターU.S.A.」や「愛してマスカット」といった SUPER MONKEY'S 時代から、ソロになり小室哲哉プロデュース時代の「Body Feels EXIT」「Chase the Chance」「You’re my sunshine」、そして最近の楽曲までを網羅。小室が16年ぶりに楽曲提供(「How do you feel now?」)したことも話題に。2017年11月に発売1週目で100万枚を突破。ビルボードジャパン「2017年イヤーエンド・チャート」で年間1位。 

『Finally』(安室奈美恵)

 安室奈美恵の最初の思い出といえば、まだソロになる前の話だ。スーパーモンキーズという、そのグループ名もよく知らなかった女の子たちの中で、彼女の顔だけがやたらと覚えやすかったのだ。具体的にいえば、眉毛にとても特徴があった。

 その時彼女たちがどんな歌を歌っていたのか、そのあたりの記憶はさだかではない。ただ、たしか脇の下の制汗用スプレーか何か、そのようなものの宣伝広告でよく画面に登場していたと思う。今から振り返れば、随分彼女も若かったのだろうなぁという感じであるが、そのCFで安室奈美恵は、表情にしろ既に立派にプロの風格を有していた。

 その次はというと『ポンキッキーズ』だろうか。鈴木蘭々と二人で着ぐるみで番組に出ていた(そういえば鈴木蘭々はどうしているのか?)。

 この着ぐるみ姿が実によく似合っていた。なんだか本当に“動物の子”のようで、とにかく可愛かった。この時もついつい俺の眼は眉毛に“いき勝ち”であったが(笑)。

 その後ぐらいに、何故か急に彼女の顔かたちが自分のなかでは朧ろなものになってゆく。それはきっと彼女が大人の女っぽく変身していったこととも無関係ではないと思う。眉も随分普通なライン? になっちゃってったしなぁ……。

 世間でいうところの安室奈美恵とは、きっとこのあたりからのキャリアを指す筈だ。

 今更書くことでもないが、安室奈美恵にとって、小室哲哉との出会いというものの大きかったことは否定できまい。

 ここには物凄い量の楽曲が収められている訳だが、実際、こうしてまとめて聴いてみると、やはり耳に残る作品といえば、小室哲哉とタッグを組んでいた時期のものが圧倒的だ、それも歌詞。なんともコトバが強く残る。

 世紀末から新世紀にかかる――いい換えるなら、内側で既にバブルは崩壊したものの表層はまだまだ華やかという――あの時代の世相/光景が歌を聴く毎に蘇って来るのだ。

 そうした意味においてこのアルバムの目玉といえば……。

 実は、発売前からTKが作品提供とのニュースを耳にしていたのだが、最近の傾向として、きっと曲提供だけで、作詞は他に任せるものだと思っていた。それがこのM49。 なんと詞曲ともTKのクレジットではないか! 安室奈美恵に小室哲哉。両者ともに天国と地獄を見てきた“ビッグな女と男”といって差し支えあるまい。今、修羅場をくぐり抜けようとしているTKが、どのようなコトバを彼女に送るのか、俺じゃなくても、興味津々だろう。

 とか思ったんですが、案外無難というか、結構当たり障りのない歌詞内容だったのには、いささか拍子抜けの感なきにしも非ずだったっすね。

 残念ついでをもうひとつ。個人的な感想だが、平井堅との共作『グロテスク』が収録から漏れていた。二人の表現者としてのやり取りが聞こえてくるようなあの作品を、今一度ここで聴きたかったのだ。

(近田 春夫)

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