M-1優勝したのに……ミルクボーイに聞く「東京進出しません」宣言の理由とは?

ミルクボーイ、『M-1グランプリ』優勝も「東京には進出しません」宣言の理由語る

記事まとめ

  • ミルクボーイは、『M-1グランプリ』で決勝初進出で初優勝し、M-1の“神回”を演出した
  • 歴代の優勝者が軒並み東京で活躍するなか、「大阪に残留する」と宣言した理由を聞いた
  • 内海崇は「漫才しかやりたいことがない」「別にお金が欲しいとかもない」と語った

M-1優勝したのに……ミルクボーイに聞く「東京進出しません」宣言の理由とは?

M-1優勝したのに……ミルクボーイに聞く「東京進出しません」宣言の理由とは?

2019年M-1王者ミルクボーイの駒場孝さん(左、ボケ担当)と内海崇さん(ツッコミ担当)

ミルクボーイが明かす「M-1前に『コーンフレーク』が『モナカ』より強くなった」 から続く

 決勝初進出で初優勝、M-1の“神回”を演出したミルクボーイ。彼らは史上最高「681点」を叩き出した本番中にどんなことを感じていたのだろうか。

 そして歴代のチャンピオンが軒並み東京で活躍するなか、「大阪に残留する」ことを早々と宣言。「売れる気がないと思われるで」という周囲のアドバイスのなか、今回の決断に至った理由とは――?(全3回の3回目/ #1 、 #2 へ)

◆◆◆

■五角形のところで「あ、行けるな」

――決勝1本目の「コーンフレーク」は、最初から、けっこうお客さんをつかんでましたよね。

内海 ネタに集中していたので、笑い声はそこまで聞こえてなかったと思います。あっ、行けるなと思ったのは(パッケージに印刷された栄養バランスの)五角形がでかいというところですね。それに対する僕の「あれは自分の得意な項目だけで勝負しているからやとにらんでんのよ」というツッコミがわかるかどうか。そこがこのネタの勝負の分かれ目なんですけど、けっこう(お客さんが)かかってる感じがあったんで。

――あそこから、どんどん内海さんのツッコミが変になっていきますもんね。

内海 そうなんです。あそこで引かれたら、そっから全部はまらない。でも、かかってくれたら、そこからどんどんウケてく仕組みになってるんです。

――『M-1 アナザーストーリー』を観たら、審査員の松本人志さんは、内海さんが「コーンフレークは生産者さんの顔が浮かばへんのよ」と言ったとき、意外なフレーズに驚いてるような、感動してるような珍しい顔をしていて、「やべえ」ってつぶやいてましたね。

駒場 あれ、うれしかったですね。

内海 あと、松本さんの「くそー、おもろいな」という言葉も拾ってくれてましたね。

■なぜミルクボーイは「笑い待ち」をしないのか

――お2人は、いわゆる「笑い待ち」をしませんよね。笑いが収まってない段階で、どんどんどんどん先に進んでいく。

内海 笑い待ちすると、笑い待ちまでしてこれから言葉を発しますよ、という雰囲気になる。そうすると、その言葉自体のハードルが上がってしまうんです。

――なるほど。そこは自分たちのペースを守っていきたい、と。

内海 もっとおもろいこと、これからたくさん言いますから静まってくださいよ、みたいな感じです。

――「コーンフレーク」のネタ時間は4分1秒。他の組がだいたいオーバーしている中、ほぼ制限時間(4分)通りでした。

駒場 へ〜。それは知らなかったです。

――やはり4分ぴったりで収まるよう練習しているのですか。

駒場 いや、練習では、もうちょっと長かったんです。

内海 暗黙の了解事項として、決勝は5分くらいまでなら延びても大丈夫だと言われていたので。やっぱり緊張で早なったんやと思います。

■帰って見直したら「ぜんぜん100点じゃなかった」

――得点発表のときは1人目のオール巨人さんがいきなり「97」を出して、次の塙さんが「99」で続いた。2人の点を見ただけで、もう普通じゃない点になりそうな雰囲気がありました。

駒場 信じられへんという感じですね。

内海 僕も、信じられへんしかなかった。99ですよ! びっくりしましたね。僕、1回戦からずっと「700点満点目指します!」って口では言うてたんですけど、実際にそれに近い点数が出るとは……。

――700点は到達しなかったものの、681点。過去、どのコンビよりも700点に近づきました。

内海 あと19点ですもんね。でも今となると1つくらい100点欲しかったな。ただ、家帰ってネタを見直したら、ぜんぜん100点じゃなかったですね。

駒場 下手でしたね。想像では、もうちょっとうまくできてると思ってたんですけど。なんか、ぎこちなかった。

――7番目の登場で首位に立ち、残りは3組ですから、ほぼ最終決戦進出が決まった状態といっていい。2本目はもちろん「最中」で行くつもりだったんですよね。

内海 そうなんですけど、その日、「最中」は一度もネタ合わせをしていなかったので、そこから慌ててやり始めました。

■最終決戦「1番目で」って言いそうになった

――最終決戦のネタ順は、上位通過者から選べるというシステムでした。当然、後ろの方が有利なので、司会の今田耕司さんが「3番目ですか?」と2人に聞いたとき、駒場さんは「はい」と即答したのに対し、内海さんがちょっと悩むような素振りを見せました。

内海 いや、なんか、1番でもおもしろいかなと思って。1位通過の人は、必ず3番を選ぶじゃないですか。でも、ほんま、最後の3組に残れただけで十分やったんで、3番で本気で優勝をねらいに行くみたいのが気持ち悪くて。思わず「1番で」って言いそうになったんですけど、まあまあ、冷静に考えて3番でいいかなと。

駒場 1番で行ったら、また違う結果になってたかもしれないですね。お客さんも、わざわざ1番で出て来て何を見せてくれるの、みたいな空気になったと思うし。

内海 あいつら尖っとるな、みたいな印象になるしな。

――最終決戦は1番手のぺこぱ、2番手のかまいたちともに、すごくウケていました。待ってる間、嫌じゃなかったですか。

内海 いや、正直、まったく見てなかったです。セット裏の奥の方でネタ合わせをしてたんで。

駒場 僕ら、時間さえあればネタ合わせをしてたいんで。

■「1本目のセリ上がりで一度死んで、違う人生を生きてるんかな」

――2本目の出来は、どうでしたか?

内海 あんま覚えてないな。

駒場 俺もそうやな。

内海 ただ、終わった瞬間、やり終えたという感じだったので、裏で「十分、十分」と言ってました。どこが優勝してもいい、と。十分、すばらしい大会だったな、と。

駒場 3位でも堂々と大阪に帰れると思ってたよな。

――最後の結果発表のとき、オール巨人さん、ナイツ塙さん、立川志らくさんと、3人続けてミルクボーイの名前を上げました。4人目、サンドウィッチマンの富澤(たけし)さんもミルクボーイを選んだ瞬間、優勝が決まりました。

内海 実感なかったですね。4票目、エーッ! ていう。

駒場 あれっ? って。

内海 1本目のネタのとき、セリ上がりのところで実は一度死んでいて、今、違う人の人生を生きてるんかな、みたいな。

駒場 何が何だかわからなくて、涙も出てこんかった。人間、びっくりし過ぎると、なんのリアクションも取れなくなるんですね。

■「東京には進出しません」の真意とは?

――M-1優勝をきっかけに東京に進出するかどうか悩んでいたそうですが、結局、大阪に残留すると宣言されました。その気持ちは、今のところは……ということなんですか。

内海 いや、もう行かないです。先輩にも「今のタイミングで東京に行かなかったら、売れる気がないと思われるで」って言われたんですけど、僕らは漫才しかやりたいことがなかったんで。漫才するのにどっちがええかと考えたら、大阪にはNGKなどの大きな劇場もありますし、こっちにおった方がええやろうと。

――収入を考えたら、東京の方がぜんぜんいいと聞きますが。

内海 別にお金が欲しいとかもないんですよ。

駒場 優勝賞金で、今まで渡せんかった後輩の結婚祝いやら出産祝いを渡せたら、それでひとまずはええな、と。

内海 僕たち、変ですか?

【初回】史上最高M-1王者「なぜミルクボーイはずっと無名だったの?」本人たちに直撃 へ

写真=山元茂樹/文藝春秋

ミルクボーイ/駒場孝(ボケ担当)と内海崇(ツッコミ担当)のコンビ。駒場は1986年2月5日大阪府出身、内海は1985年12月9日兵庫県出身。大阪芸術大学落語研究会で出会う。

 大学在学中の2006年に仮コンビとして「大学生M-1グランプリ」に出場し、優勝。同年、M-1グランプリにもアマチュアとして初出場し、2回戦進出。2007年7月にbaseよしもとのオーディションを受けるにあたって正式にコンビ結成。2010年、16年、17年、18年とM-1準々決勝進出。19年初の決勝で優勝を果たす。

(中村 計)

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