広島・田中広輔の図太さがチームを導いている

広島・田中広輔の図太さがチームを導いている

©文藝春秋

 少し前になってしまうが、2017年度のセ・リーグのベストナインに田中広輔が選ばれた。前年までのことを考えると驚きだ。

 カープファンとしては「すげー! よかったなコースケ」と伝えたい。驚きと書いたのは、一昨年までの田中はいいショートではなかったから、というわけじゃない。セ・リーグのショートには巨人の坂本勇人がいるからだ。坂本は高卒3年目で打率3割に到達しベストナインに輝いた「特別な選手」だ。一昨年の坂本は首位打者と最高出塁率に輝いている。

■田中広輔は坂本勇人よりいいショートか?

 田中はあの坂本と競ってベストナインになったのだ。昨年の坂本はシーズン最後の方でやや打撃成績を落とした。シーズン前のWBCからスタメンで出場を続けたことの影響があったかもしれない。WBCでは控えだった田中はキャリアハイの成績だった。昨年の二人の打撃成績は、かなり拮抗した数字になった。ベストナインに田中が選ばれたのは、盗塁王(35個)と最高出塁率(.398)に輝いたことと、チームが優勝したことが大きかったと思う。

 ただこれは「2017年の」ベストナインだ。持てる実力ではリーグナンバーワンのショートは坂本、という意見が多いと思う。田中の昨年の打率はリーグ11位の.290。3割じゃないんだよなー、とちょっと思ってしまう。特別な打者と思われるには、どうにも3割以上が欲しいところなのだ。エラーはリーグワーストの16。ゴールデングラブ賞を受賞した坂本のような、プロの中でも特別な守備能力の持ち主ってわけではない。

 でも、ここ2年の田中のプレーを観てきて気づいたことがある。田中こそが今のカープに重要なスピリッツを植えつけている。これはベストナインに選ばれなかったとしても大切なことだったと思う。田中にはミスを恐れないガッツというか図太さがあるのだ。この図太さが、特別な能力の持ち主の揃うプロ野球選手のなかで、田中がポジションを築いたポイントだ。

■田中はエリートアマ野球の出身

 田中がドラフトされるまで所属したのは、東海大相模高−東海大学−JR東日本と、いずれもアマチュア野球界の有名チームだ。有名チームで野球をやっていたから、周りには特別な才能の持ち主がいた。巨人・菅野智之、ロッテ・伊志嶺翔大、オリックス・吉田一将と同じチームだった。3人ともドラフト1位で入団している。

 田中はドラフト3位だった。ドラフトのとき「3位まで残っていたので指名した。もっと上位で指名されると思っていた」というオーナーのコメントがあった。カープのオーナーは野球通を自任してるだけに面倒なこともありそうだが、たまにヒットがある。この指名はホームランになった。

■田中の盗塁刺の数の意味

 高校から社会人まで有名チームで野球をやってきたからか、田中のプレーは「やるべきことが叩き込まれている」という感じだ。塁にでればリードをとりピッチャーの集中を少しでも奪う。田中は2年連続で「もっとも牽制球を投げさせた選手」だと、NHK-BSの『球辞苑』で紹介されていた。

 田中のプレーで走塁は重要なポイントだ。一昨年、田中はリーグ2位の28盗塁だったが19盗塁刺で、盗塁成功率60%はいいとは言えない数字だった。セイバー系の分析では盗塁成功率は70%くらいはないと「攻撃の効率を悪くする」とされてしまう。それでも田中はミスにも下を向かず、目を見開いて平然とチャレンジを続けた。昨年はシーズン最初の3回の盗塁を失敗して、4月終わるまでは4盗塁に4盗塁刺だった。それでも田中には塁に出れば仕掛け続ける図太さがある。昨年のシーズンの終わりには35盗塁、13盗塁刺の盗塁成功率73%までもっていった。安全な選択をしていては、田中はここまでの選手になれなかったに違いない。そして、この図太さこそが、ほかの誰でもない田中がチームにもたらす大切なものだ。

 昨シーズン外野守備・走塁コーチだった河田コーチは、このスピリッツを推進していた。チャレンジしてのミスならOKだ。鈴木誠也はミスを恐れずチャレンジできる。変な言い訳かもしれないが、ミスしても田中は平然としているのだ。

 どうかカープファンは、このことに気づいてほしい。田中のミスを賞賛してほしい、というわけじゃない。3連覇を狙う今年のチームで怖いのは、ミスが増えることよりミスを恐れるようになることだ、と思うのだ。ゲームで選手がミスしたときは「こらっ。次は頼む!」でいいのだ。「これで流れが向こうに……」なんて心配はしない方が楽しめるんじゃないか。気に病んだところでゲームは次に進んでる。ゲームの流れを読むのは解説者にまかせて、ゲーム後にプロ野球ニュースでも観ながら反省すればいい、と思う。そうすれば二度楽しめる。だから田中が一塁にでたら、この合言葉でいこう。

「走れ! コースケ」

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(suga)

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