アメリカに野球マンガはない? ベースボール大国の気になるコミック事情

アメリカに野球マンガはない? ベースボール大国の気になるコミック事情

©ツクイヨシヒサ

 野球マンガ、お好きですか? というわけで、野球マンガのコラムです。

 映画館へ足を運ぶと、よくアメコミ映画が公開されています。昨年は『ワンダーウーマン』やら『ジャスティス・リーグ』などが盛り上がり、2018年も『アベンジャーズ:インフィニティ・ウォー』や『X-MEN:ダーク・フェニックス』といった、話題作が目白押し。

 なぜ、アメリカからやって来るコミックの主人公たちは、ヒーローばっかりなのか? ほかのジャンルはどうなっているのか合衆国!?

 ベースボールの聖地であり、コミック産業の大国でもあるアメリカならば、野球マンガも日本以上に需要がありそうなもの。だが、大谷翔平が渡米しても、野球マンガが来日する気配はない。いったい、アメリカの野球マンガ事情はどうなっているのか? 常々、気になっていた疑問を直撃してみた。

■アメリカで野球マンガが流行らない理由

 話をうかがったのは、東京・秋葉原にあるアメコミ専門店「bLiSTER COMICS」の大須賀和志さん。店内を見渡せば、所狭しとアメコミが棚に並ぶ。が現在、同店に野球マンガの在庫は皆無だという。

「古いタイトルを検索すると、過去に野球マンガも存在していたようなのですが、当店にはほぼ入荷したことがありませんね。来店するお客様のなかには、外国人の方も多くいらっしゃいますが、やはり野球マンガを注文されることはありません」

 アメリカで野球マンガが流行らない背景には、いくつか理由が考えられるという。

 まず、アメコミでは「善悪がはっきりしているジャンル」が好まれる。具体的には、ヒーローやファンタジー、ホラーやゾンビ、宇宙やSF関連など。健全なスポーツである野球は、詰まるところ「どっちが勝ってもいいじゃない」ぐらいの感覚が働くのかもしれない。

「スポーツを観戦する層と、コミックを購読する層が一致していない」という可能性についても、大須賀さんは指摘する。老若男女が様々なマンガに親しむ日本と違い、アメリカではスポーツファンとコミックファンがほとんど被らないのではないか、という推論だ。

 ジャンルとして成立していないがゆえに、クリエイターが育たないという側面もある。普段、我々は当たり前のように眺めているが、野球マンガのフォームやプレイ、テンポといったものは非常に独特だ。それらはもちろん、多くの先達が試行錯誤を積み重ねてきた結果である。アメコミ界が、一気に追いつくのは確かに難しいだろう。

■英訳版が人気の国内スポーツマンガとは

 ちなみに、アメリカでは野球だけでなく、バスケットボール、アイスホッケー、アメリカンフットボールといった、いわゆる「四大スポーツ」のコミックもあまり見かけないそうだ。例えば、『BLOOD BALL』という作品は、アメリカンフットボールをモチーフにしているものの、内容はファンタジー要素を多分に盛り込んだものになっているという。

 代わりに、最近注目されているスポーツマンガが「FENCE」。なんとフェンシングを取り上げたコミックであり、一部のファンから人気を集めているらしい。また、アメリカのプロレス団体「WWE」を描いた作品もある。実在の選手も登場しているとか。剣技であったり格闘技であったり、バトル要素が入ったほうが、アメコミ的にはウケがいいようだ。

 一方で気になるのが、英訳版における日本のスポーツマンガ人気である。翻訳された和製作品のなかで、扱いが大きいのは『週刊少年ジャンプ』で連載中の『ハイキュー』だとか。バレーボールを題材にした高校生たちの青春ストーリーだ。同じく『ジャンプ』系のバスケットボールマンガ『黒子のバスケ』も目に付くとのこと。どちらも少年マンガながら、女性人気が高いことで知られており、同様のファンが英語圏にも少なくないことが予想される。

 では、日本の野球マンガはどうなのかと調べてもらったところ、「あだち充」先生の名前を発見。『H2』や『クロスゲーム』の英訳版が手に入ることがわかった。日本の高校野球事情や、甲子園などに対して、外国人がどういう感想を持つのかはぜひ聞いてみたいところだ。

 かように、全体には厳しい印象のアメリカにおける野球マンガ事情。しかし、状況が変わる可能性は十分にあると大須賀さんは語る。

「もしアメリカで、すでに有名な作家の先生が野球を題材に描いたら、一気に広まることもあると思いますね。あと個人的には、『巨人の星』のアメリカンスタイルみたいなものをつくったら、意外とウケるかもしれないかなと。巨人の設定をニューヨーク・ヤンキースに置き換えてみる、とか。ただし、絵柄的にはアメコミに馴染まない雰囲気なので、その辺りには工夫が必要です」

 ベースボールとコミックを愛するアメリカにも、決してマネできない野球マンガ大国・日本。世界にもっと、野球マンガの魅力を知ってもらいたいものである。

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(ツクイヨシヒサ)

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