「長崎は大嫌いだった、就活も嫌だった」ゲス極・川谷絵音が小1の頃からやっていたこと

「長崎は大嫌いだった、就活も嫌だった」ゲス極・川谷絵音が小1の頃からやっていたこと

©Takuya Sugiyama

 “岡村ちゃん”こと岡村靖幸さんが「幸福とは?」を探究する「週刊文春WOMAN」の人気連載「幸福への道」。今回のゲストは、岡村ちゃんとは気が置けない仲の川谷絵音さん。「あの騒動」から4年。川谷さんの「幸福への道」とは。まずは対談前に、週刊文春編集部で下の写真を撮影した2人??。

◆ ◆ ◆

川谷 もう、「週刊文春」は売上げの何パーかを僕に払ってほしいですよ、ホントに(笑)。

岡村 あはははは(笑)。

川谷 すんごい貢献したもん。

岡村 絵音君とはプライベートでわりと仲良しで。出会ってからの期間も結構長いです。

川谷 知り合ったのは、2014年とかその辺でしたよね。もともと、うち(ゲスの極み乙女。)のドラムのほな・いこかが岡村ちゃんの大ファンで。彼女が仲良くなったのが最初。いまでは僕のほうが全然会うようになりました。

岡村 さて、絵音君について意外と知らないことがいろいろあって。僕は対談前にいろんな資料を読むんだけど、絵音君ってとてもエリートなんですね。国立の大学に進学して大学院まで行って。

川谷 エリートではないですけどね、東京農工大学というところに行ってました。

岡村 勉強がめちゃめちゃできる。

川谷 親が教師なんで。高校の。だから家で勉強しなくちゃいけなかったんです。しかも、自分の部屋でやるとサボるから、親の目の前で、リビングルームで勉強しなくちゃいけなかったんですよ。

岡村 うわー! 何の先生?

川谷 世界史です。僕は理系なんですけど、世界史だけは高得点を取らないといけなくて。同じ高校ではなかったんですけどね。

岡村 理系って地頭が良くないといけない感じがする。

■勉強は好きだった 長崎は大嫌いだった

川谷 勉強は嫌いじゃないんです。子供の頃から勉強は好きで。常に勉強だけはやってましたね。勤勉なほうだったと思います。

岡村 なぜ、農工大へ?

川谷 東京の大学へ行ければなんでも良かった。高校がイヤすぎて。中高と全然いい思い出がないんです。お腹が弱くて、すぐ壊しちゃうんで、授業に出るのもイヤだったし。昔から、特に目立つ子供でもなく、ねじ曲がってたんです。ものすごく負けず嫌いだし。でも、コイツらよりもオレは勉強ができるっていう自負はあるのに、勉強ができるよりも腰パンしてるヤツのほうがエラいみたいな(笑)、中高生の頃ってそういうのがあるじゃないですか。

 中学で長崎市に転校したんですけど、めっちゃ田舎だし、学校は不良が多くてめちゃくちゃ荒れてたし。だから早く抜け出したかった。東京へ行こうと。私立はお金がかかるから国立、東京の国立で理系と考えて、農工大にした、ただそれだけ。何がやりたくてというのはないんです。

岡村 結構、転校してたんだ。

川谷 親が教師だから長崎県内で異動するんです。生まれは松浦市、その後に佐世保市、そして長崎市。

岡村 長崎という風土は、自分に影響を与えたと思いますか?

川谷 いやあ……。田舎ってわりとどこもそうなんじゃないかと思うけど、他人の成功をあんまり良く思わない人が多いというか。

岡村 妬まれますか?

川谷 妬みはいちばん多いかも。

岡村 僕、全然関係ないのに長崎県人会に行ったじゃないですか。

川谷 へえ、そうですか。

岡村 ……って、あなたに誘われて行ったんですよ(笑)。

川谷 ああ、そうだそうだ(笑)。

岡村 僕、長崎には縁がないのに絵音君に誘われ、長崎県人の集いに参加して。ああ、絵音君は長崎出身を誇りにしてるんだなって。

川谷 あれは、東京で頑張ってる長崎の人たちの会なんです。東京で出会ってるんで、あんまり長崎という感じもしないし。僕は、もう地元には帰りたくないんです。

岡村 そうですか。

川谷 長崎というより、育った環境が合わなかったんですかね。

岡村 で、なぜ大学院へ?

■スーツを着るという時点でイヤ

川谷 大学3年のときに就活しようと思ったんですが、まったくやる気が起きなくて。スーツを着るという時点でイヤだったんです。人と同じことをするのもイヤだったし。とにかく、モラトリアム期間を長くしようと思って、大学院へ行くことにして。たまたま推薦が取れたんで、そのまま。

岡村 やっぱ、めちゃめちゃ頭がいいなあ。どんな研究を?

川谷 セラミックの研究を4年生の頃からしてたんです。酸化ジルコニウムを燃料電池に使うという。普通は温度が高くないと作動しないんですが、僕は温度を下げる研究をずっとやってたんです。

岡村 当時、音楽活動も並行してやってたんですよね??

川谷 そうです。大学で軽音部に入って、3年生の頃からミクシィで募った人とバンドをやるようになって。で、4年生でインディゴ ラ エンドを結成して。研究室に行きながらやってました。それもあったからモラトリアム期が欲しかったというのもあるんです。

■小1の頃から6年間、毎週やっていたこと

岡村 音楽との出会いというのはどういうものでしたか?

川谷 長崎の五島列島に祖父がいて、「源ちゃん一座」っていう劇団をやってるんです。五島では結構有名で、歌や踊りや芝居や漫談のある劇団で。僕が3歳か4歳のとき、みんなの前でよく歌わされたんです。「川の流れのように」とか「一円玉の旅ガラス」とか。すると、結構歌が上手かったらしく、「音楽家になりなよ」と言われたのが最初ですね。

岡村 へえ〜。じゃあ、意識的に音楽を聴くようになったのは?

川谷 小学生の頃からですね。

岡村 どんな音楽が好きでした?

川谷 7つ上の兄と6つ上の姉がいるんですが、基本は兄ちゃん姉ちゃんが家で聴いてたやつです。T.M.Revolutionとか、久保田利伸さんとか。あとは、父が井上陽水さんが好きだったんで、「心もよう」がいつも流れてて。

岡村 音楽があふれてる家だったんだ。お祖父さんの劇団も含め。

川谷 そうですね。とにかく、小1の頃からずっと、J-POPの1位から10位までの曲を、TSUTAYAで毎週借りてたんです。だからJ-POPにはめちゃくちゃ詳しかった。毎週欠かさず、それを6年間ずっと続けてたんで。

岡村 絵音君が作るものって、ポップでメロディアスで、人の心をギュッとつかむ音楽だなと思うんですが、子供の頃にヒットチャートを追いかけていたことが元にあるわけだ。当時はどんなベストテン・ソングを聴いてたんですか??

川谷 モー娘。が全盛期でしたね。バンド系だと、ミスチル(Mr.Children)、スピッツとか。あとはDo As Infinity、ゆず、ELT……。そのあたりが毎週ベスト10に入っていた、そういう時代だったと思います。

■実は会の主催が大得意

岡村 さっきの長崎県人会もそうだけど、僕は絵音君主催の会に何度か呼ばれたことがあって。ミュージシャンだけでなく、お笑いの人やクリエイターや、ヒップな人たちがたくさん集まる会で。絵音君って大集合が得意ですよね。

川谷 大集合(笑)。確かに、会を催すとどんどん人は増えます。

岡村 不思議なのは、絵音君は会の首謀者であるにもかかわらず、冷めた感じというか、所在ない感じでいることなんですよ。

川谷 あはははは(笑)。

岡村 しかも、僕は絵音君に呼ばれて行ったのに、「あれ? なんで来たんですか?」って。

川谷 「なんで来たんですか?」までは言ってないですよ(笑)。でも、確かに、岡村さんがせっかくいらっしゃっても二言ぐらいしかしゃべらなかったかも(笑)。

岡村 放置されました(笑)。この人とこの人を引き合わせたらどうなるかの実験でもしてるの?

川谷 いやいや(笑)。連絡先を交換して、「今度飲みましょう」みたいなことを社交辞令で言う人、多いじゃないですか。僕は、ちゃんとそういう場をセッティングするし、いちいち呼ぶんです。するとちゃんと来てくれるんですよ、みんな。ああ、来てくれた、うれしいなって。僕はそれで満足しちゃう。「ああ、いい光景だな」と思いながらみんなの様子を遠くから眺めていたいんです(笑)。

■あの騒動の反動で人と会いたくなったんです

岡村 子供の頃からそういうタイプだったんですか?

川谷 小2ぐらいまではすんごくうるさい子供でした。でも、小3で暗くなりました。

岡村 なぜ?

川谷 自分に気づいちゃったんです。俯瞰で自分を見るようになって。なんか気づく瞬間があったんですよね。そこからヘンな自我が芽ばえるようになって。テンション上げて騒いだりするのは恥ずかしいと思うようになって。

岡村 じゃあ、クラスの中心人物ではなかったんだ。クラスの子を集めてお楽しみ会を催すとか。

川谷 まったくないです。こういうことをやるようになったのはつい最近、2017年からなんですよ。それまで僕、お酒自体あんまり飲んでなかったし。要は、16年にいろいろあって、人と会わないようになって。会わないの度が過ぎるぐらい誰とも会わなかったんで。5ヵ月6ヵ月、家に閉じこもっていたから、その反動なんでしょうね。とにかく、人と会いたい、話したいことがいっぱいある。人と話をする場が欲しかったんです。

text: Izumi Karashima
photographs: Takuya Sugiyama
hair&make-up: Harumi Masuda (Okamura)

続きは、 「週刊文春WOMAN 2020春号」 でお読みください。

おかむらやすゆき/1965年兵庫県生まれ。音楽家。86年デビュー。4年ぶりのアルバム 『操』 が4月1日に発売。ジャケットは前作『幸福』に続き、会田誠の描き下ろし。SPRINGツアーも開催予定(※詳細については 公式HP をご確認ください)。

かわたにえのん/1988年長崎県生まれ。2014年インディゴ ラ エンドとゲスの極み乙女。の2バンドで同時メジャーデビュー。今春、ゲスの極み乙女。のアルバム『ストリーミング、CD、レコード』が 全曲配信中 。6月17日には“賞味期限付きアルバム”( CDサイズのバームクーヘン )も発売に。

(「週刊文春WOMAN」編集部/週刊文春WOMAN 2020春号)

関連記事(外部サイト)