最後の青波戦士、最後のPL戦士……なぜか我々は“最後の◯◯”に惹かれてしまう

最後の青波戦士、最後のPL戦士……なぜか我々は“最後の◯◯”に惹かれてしまう

©文藝春秋

 まぁ聞いて欲しい。我々日本人は何故か「最後の◯◯」という響きが大好きな人種のようだ。例えば「最後の新撰組・斎藤一」とか「最後の赤穂浪士・寺坂吉右衛門」とか。あるいは「最後の2サイクル市販車・RMX250S」とか「最後の寝台特急・サンライズ瀬戸・出雲」とか「トキワ荘最後の住人・山内ジョージ」とか。何ならそれが「最後の本ニガリを使用した・普通の豆腐」だろうと、とにかく「最後の◯◯」の響きが大好きで、それが例え何であれ「最後の◯◯」の響きでつい白米をおかわり(≠中村剛也)してしまうのが我々日本人なのだ。

 やや乱暴だが特にこのコラムの読者は、更にその傾向が強いような気がしている。いや、絶対そうだ。きっと淡口憲治さんの事を「最後のV9戦士」と呼んでいたはず。淡口さんは「猛牛戦士」でもあったのに、旧近鉄バファローズのファンだって「最後のV9戦士」と呼んでいたはずだ。やはり我々日本人にとって「最後の◯◯」より上位に来る形容詞など存在しないのだろう。

■「最後の青波戦士」と「最後の猛牛戦士」

 断っておくがこのコラム。あくまで文春オンライン上でオリックス・バファローズを応援する趣旨。余りに「ひつこい※方言です」と読者に嫌われて、これが「最後の俺のコラム」になってしまうかもしれない……。ならばそうならないよう、野球コラムらしくオリックス・バファローズに関連する「最後の◯◯」に話を移すとしよう。そうしよう。

 そうなると誰もが真っ先に思いつくのはあまりに偉大なレジェンドで、昨年東京ドームでの引退試合も記憶に新しいイチロー選手ではないだろうか。彼こそは紛れもなく「最後の青波戦士」と言えるだろう。それに「最後の青波戦士」がイチローならきっとブルーウェーブファンは本望も本望、鼻高々な思いなのではないだろうか。今コラムを読んでいるオリックスファンのあなた。そうあなた、すぐに鏡を見てみよう。きっとあなたの鼻がブランドン・ディクソンのようにそそり立っているはずだから。

 ではでは旧近鉄の流れを汲む「最後の猛牛戦士」はどうか。こちらは幸いにも未だ3選手が現役選手として戦っている。読売ジャイアンツの岩隈久志投手、それに東京ヤクルトスワローズの坂口智隆選手と近藤一樹投手がそうである。何の縁なのかこの3選手、今では東京の、しかも同一リーグでプレーしているのも何やら興味深い。3選手とも少しでも長く現役生活を続けて貰いたいものだ。大阪の牛が関東の野球ファンの食卓に並んでいるのだ。その上質な味わいで、是非関東の方々の肥えた舌を満たして欲しい。

■「最後のPL戦士」と「最後のダイエー戦士」

 では現行のオリックス・バファローズに「最後の◯◯」は存在しないのか。否。実は2名の「最後の◯◯」が活躍しているのをご存知だろうか。「最後のPL戦士」中川圭太選手と「最後のダイエー戦士」山崎勝己選手である。

 昨シーズン華々しくデビューした「最後のPL戦士」中川は、そのまま交流戦で首位打者を獲得、一気にその名を全国区にまで押し上げた。規定打席にこそ僅かに届かなかったが、打率.288、安打105は正にチームの主力を担う打者へと成長したと言えるだろう。開幕が延期になっていなければ今頃は首位打者争いを演じていたはずである。プロ野球が開幕した暁には、是非注目して欲しい選手の一人である。

 また「最後のダイエー戦士」山崎も未だ健在と言える。半ば2軍を中心に若手選手を育てる事にその役割をシフトしているとは言え、若月健矢選手を始めとしたチームの捕手陣にとっては、常勝軍団ダイエーで培った彼の経験そのものが、貴重で偉大なチーム共有の財産となっている事だろう。まぁ、山崎選手の場合は赤間謙選手が移籍した今となっては「最後の愛すべきパ顔」も兼ねていると言えなくもないが。こちらも要注目の選手である。

 そして最後は「このコラム最後の『最後の◯◯』」で締めくくろう。確か井上陽水の「最後のニュース」が発表されたのは1989年だった。当時を思い返せばパ・リーグは戦国時代、いや本当に楽しいシーズンだった。仰木彬監督率いる近鉄バファローズが前年の悔しさを見事に晴らしリーグ優勝、2位のオリクックス・ブレーブスもオリックス元年をブルーサンダー打線と共に暴れまわった年だった。

 あれから31年。今年は皮肉にも、刻々と色々な物が日々様変わりする年となってしまった。全ての物事が大きく右往左往するのを見るに、誰もが皆、複雑な感情を抱いている事だろう。願わくば、望まない形での「最後の◯◯」の響きが訪れないよう、我々も様々な思いを胸に、少しずつでも希望と未来を向いて歩を進めたい。

◆ ◆ ◆

※「文春野球コラム Cリーグ2020」実施中。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイト https://bunshun.jp/articles/37635 でHITボタンを押してください。

(DOMI)

関連記事(外部サイト)