“強制わいせつ事件”も起きていた【テラスハウスの闇】 木村花さんを追い詰めた「過剰演出」と「悪魔の契約書」

『テラスハウス』出演の木村花さん死亡 過去に"猥褻"で示談、"賠償求めない"契約も

記事まとめ

  • 『テラスハウス』に出演していた木村花さんが、23日未明、22歳の若さでこの世を去った
  • 2014年12月には同番組で出演男性が、女性メンバーの寝込みを襲う"強制わいせつ事件"も
  • 「制作側に賠償を求めない」という「番組側は責任を負わない」旨の悪魔の契約書も

“強制わいせつ事件”も起きていた【テラスハウスの闇】 木村花さんを追い詰めた「過剰演出」と「悪魔の契約書」

“強制わいせつ事件”も起きていた【テラスハウスの闇】 木村花さんを追い詰めた「過剰演出」と「悪魔の契約書」

亡くなった木村花さん(「テラスハウス」番組HPより)

「新型コロナの影響で『テラスハウス』の収録が中止となったことが、彼女をより孤立させました。1人自宅で過ごす中で誹謗中傷の要因となった“コスチューム事件”の回が配信されてしまった。プロレス興行も延期となってしまい、憎悪むきだしのSNSの言葉に、日に日に追い詰められていったんだと思います」(番組関係者)

■玄関ドアには「有毒ガス発生中」の貼り紙

 女子プロレスラーの木村花さんが22歳の若さでこの世を去った。23日未明、東京・江東区にある自宅マンションの部屋で心肺停止の状態で発見され、搬送先の病院で死亡が確認された。警視庁は自殺とみて調べている。

「娘の異変に気付いた母親が自宅に駆けつけると、玄関ドアには『有毒ガス発生中』と書かれた紙が貼られていた。木村さんはポリ袋をかぶった状態でベッドに倒れていて、近くには硫化水素を発生させたと思われる薬剤の容器も見つかりました」(社会部記者)

 女子プロレス団体「スターダム」に所属していた木村さんは、ヒール(悪役レスラー)ならではの“ビッグマウス”が持ち味の人気レスラーだった。「プロレスを皆に知ってほしい」という思いから、Netflixで全世界に配信されフジテレビでも放送されている恋愛リアリティー番組「テラスハウス」に、2019年9月から出演していた。

 “台本なし”が売り物の「テラスハウス」は、見知らぬ男女6人が一つ屋根の下で共同生活を送り、その中で生まれる恋愛や青春のリアルを映し出す、人気のリアリティー・ショーだ。だが、その番組制作の過程に問題はなかったのだろうか??。

〈テラスハウスは、見ず知らずの男女6人が共同生活する様子をただただ記録したものです。用意したのはステキなお家とステキな車だけです。台本は一切ございません〉

 こんなナレーションから毎回スタートする通称“テラハ”は、2012年10月にスタート。視聴率低迷に喘いでいたフジテレビにあって、中高生を中心に熱狂的な支持を集め、23時台にもかかわらず、最高視聴率9.1%を記録。番組YouTube公式チャンネルのトータル再生回数は3億回を超えた大ヒット作品となった。

 だが、これまでも同番組はその制作手法や“過剰演出”がたびたび問題視されてきた。

「週刊文春」(2014年6月5日号)では、同番組のディレクターらによる出演者へのセクハラやパワハラ、やらせ強要をスクープ。同年9月で番組はいったん終了した。

■A氏は撮影現場のベッドに入り込み、キスと関係を迫った

 だが、2015年2月に劇場映画版「テラスハウス クロージング・ドア」が公開。同年9月から動画配信サイト「Netflix」で新シーズンがスタートした。

 そんな中で“強制わいせつ事件”が起きた。「週刊文春デジタル」(18年10月26日配信)では、出演男性A氏が撮影期間中に、撮影現場のハウスで女性メンバーB子さんの寝込みを襲う“強制わいせつ事件”を起こし、示談していたことを報じている。

「2014年12月、被害者のB子さんは1人で女子部屋で寝ていましたが、そこにA氏が侵入。B子さんのベッドに入り込み、キスを迫ったのです。キスの後で男女の関係を求めてきたA氏に対し、B子さんはA氏の頭を抱え、なだめることでその場を収めました。この日の夜は収録がなかったのですが、たまたま、シェアハウスにA氏とB子さんの男女1人ずつしかいないという状況になってしまったのです」(前出・番組関係者)

 当時、A氏本人に事実確認を求めると「お話しできません」と答えたが、強姦や準強姦ではないと主張。B子さんは電話取材に対して示談書の存在を認めた上で、「示談の時に、口外しないというのを条件で弁護士さんを通してしまったのでお話しできません」と答えた。

 フジテレビの企業広報室は当時、「撮影時以外の出演者の行動に関しては、お答えする立場にございません」と回答している。このフジテレビの回答に、制作側のスタンスがよく表れている。取材班は当時からテラスハウスをはじめとするリアリティー番組の危うさを指摘していた。

■各国で起きるリアリティー番組出演者の自殺

「米国では2004年から2016年のあいだにリアリティー番組の出演者20人以上が自殺したと報じられています。イギリスや韓国も同様の事態が起こっているそうです。いまや日本でもリアリティー番組は全盛と言えますが、メンタル面も含めた出演者のケアなどの対策を制作サイドが実施しているなんていう話は聞いたことがありません。

 日本の撮影現場でも、多くの出演者が自分の描かれ方に作為的なものを感じ、世間に誤解されることについて深く傷ついているのは事実なのです」(制作会社関係者)

 木村さんが亡くなったのは、3月31日配信の第38話が原因だと言われている。プロレスで使用する木村さんのコスチュームを男性共演者が洗濯機にかけて縮ませてしまい、男性に木村さんが激怒するという「コスチューム事件」に番組のファンが反応。木村さんのSNSには誹謗中傷が殺到した。

 当該のエピソードが配信されてから1カ月半以上が経っても批判を浴び続け、木村さんは母親に相談するほど悩んでいたという。

■「もう一度やって」撮り直しは日常茶飯事

「花さんは真面目で、プロレスでも与えられたヒール役を一生懸命こなしていた。そのリング上での激しいキャラクターのイメージを踏襲して、番組でも木村さんが感情的になるシーンを選んで使っているように感じました」(前出・番組関係者)

 番組での木村さんの激しいキャラクターは演出によるものではなかったのか。実際の撮影現場に立ち会い、スタッフによる“過剰演出”を目撃したという芸能プロ関係者が打ち明ける。

「たしかに台本はありませんでしたが、告白やデートに発展するという局面では、スタッフが出演者に『どうしたいの?』『どういう方向にしたい?』と“振り付け”をしていました。ケンカや恋愛相談など、メンバー同士の話でわかりにくいところは、『もう一度やって』と指示して、撮り直しは日常茶飯事でした。

 マネジャー抜きでメンバー全員がスタッフに集められていたこともあった。そこで全体的な流れや方向性を説明されていたことを後から演者に聞いて知りました。全体的な流れはスタッフが誘導していました。

 初期の頃は撮影で使われているテラスハウスの横の別棟でスタッフ3、4人が常駐して編集などをしていたのですが、例の“強制わいせつ事件”報道後は、同様のアクシデントが起こらないように、スタッフ4、5人が同じ建物に泊まり込んで、出演者とスタッフ合わせて10人での共同生活となっていました」

 制作陣に「不信感があった」という元出演者女性もいる。知人女性が代弁する。

■一方的に罵倒しているように編集されて……

「番組内でほかの共演者と口論になったときに、自分が相手に悪口を言っているところだけが使われて、一方的に罵倒している感じに編集されたそうです。出演者はテラスハウス内に設けられているプレイルーム(メンバー同士で放送内容を見る場所)で初めて編集された内容を知るのですが、その子も放送される番組を見て唖然として言葉も出なかったと言っていました。彼女も精神的にやられて、かなり落ち込んでいました」

 熱心なファンであればあるほど、放送内容への反応は熱い。そしてその反応はすべて出演者にダイレクトにぶつけられる。今回問題となったSNSの誹謗中傷に対して、フジテレビや制作現場は、適切に対応していたのだろうか。別の芸能プロ関係者が打ち明ける。

「番組の出演者で誹謗中傷が来ない人はいないと思います。事務所のマネジャーと密にコミュニケーションが取れている人は、『誰でも書かれるから気にしないで。嫌ならSNSを止めてもいい』とフォローされていました。正直、番組側はトラブルが起きても『自分たちでなんとかして下さい』という無責任なスタンスで、誹謗中傷から守ってはくれません。

■「番組は責任を負わない」悪魔の契約書

 そもそも、オーディションに受かって番組出演が決定すると、過去には『収録中に起きた事故などは番組は責任を負わない』『番組内でのことは口外しない』といった内容の契約書にサインさせられることがありました。『悪魔の契約書』ですよ。花さんにはフジテレビ側からなんの補償もない可能性もある。むしろ番組が打ち切りとなったら、花さん側にクレームを入れる関係者も出てくるんじゃないかと危惧しています」

■フジテレビとイーストが回答「制作側に賠償を求めない旨などの記載はございます」

 番組を制作するフジテレビとイースト・エンタテイメントに、契約書の存在や演出の適正、誹謗中傷への対応などについて、事実確認を求めたところ、次のような回答があった。

《『テラスハウス』に台本はありません。撮影の都合で、場所や時間などについて出演者と事前に協議したり、意思をヒアリングしたりすることはございますが、出演者の意思や感情に沿わない演出をして撮影することはございません。また、出演者との同意内容には、出演者の責により損害が発生した場合は、制作側に賠償を求めない旨などの記載はございますが、ご指摘のような文章はございません。なお、新型コロナウイルスの影響を受けて、3月下旬から撮影は中止しております。今はご遺族のお気持ちもございますので、これ以上のコメントは差し控えさせていただきます》(フジテレビジョン企業広報室)

《出演者との同意内容では、出演者の責により損害が発生した場合は制作側に賠償を求めない旨などの記載はございますが、ご指摘のような文はございません。『テラスハウス』に台本はありません。撮影の都合で、場所や時間などについて出演者と事前に協議したり、意思をヒアリングすることはございますが、出演者の意思や感情に沿わないような演出をして撮影することはございません。『テラスハウスTOKYO2019-2020』において、同じ建物内に常駐スタッフはおり、木村花さんをはじめ番組にご出演いただく方々とスタッフの間では日々近況を共有するようにしておりましたが、コロナ感染拡大防止のため3月下旬に出演者を含む撮影の停止以降も、必要に応じて近況の共有は行っておりました。今はご遺族のお気持ちもございますので、これ以上のコメントは差し控えさせていただきます》(イースト・エンタテイメント)

 木村さんの急死を受けて5月26日、高市早苗総務相は「発信者の特定を容易にするための方策を検討する予定」「どのような手段であれ、匿名で他人を誹謗中傷する行為は人として卑怯で許しがたい」などとコメント。制度改正も含めて対応する考えを明らかにした。

 当事者である番組制作サイドの対応にも注目が集まる。

(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))

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