【「鬼滅の刃」アニメ会社脱税告発】カフェでグッズ販売の売上も銀行入金せず「社長が現金保管」

「鬼滅の刃」アニメ版を手掛ける制作会社が脱税 東京国税局が同社と近藤光社長を告発

記事まとめ

  • 「鬼滅の刃」のアニメ版を手掛ける制作会社「ユーフォーテーブル」が所得を隠し、脱税
  • 東京国税局が同社と近藤光社長を法人税法違反と消費税法違反の疑いで東京地検に告発も
  • ユーフォーテーブルの代表作と言えば、ゲームの世界をアニメ化した『Fate』シリーズ

【「鬼滅の刃」アニメ会社脱税告発】カフェでグッズ販売の売上も銀行入金せず「社長が現金保管」

【「鬼滅の刃」アニメ会社脱税告発】カフェでグッズ販売の売上も銀行入金せず「社長が現金保管」

「Fate」コラボレーションカフェの告知(公式HPより)

 人気マンガ「鬼滅(きめつ)の刃」のアニメ版を手掛ける制作会社「ユーフォーテーブル」が、運営する飲食店の売り上げを少なく見せかけるなどして4億4000万円あまりの所得を隠し、計約1億4000万円を脱税したとして、東京国税局が同社と近藤光社長(50)を法人税法違反と消費税法違反の疑いで東京地検に告発していたことが明らかとなった。

 同社は6月3日、ツイッターなどで、《ファンの皆さまをはじめ、関係者にご心配、ご迷惑をおかけすることについて誠に申し訳なく、心よりお詫び申し上げます。なお、国税当局の指導に従って、(中略)修正申告を行い、全額納税いたしました》とコメントを出した。

「週刊文春デジタル」では2019年3月から4月、同社の脱税疑惑について報じ、脱税の手口が詳らかにした。当該記事3本を再公開する。(初出2019年3月28日、4月12日)

◆◆◆

■制作会社「ユーフォーテーブル」に“ガサ入れ調査”

「税務調査はその日の午前10時頃に突然入りました。高円寺の社屋1階にあるカフェと徳島のカフェ、そしてアニメ制作を行っている下井草の東京スタジオにも国税の捜査員が入った。捜査員の数は高円寺が一番多く、最終的に30人になったそうです。カフェには開店待ちのお客さんが並んでいたため、状況は説明せずに営業を続行したそうです」(ユーフォーテーブル関係者)

 アニメ制作会社「ユーフォーテーブル有限会社(以下、ユーフォーテーブル)」に脱税疑惑が持ち上がり、3月12日、東京国税局による家宅捜索、いわゆる“ガサ入れ調査”が行われた。同社ではテレビや劇場版アニメの制作だけでなく、関連アニメグッズの販売も手掛ける「ufotable Cafe」を東京や大阪などで複数運営している。

 同社は、アニメ制作プロデューサーの近藤光氏(代表取締役社長)が2000年に立ち上げたアニメ制作会社だ。昨年末の紅白出場でも話題になった「刀剣乱舞」のアニメ作品制作を2016年から手掛け、ゲームからスタートした同作品の世界観を上手く表現しているとファンの高評価を集めた。自衛隊が“萌え系”を採用したとして有名になったアニメタッチの自衛官募集ポスター制作なども手掛けている。

 アニメ業界関係者が説明する。

「ユーフォーテーブルの代表作と言えば、やはりゲームの世界をアニメ化した『Fate』シリーズでしょう。劇場版『Fate』シリーズでは、2017年に公開された第1章が観客動員数で98万人を超え、興行収入は15億円を達成。現在、公開中の第2章は前作を超え、観客動員数100万人を突破する大ヒットになっています。

■業界きっての「売れっ子プロデューサー」の商才

 社長の近藤さんは監督や演出も出来る人で、業界でも売れっ子のプロデューサーです。商売上手な一面もある。アニメーションでは、クオリティを追求すると、制作予算をオーバーすることもよくあるのですが、近藤さんはカフェを開いたり、グッズを作ったり、関連商売の展開が上手い。自分と一緒に仕事をすればいくら儲かるか、どれくらい大きなプロジェクトになるかといったプレゼンに長けています」

 2009年、近藤氏は自身の出身地でもある徳島県から補助を受けて、徳島市内にある登録有形文化財に指定されているビルのワンフロアに制作スタジオを設置。同年、徳島市の阿波踊りのアニメポスター制作を提案したことをきっかけに、アニメを使った徳島市の町おこしイベント「マチ★アソビ」を展開。毎年2回、春と秋にイベントを開催しているが、昨年はそれぞれ来場者7万〜8万人を動員している。

「現在、徳島県は同事業に年間7000万円もの負担金を出しています。2012年3月にオープンした『ufotable CINEMA』という映画館は、徳島市が整備費として1500万円の補助金を出した。いわゆる“アニメツーリズム”で、徳島と近藤さんは切っても切れない関係になっています」(同前)

「ufotable Cafe」や「マチ★アソビCAFE」などの飲食店は全部で9店舗。オリジナルグッズを求めて、アニメファンが行列を成すという。

「今年の亥年缶バッジは1つ400円ですが、購入するまで中のデザインがわからないクジ引き方式。同社が手掛けるアニメキャラクター36種類がランダムに入っていて、ネットでは高値が付くものもあります。カフェでは限定ドリンクを頼むともらえるコースターなども人気です」(同前)

■カフェの従業員は「最低賃金で交通費もなし」

 2011年に近藤氏の肝煎りで新宿三丁目にオープンした「ufotable DINING」は、500〜700円のドリンクを1杯注文するごとにグッズが当たるクジ引きが出来るのがウリだ。6万円のドンペリを入れれば、50回そのクジを引くことが出来るという。

「これはそもそも景品表示法に違反しないのかと、スタッフの中でも疑問視する声が上がっていました。摘発されたら終わりですから。でも、ワンマン経営者である近藤さんにたてつける人なんて誰もいない。働く環境がいいとはとても言えません。

 カフェで働くアルバイトたちは、作品のファンで働いている人がほとんどで、時給は少し前までは最低賃金で交通費もなし。給料日に現金手渡しでした。一昨年の秋までは社員の給料も現金手渡し。『日雇いのアニメーターもいるから、現金のやり取りの方がいいの!』と経理を一手に任されている近藤さんの奥さんに突っぱねられていた。

 今思うと、きちんとした給料明細もなく、振込み記録も残らない。給料処理もきちんとなされていたのかと不安です」(前出・ユーフォーテーブル関係者)

■在庫や発注数を誰も正確に把握していない“どんぶり勘定”

 ガサ入れの当日、ある国税の捜査員はカフェの金庫の中身を見て、「こんなにあるんだ!」と仰天していたという。金庫にはたくさんの札束が入っていた。

「徳島で年2回行われるイベント『マチ★アソビ』でのグッズや飲食の会計は、現金のみ。その売り上げはまとめて封筒に入れ、徳島のカフェの金庫に入れるそうです。昨年担当者がその金庫を開けると、数年間の売り上げの封筒が開かれた様子もなく、そのまま放置。合計は1000万円を超えていたそうです。

 カフェで販売されているグッズについては、在庫や発注数を誰も正確に把握していないという“どんぶり勘定”なのです。在庫が減ってきたら追加発注する。どれだけ売れて、どれだけ儲かっているのかは誰も知らない」(同前)

 だが、単に杜撰な管理だったというわけではないようだ。いくつかの店舗では、売り上げた現金を会社の銀行口座に入金するのではなく、金庫がいっぱいになったら社長に電話をし、社長自らが運転する車で現金の束を取りに来ていたという。

「各店舗ではレジで売り上げ金額を把握していたのですが、今年1月に入ってから、突然レジで売り上げ金額が見られないようになったそうです。近藤社長がロックをかけてしまったのです。社長は『情報漏えいが怖いから』と説明していました」(同前)

■ユーフォーテーブルに事実確認を求めると……

 それから数週間後の1月29日に国税が「任意調査」という名目で高円寺の店舗にやって来た。

「カフェとグッズの売り上げがそれぞれオープンしてからこれまでの期間で25億円以上とみられています。イベントでの売り上げもあわせれば30億円はくだらない。しかもこれはあくまで副収入。プラスして、メイン事業であるアニメ制作の収入が入るわけです。実は、経理は社長の奥さんが1人で担当していました。彼女は税理士や会計士の免許を持っておらず、かなり目茶苦茶な税金対策をやっていたのでしょう」(同前)

 元国税調査官の松嶋洋税理士が解説する。

「グッズの在庫数を把握していないとか、売り上げの現金がそのまま長期間放置して記録されていないなんて会計処理は杜撰としかいいようがありませんが、この売上規模で社長が現金回収して回るなんて、普通は聞かない。現金は記録に残りづらいため、所得隠しの意図があったように思える。

 仮に売り上げが30億円で、半分の15億円の所得を隠していた場合、追徴課税は加算税や延滞税、そして消費税なども含めると同額超になる可能性もあるでしょう。今後1年くらいかけて調査が続けられると思いますが、起訴、逮捕の可能性も十分に考えられます」

 東京国税局に取材を申し込んだが、「個別の案件には答えられません」と回答。だが、関係者によれば、近藤氏は当局に対して容疑を認めているという。ユーフォーテーブルに事実確認を求めると、「近藤の意向が会社の意向ですので、社長に直接聞いて下さい」と答え、近藤氏にも電話と手紙で取材を申し込んだが、返答はなかった。

(「週刊文春デジタル」編集部/週刊文春デジタル)

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