成田三樹夫の放つ迫力が渡、原田、梶をも圧倒!――春日太一の木曜邦画劇場

成田三樹夫の放つ迫力が渡、原田、梶をも圧倒!――春日太一の木曜邦画劇場

1970年作品(86分)/日活/3200円(税別)

  前回 に引き続き、成田三樹夫の魅力を語りたい。

『影狩り』もそうだったが、この一九七〇年前後の成田三樹夫ほどクールでニヒルな役柄の似合う俳優は、古今東西の世界中を見回しても、そうはいないのではなかろうか。

 鋭い眼差し、彫りの深い面相、青白い顔色、ビシッと決まった佇まい――どこをとっても知的で怜悧、それでいてダンディでカッコいい。それだけに、味方に回ると『影狩り』の月光のように頼もしい。一方、敵に回ると、とてつもなく強大な相手として立ちはだかることになる。そのため、成田が悪役をやると物語はスリリングに盛り上がる。

 今回取り上げる『新宿アウトロー ぶっ飛ばせ』も、そんな一本である。

「シニガミ」の異名をもつヤクザ・西神勇次(渡哲也)と不良青年・直(原田芳雄)、勇次の元恋人・笑子(梶芽衣子)の三人が麻薬取引をめぐって巨大組織と抗争するという物語。なにせ、主役が渡に原田に梶という強力トリオだ。三人が揃った画を観ると、まず負ける気がしない。余程の敵が相手でないと、観る側も危機感は生まれないだろう。

 そこで、成田三樹夫である。成田が演じるのは、「サソリ」と名乗る謎の殺し屋。ゾクゾクする冷たさを放ち、この三人組を一人で向こうに回してもなお全く引けをとらない――どころか、圧倒していた。

 序盤は藤田敏八監督らしく、緩やかで退廃的なムードの青春群像劇として展開、怠惰な日常を過ごしながらバディ感を高めていく勇次と直の姿が描かれる。そして、その空気を引き裂くのが、サソリだ。

 中盤の初登場シーンからして、ブラインドの裏側から一瞬だけ姿を見せるだけなのに、早くも背筋が冷たくなる。初めて対峙する場面では、それまで無敵できた勇次をパンチ一撃で沈めている。しかも、殺気すら出すことなく平然と。それまでのノンビリとした空気は一変、凄まじい緊張感が漲るように。彼らはとてつもない男を相手にしている――そう思わせるだけの凄味を、成田は放っていた。

 不良グループに拉致されても顔色一つ変えず、余裕で受け流して逆襲。簡単に形勢を逆転させる。笑子を殺した上に、哀しむ勇次を電話であざ笑う。こんな敵、どうすれば倒すことができるのか。それでも勇次と直は諦めない。最終決戦に向け、最高潮に。

 しかも、ただ強いだけでなく、雇われ殺し屋の切なさを時おりニヒルな微笑で表現したりするものだから、もうどちらが主役か分からなくなる。ラストの決闘も、屋上で銃を構える姿が実に決まっていた。

 悪役に回っても惚れてしまう。それが成田三樹夫だ。

(春日 太一/週刊文春 2020年6月11日号)

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