「誰かのために」楽天・則本昂大 本拠地開幕スピーチに込めた想い

「誰かのために」楽天・則本昂大 本拠地開幕スピーチに込めた想い

2年ぶりに開幕戦のマウンドを務めた則本昂大選手 ©RakutenEagles

 最強のスポーツ、最高の娯楽、プロ野球が帰ってきた!

 夜のTVニュースだってスマホで見るネットニュースだって、いつの時代でも、プロ野球の話題が入ると目に留まるし、特に今年はホッとする感覚がある。

 楽天イーグルスは練習試合を6勝3敗2分という好成績で終え、シーズンインした訳だが、12球団の中でも特に厳しかった自粛規制の期間を経て練習や調整も難しかったであろう中、イーグルスナインはこの特別なシーズンの戦いに入った。

■開幕戦、圧倒的なピッチングを見せた則本

 京セラドーム大阪でオリックスと戦った開幕3連戦、2勝1敗で勝ち越しを決めてチームは仙台に戻った。開幕前に三木監督が口にしたのは「どんな状況であっても言い訳はしない」という言葉。言い訳どころか、カード勝ち越しというファンには嬉しい結果である。

 敵地での開幕戦、7回1安打1失点で圧倒的なピッチングをみせた則本昂大選手。

 昨年は手術の影響もあり、5勝にとどまったエースだが、そんな過去はなんのその。この日、試合を作り味方が終盤にビッグイニングをプレゼントした。

 試合後に「三木監督の初陣を飾れたし、待ちに待った開幕で1勝挙げる事が出来て、ホッとしています」と笑顔で振り返った。その笑みからは胸の奥から溢れ出た安堵感と、選手会長としての責任感からくる歓びが感じ取れた。

 そしてエースはこう続けた。

「球場の中は静かでさみしいなと感じて、皆さんの声援がどれだけ力になっていたかという事を改めて感じました」

 ファンあってのプロ野球とはよく耳にするし、自分も当たり前かのように使っていた言葉だが、無観客試合が現実となった今シーズン、特別に重く感じる。野球ファンにとって、球場に行けないのはとても残念だが、声援が無い中で戦う選手もきっと辛い気持ちなのだ。

 一般人の自分が想像出来るのは誰も見に来てくれない運動会くらいであるが……やはり少し悲しい気持ちになる。しかし、逆境に強い選手たちは、そのハンディキャップすら武器に変えて、弱音を吐かずに結果を求めて戦っている。

■ホーム開幕戦、メディアの向こうのファンへの想い

 6月23日、東北開幕戦。

 試合前に則本選手会長から両軍を代表してメッセージが送られた。当然スタンドにはお客さんの姿はない。今の気持ちを言葉に込めた。

(一部抜粋)

「スタンドでファンのみなさまと、喜びや悔しさを共感することは今はできませんが、感染予防をしっかりとし、テレビ・ラジオの前で私たち選手に力を送ってください。ファンと選手が一丸となって、今に打ち勝ちましょう」

 一点を見つめ聴いている人の心の奥に訴えかけるような素晴らしいスピーチ、ラジオの中継中だった自分は身震いがした。それは、「今」を一緒に生きましょう!という魂が宿った言葉が、映像越し、ラジオ越しからでも自分の身体にリアルに届いたからだった。

■星野元監督が常日頃言っていた「誰かのために」

 今年3月にラジオの震災特番でインタビューさせてもらった時の記憶が重なる。

 今まで言われた中で心に残っている言葉について聞かせてもらった際、則本選手は星野元監督からの言葉として、「星野さんがいつも仰っていたんですけど、『誰かのために』という言葉は心に刻んでいますし、誰かのためにやれることは本当に大きいです」と真剣に答えてくれた。

 チームの為に、ファンの為に、人一倍、感情を表に出して相手に向かっていくエースが自分は大好きだ。

 登板前日は湯気が出そうなくらい力強いオーラが漂っているが、登板を終えると柔らかな表情でいつも気さくに取材に応じてくれるエース。例えば「好きな虫」について質問すると「気付いたら触れなくなってました。唯一触れるとしたら、かぶとむしのオスかなぁ〜、いや無理かなぁ」と茶目っ気たっぷりに話してくれる。このギャップが、これまた最高なのである。

 星野さんが監督だった2012年の秋に入団し、プロ8年目を迎える則本選手。2013年の優勝の喜びを知っているエースが、野村克也氏の「野球脳」を受け継いだ楽天イーグルスの首脳陣のもとで戦う今シーズン。

「誰かのために」という人一倍強い気持ちで東北のファンを熱くしてくれると強く信じている。

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(河内 一朗)

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