「僕、群れるの嫌いなんで」一匹狼・梅津晃大はドラゴンズのエースになる!

「僕、群れるの嫌いなんで」一匹狼・梅津晃大はドラゴンズのエースになる!

©辻本達規

 ずっとプロ野球開幕を待っていました。僕たちファンも待っていたし、選手たちも待っていたと思います。あまりに嬉しくて、思わずツイッターで野球のことばかりつぶやいていたら、フォロワーが100人ぐらい増えてありがたかったです(笑)。

 開幕戦に勝って、「今年はいける!」と思ったドラゴンズ。現在は負け越していますが、まだシーズンは始まったばかり。山本拓実投手のようなイキのいい若手と、大島洋平選手のようなベテランの力が噛み合ってくれれば、優勝を狙える力は十分あると感じています。今、僕も含めてドラゴンズファンが熱い視線を送っているのが、開幕3戦目で投げた梅津晃大投手です。

 150キロオーバーの直球を投げる身長187センチの大型右腕。昨年はケガで出遅れましたが、後半戦から登場して4勝1敗の成績を挙げました。ルックスは笑顔がふにゃっとしていて、さわやかで、とても優しそうな好青年そのもの。今年のキャンプでは女性ファンが長蛇の列を作っていました。

■垣間見えた梅津投手の意外な素顔

 梅津投手とは、僕は去年の年末に取材でお会いして、かなりお話しさせてもらいました。

 負けん気が強くて、唯我独尊。

 意外かもしれませんが、それが話していて僕が受けた印象です。気の強さは言葉の端々から感じられました。目標を語ってくれたときも「○○勝します」「○○をやります」と全部しっかり断言してくれる。「自分を信じているんだな」と強く感じました。

 意外だったのが、「仲の良い選手はいるんですか?」という質問への答え。

「あんまりいないですね。僕、群れるの嫌いなんで」

 梅津投手の言葉を聞いて「一匹狼タイプなんだ!」と驚きました。このような雰囲気を出している人もいますが、ハッキリと言い切る人は多くはありません。それをサラッと自分の口から言えるところがすごい。そういうイメージを梅津投手にまったく抱いていなかったので、聞いていて思わず息を呑みました。

 性格は根っからのピッチャーという感じです。僕が感じるピッチャーらしい性格というのは、「マウンドを譲りたくない」「ここは俺の場所だ」と心の底から思っている人。野球は9人で戦うものですし、ピッチャーの後ろには仲間の野手が守っていますが、やっぱりピッチャーはバッターと1対1の勝負。打たれてヒットゾーンに飛べば、アウトにすることはできません。「俺が抑える!」という気持ちが強くないと――僕は経験したことがないのですが――プロのマウンドでは勝てないのではないでしょうか。

 僕は高校まで野球をやっていて、ピッチャーも務めました。「相手をねじ伏せてやろう」という気持ちはそれほど強くありませんでしたが、バッターのスイングを見ればだいたいどの程度の実力かがわかるので、「たいしたことねぇな」と思いながら投げていました。僕も「お山の大将」だったと思います。ところが、年々打たれるようになり、打たれれば打たれるほど強い気持ちは薄れていきました。

 プロには学生時代とは比較にならないようなすごいバッターがたくさんいて、当然打たれることもあります。それでもビビらずに強い気持ちでマウンドに上がり続けなければいけないプロの投手は本当に大変だと思います。プロのピッチャーは技術だけでなく、メンタルもプロなんです。打たれた相手にまた立ち向かっていくには、「負けん気」と「自分を信じる力」が強くなければいけない。梅津投手はその両方を十分に持っているようです。

 もう一つ、梅津投手と間近で接して感じたのは「野性味」です。そういう人がマウンドに立っていると、すごく惹きつけられますよね。マウンドでのガッツポーズは川上憲伸さんを彷彿とさせました(笑)。ファンが球場に足を運びたくなるピッチャーだと思います。

 憲伸さんもそうでしたが、「大事な試合で勝つ」のもいいピッチャーの条件だと思います。梅津投手の今年の初登板は開幕カードの第3戦、しかも2戦続けて先発投手が崩れて臨んだマウンドで堂々と投げきった。勝負事になると自分でスイッチを入れて、野性の血をたぎらせることができるのでしょう。優しげに見える梅津投手ですが、実は、星野仙一さん、郭源治さん、川上憲伸さんのような「燃える男」の系譜に連なる一人なのかもしれません。

■ケガとイップスを乗り越えた原動力とは?

 梅津投手はここまでけっして順風満帆だったわけではありません。中学生の頃は控え投手(エースは1学年下の元オリックス・佐藤世那)でしたし、仙台育英高校時代は2年生のときに春の甲子園に出場しましたが出番はなくて、エースとして迎えた3年の夏は県大会4回戦敗退。東洋大学では150キロを投げて注目されていましたが、ケガなどもあって4年間で1勝しかしていません。

 僕も肩と肘を故障して、野球ができなくなった時期があります。これは僕の経験ですが……ケガをすると、好きだったはずの野球が楽しくなくなってしまうんです。リハビリは楽しくないですし、苦しいし、辛い。なにより心が削られます。先が見えないし、治ったとしてもどこまで身体が戻るのかもわからない。梅津投手は学生時代に何か所も故障しているので、僕の何倍もリハビリを体験していると思いますが、すごくネガティブな方向に気持ちが持っていかれる中で、それでも自分を信じてケガに立ち向かって乗り越えた強さを持っていると思います。

 また、梅津投手はイップスも経験しているそうですが、僕も肩と肘を故障した後、イップスになりました。本当は故障が治っているはずなのに、投げる瞬間に痛みがある場所を脳が覚えているので、無意識のうちに元の力のあるフォームではなく、ぜんぜん理にかなっていない力の入らない投げ方で腕が出てしまうようになってしまうのです。今でも草野球をやっているとき、いきなりイップスが出ることがありますし、完全に治らない人も多いと聞きます。梅津投手がケガとイップスを克服して、プロのマウンドで150キロ以上の威力のある球を投げることができていることって、本当にすごいことなんです。

 梅津投手がケガとイップスを克服できたのは、「プロになって活躍する」という気持ちを途切れさせなかったからだと思います。あと、梅津投手はすごく地元思いで家族思いだということも知られています。リハビリでもいろいろな人のお世話になったはずです。「自分の夢をかなえたい」という気持ちだけではなく、「お世話になった人に活躍しているところを見せたい、絶対に見せるんだ」という強い気持ちがあったのかもしれません。

 負けん気が強くて、燃える男で、ケガを克服してきて、一匹狼。それでいて、まわりの人たちへの感謝を忘れない。まるでマンガの主人公みたいな選手ですよね。投げっぷりが絵になるし、さまになる。このまま活躍してくれたら、かつての浅尾拓也さんがそうだったように、ドラゴンズファンからだけでなく、プロ野球ファン全体から愛される存在になるような気がします。

 梅津投手はこれからのドラゴンズを背負って立つエースになる選手だと思いますし、自分自身もそういう気持ちを強く持っているはず。まずは前回打たれた分、次の登板でやり返してもらいたいと思います!

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(辻本 達規)

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