観覧車から試合が見える? 楽天ライブビューイング“寸止め応援”観戦記

観覧車から試合が見える? 楽天ライブビューイング“寸止め応援”観戦記

©ハガユウスケ

■発作的に起こる球場生観戦への禁断症状がもう限界

 ギギ、ギギギ……(歯ぎしりの音)。

 ああ……アアアッッ!!! 生で……ナマで野球が見たい!!!!

 6月19日にプロ野球が開幕。プロ野球ははじまった、しかし無観客試合。テレビやネット、ラジオ中継でみる(きく)しか野球を楽しむ手段はない。

 発作的に起こる球場生観戦への禁断症状は、超絶MAX限界宣言。

『異世界転生したら、球場のトンボだった件』、というなろう系小説を本気で書いてしまおう、かと思うぐらい発狂と狂気の狭間に追い込まれてしまったボク。

 県またぎも可能になった6月28日、いてもたってもいられず楽天生命パーク宮城(以下、楽パ)へと向かった。そう、ライブビューイングのチケットを確保して。

 我が楽天イーグルスは、楽パ隣接の「スマイルグリコパーク」にて試合観戦ができるライブビューイングイベントを開催していた。どうやらこの無観客開催の期間、球場隣接エリアでライブビューイングが実施されるのは12球団でイーグルスだけのようだ(※注:カープは開幕戦の際、地元民向けにビジター試合のパブリックビューイングをマツダスタジアムで実施)。

 スマイルグリコパークは、キッズが喜ぶメリーゴーラウンドや、ぼよんぼよんと飛び跳ねる遊具があったり観覧車が設置されている、楽パレフトスタンド奥の院。

 試合が行われている目と鼻の先でのライブビューイング。

 当日の球場周辺は雨予報、しかしこれはなんとしてでも行くしかないだろうと、チケットを購入し球場へと向かった。

■心の中で熱く声援を送る“寸止め応援”で選手にエール

 JR仙台駅東口についた段階で、もうそわそわである。

 普段なら試合開催時に運行されているはずのシャトルバスは、コロナで運休していた。一刻も早く球場に着きたいあまりタクシーに乗り、宮城野通を飛ばしてもらう。球場へ到着すると、正門入ってまもなくのところに、本日のスターティングメンバーのパネルが飾られていた。

「おお、スタメン、内田じゃん!」

 野球少年っぽい小学生とお父さんの親子がパネルを見ながら嬉々と語り合っている。

 これぞ、素晴らしきプロ野球のある風景かな。

 球場内から漏れ聞こえてくるウグイス嬢やDJの声に心なしか早歩きになる。レフトスタンド方向10番ゲートを通過し、検温・持ち物チェックを行い、いざ「スマイルグリコパーク」内へ。

 さああああ!! 野球が見られるぞおおお!!!!!

 と高揚しながらチケットに記載された席へとむかう。

 指定された席は、芝生の上に仕切られた1.5m四方のソーシャルディスタンスなスペース。あれ? 千利休が仙台まで伊達政宗に『侘び寂び』を伝えに来たのかな?とおもってしまうその茶室の小間のようなスペースに座ると、いつもと違う野球観戦に気づかされ、さっきまでの高まる気持ちがすこし落ち着いてくる。

 抹茶代わりにマザーポートコーヒーのアイスコーヒーをガブガブと喉に流し込む。そう、本日の仙台は夏日。6月なのに日差しがやけに厳しいのだ。

 芝生の前、ロンドンバスが鎮座している横に大型モニターが設置されていた。モニターのなかで、茂木が、内田が、浅村が、ブラッシュが打って走って投げている。

 ブラウン管の代わりに大型モニターか、ライブビューイングはさながら令和の街頭テレビだなー、なんて一人納得していたのだが、しかし今はコロナ禍での野球観戦。マスク着用、大声禁止、タオル回しの行為はご法度。当日はアルコール類も販売中止。力道山とフレッド・ブラッシーもビックリな状況で、観客はパラパラとした拍手と、心の中だけで熱く声援を送る“寸止め応援”で選手にエールを送っていた。

 ああ、これは応援欲との戦い、大人としての精神力が鍛えられるなあ、とホヤの唐揚げをマッタリ食べながらモニターをながめていると、ふとメリーゴーラウンドが視界にはいった。

■辛島なのか本当か、角度的には西川か? 清宮だったら面白い

 あれ? 見える??

 ファンシーな馬車と白馬の間、遠く微かに見えるマウンドらしき白いプレート。目を細め遠くを見ると、豆粒大の選手の姿……。

 おお……見える……!!

 しかし、誰かはわからない……。

 辛島なのか本当か、角度的には西川か? 清宮だったら面白い。そんな気持ちわかるでしょうとつぶやきながら、こんなことなら一番町の『メガネの相沢』に立ち寄って遠近両用メガネを買ってくればよかった、と選手らしき人影が見られた嬉しさとともに浮かぶ後悔の念。

 ふと、メリーゴーラウンドの上を見上げると観覧車がゆっくりと回っている。ああ観覧車に乗れたら試合見られるんじゃないかなあ……と妄想していると、本日観覧車無料の看板が目に入ってくる。え? 観覧車乗れるの? そして無料なの!? 思わず目を疑ったがどうやら本当らしい。

 さっそく観覧車に乗り込む。

 ゆっくりと高度を上げる観覧車。徐々に球場の全景がみえてくる。

 おお……見える…!! 見える……!! 見えるううう……!!!!

 ああ、この高揚感。ボクは球場に来ているんだ球場に来ているんだ何も知らない観覧車の内側で、と誰かに何かを伝えたい、なんだかあいみょんみたいな気分となるこの感じ。テンション上がりっぱなしの6分あまりの遊覧を満喫し、観覧車をおり芝生席へと戻った。

 気づけば試合は終盤。イーグルス4点ビハインドの8回裏。茂木の死球、大地のライト前ヒット。そしてブラッシュ2ランで一気に2点差となり浅村のヒットが続いたとき、スマイルグリコパークは最高潮に達した。

 その雰囲気に押され、我慢していた自分のなかの何かがはじけ、おもわず少しだけ声量があがりチャンステーマを口ずさむ。周りの観客を見渡すと、遠慮がちにタオルを掲げ、マスク越しに声援を送っていた。

 みんな、応援がしたいんだ。プロ野球がみたいんだ。

■おっきな声で「もーぎーえいーごろー!」って歌いたい

 8回の追い上げも及ばず、この日は残念ながらファイターズに負けてしまった。

 試合の余韻にひたりながら宮城野通を駅に向かってゆっくりと歩く。

 7月10日以降、NPBは政府方針に従い5,000人をメドにした有観客試合をはじめる。イーグルスも14日ライオンズ戦の主催試合から観客を入れる。原則として座席は前後1列、左右2席の間隔を空ける。ライブビューイングでは販売中止だったアルコールの販売も検討されているようだ。

 果たして試合が盛り上がったとき、ソーシャルディスタンスルールを守って観戦できるのだろうか? 

 正直いってしまうと、ボクは自信がない。

 マスクは、きっとつけるけれど、終盤のいいところになれば、声をだして声援を送ってしまいそうだし、タオルだって回したい。おっきな声で「もーぎーえいーごろー!」って歌いたい。

 ただ再びコロナが蔓延してしまうと、プロ野球の開催中止も余儀なくされる。だから、みんなで我慢するところは我慢して、あたらしい応援の方法や楽しみ方を模索していくしかない。

 仙台サンプラザ前。JR榴ケ岡駅の地下へくぐった時の冷房の冷たさに、夏日を思い出す。ああ今日暑かったな。マスクの日焼け跡がうっすらと残り、額がヒリヒリしていた。

 だけど、やっぱりあの球場の雰囲気は何物にも代えがたかった。

 早く普通にプロ野球が見られる日がきますように。

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(ハガ ユウスケ)

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