霜降り明星、ハナコ、EXIT、四千頭身…「お笑い第七世代」は他の芸人となにが違うのか?

霜降り明星、ハナコ、EXIT、四千頭身…「お笑い第七世代」は他の芸人となにが違うのか?

霜降り明星。左からせいや、粗品 ©AFLO

 いまやテレビのバラエティー番組で目にしない日はない「第七世代」と呼ばれるお笑い芸人たち。彼らの新しさとは何なのか? お笑い業界に詳しいライターの鈴木旭氏が解説する。

◆◆◆

「ホンマに新しい……勝手に次の年号の世代『第七世代』みたいなのをつけて、YouTuberとか、ハナコもそうですけど、僕ら20代だけで固まってもええんちゃうかな」

 これは、霜降り明星・せいやが、2018年12月22日深夜に放送されたラジオ番組『霜降り明星のだましうち!』(ABCラジオ)の中で発した言葉である。

『M-1グランプリ 2018』で最年少優勝を果たし、せいや自身、高揚していたのだろう。20代の俳優、ミュージシャン、YouTuber、芸人など、あらゆるジャンルの精鋭たちが固まり、若者をターゲットとした新しいムーブメントを起こそうという壮大な夢を語った。

 せいやは、そもそも趣味的に、昭和の歌手、映画、お笑いなどが好きだった。恐らく、とんねるず、ダウンタウン、ウッチャンナンチャンらの「第三世代」というキャッチフレーズが頭のどこかにあったに違いない。

■「第七世代」と「第三世代」

 とはいえ、「第三世代」と「第七世代」は、その成り立ちからしてだいぶ違う。第三世代は、最初から「“お笑い”第三世代」と銘打たれている。その出所こそ不明だが、1980年代後半にいわゆる「業界」の内部から発信されており、そこには明らかな“バラエティーの世代交代”という意味合いが含まれていた。

 具体的には、当時テレビを席巻していたビートたけし、さんま、タモリといったタレントを「お笑い第二世代」と区切り、「お笑い第三世代」のとんねるず、ダウンタウンら勢いのある若手を押し出そうとした意図があった。実際、1990年代は彼らがゴールデンの枠を席巻した。

 一方で「第七世代」は、せいや個人がラジオで発言したものであり、そこには「お笑い」という括りはなかったのだ。

 ところが、翌2019年になると、3月に放送の『ENGEIグランドスラム』(フジテレビ系)で、「お笑い第七世代」として霜降り明星、ハナコ、ゆりやんレトリィバァに加えて、EXIT、かが屋、宮下草薙らが紹介されるようになる。

 同年4月には、霜降り明星の冠番組『霜降りバラエティ』(テレビ朝日系)がスタート。また、その2カ月後には、若手芸人のインタビューをまとめたムック本「芸人芸人芸人 面白いのが、好きだ volume1」(コスミック出版)が発売された。霜降り明星が表紙を飾り、「第七世代 主人公の現在位置」と銘打たれた特集が組まれると、好調な売れ行きを見せ、必然的に「お笑い第七世代」というイメージが先行する形で広く知られるようになった。

■“イジりネタ”からブランドへ?

 ムック本「芸人芸人芸人〜」には、若手とは言えない30代の芸人も取り上げられていた。この本の影響もあり、せいやは先輩芸人たちから「オレらは第五なの? 第六なの?」などとイジられるようになる。

 これに苦悶の表情でせいやが「いや、違うんですよ!」と弁解するたび、むしろ周囲は面白がって、この話題を振るようになった。つまり、2019年の中盤あたりまでは、先輩芸人が“せいやをイジるネタ”として「お笑い第七世代」が取り上げられていた。

 そこには、「第七世代という言葉など定着するはずもない」という意味合いが暗に含まれていたのだ。

 しかし、一方で着実に霜降り明星以外の若手芸人が目立ち始めた時期でもあった。

 ネガティブ漫才の宮下草薙、脱力系トリオの四千頭身、ネオパリピ系漫才のEXIT、若手コント職人のかが屋など、個性豊かなコンビやトリオが台頭し、支持を集めるようになっていた。彼らはネタ番組の常連となり、ラジオやネット番組、単独ライブ、雑誌連載など、多方面で存在感を示していく。

 2019年末になると、単発の番組ではあるものの、12月26日に『宮下草薙のポジティブ学』(フジテレビ系)、12月28日に『EXI怒』(テレビ朝日系)といった冠番組も放送されている。テレビの世界で「お笑い第七世代」というブランドが完全に定着した時期と言えるだろう。

 そして、2020年2月には、『アメトーーク!』(テレビ朝日系)で「僕らビミョーな6.5世代」という企画が組まれるまでになる。中堅に差し掛かった芸人たちが、「人気の第七世代の波に乗れず苦悩している」という構図を露呈して、笑いを誘うようにまでなった。

■「第七世代ってどうなの?」

 実はお笑い業界の関係者の間でも、始めのうちは「第七世代ってどうなの?」と疑問視する声が少なくなかった。

 そもそもテレビやラジオといった“体制側”のメディアが仕掛けたキャッチフレーズではなかったからだろう。テレビ関係者は、「第七世代」という言葉は知っていても、番組のメインとして取り上げるのには抵抗があったに違いない。

 その傾向が特に顕著だったのがフジテレビだ。『新しい波』という番組の威信にかかわることでもあった。同番組は、勢いのある若手芸人を集結させ、8年周期で次世代のお笑いスターを発掘することを目的に制作されている。1992年の初回はナインティナイン、極楽とんぼ、よゐこらが注目を浴び、後の長寿番組『めちゃ×2イケてるッ!』へとつながった。

 また、2回目の『新しい波8』では、キングコング、ロバート、ドランクドラゴンらを輩出し、人気番組『はねるのトびら』を生み出している。

 しかし、『新しい波16』の選抜メンバーで制作された『ふくらむスクラム!!』は、半年ほどで打ち切りになった。その中には、現在テレビでブレーク中のかまいたちもいる。「実力派がいるのに、なぜ?」という違和感はあるが、「アイドル的な人気がなかった」と、ただ漠然と解釈するよりほかなかった。

 2009年当時は、まだそこまで広くSNSが普及しておらず、一般視聴者と番組制作サイドで接点を持つ手段もなかった。判断基準は、完全に視聴率だったのだ。

■テレビブランドが通用しない時代へ

 2016年には『新しい波24』がはじまる。12月28日にパイロット版が放送され、間もなくブルゾンちえみが大ブレーク。しかしその後、霜降り明星、ゆりやんレトリィバァ、四千頭身ら(終盤ではハナコも出演)同番組の選抜メンバーで制作された『AI-TV』(2017年10月〜)は、『新しい波16』と同様に、ゴールデンタイムに進出することなく、半年ほどで打ち切りとなってしまう。

 ところが、『新しい波16』と違っていたのは、ここからだった。

 まずは、ハナコが『キングオブコント2018』で優勝し、その後を追うように霜降り明星が『M-1グランプリ2018』で最年少優勝を果たす。その後、ラジオ番組でせいやが語った「第七世代」の一件があり、『新しい波24』とは関係なく、「新しい世代」の登場を演出するチャンスを掴み取った。

 テレビで「第七世代」を冠する番組がしばらく現れなかったのは、この流れの影響も大いにあるだろう。

 2019年8月に放送された特番『7G〜SEVENTH GENERATION〜』(フジテレビ系)は、ジャニーズのアイドルグループ「Snow Man」と、四千頭身、さや香、さすらいラビーといった芸人が共演するもので、純粋なお笑い番組とは言い難かった。

 明らかにお笑いを意識した番組となると、今年2020年3月にパイロット版が放送された『第7キングダム』と『お笑いG7サミット』(ともに日本テレビ系)まで待たなければならない。せいやの発言から、実に1年以上経過している。これは、「テレビのブランディングが通用しなくなった」という象徴的な話だと思う。

■冷静沈着な第七世代の芸人たち

「第七世代」と呼ばれる若手芸人たちは、実に冷静に現在の状況を捉えている。2019年に私が取材した中でも、その片鱗が垣間見えた。

 霜降り明星・せいやは「一回真ん中みたいなポジションになった番組(『AI-TV』)が終わると、まだ売れてないのに『あ、アイツら終わった』みたいな扱いを受けるってよう言われた」「それがメッチャ怖かった」と語り、その危機感からM-1グランプリに向けての意気込みが増したことを明かしている。

 また、宮下草薙・宮下兼史鷹は「僕らの少し前の世代で、面白い芸人さんたちがライブシーンにたくさん埋もれているし。そういう現状を見ると、タイミング的にはすごいラッキーだった」とテレビ出演前の過去を述懐した。また、ハナコ・岡部大は、2017年の『NHK新人お笑い大賞』で惨敗し、『ABCお笑いグランプリ』で霜降り明星が優勝するのを目の前で見たことで、「一回打ち砕かれて火がついた」と語っていた。

 さらに今年1月、吉本興業の最新ニュースを発信するメディア「ラフ&ピース ニュースマガジン」のインタビューでEXIT・兼近大樹は「(今後は)たぶん確実にキャラ変わると思います」「今イケメンキャラみたいになってるけど、そんなやつじゃないんで」と赤裸々に告白している。

 彼らに共通するのは、早くから自分自身を客観視できていることだ。それは、実際の失敗経験だけでなく、幼少期や学生の頃に『エンタの神様』(日本テレビ系)を見てきた世代ということも関係しているように思う。そこで、“一発屋”と呼ばれる芸人の栄枯盛衰をさんざん目にしてきたはずだからだ。

 テレビとは別にYouTubeやTikTokでバズれば人気に火がつくこと、SNSを使用することで自己プロデュースができることも把握している世代だ。実に多くの情報から、自分たちらしいものを選択しているのである。

■メディアに依存しない「変幻自在のコミュニティ」

 さらに面白いのは、彼らが「第七世代」のキャッチフレーズをある場面では鼻で笑い、ある場面では活用していることだ。

 先述のインタビューでEXIT・兼近は、「『第◯世代』みたいなのをずっと続けていくのってダルいじゃないですか」と語る一方で、昨年9月に行った単独ツアーファイナルでは「第七世代コント」と銘打ち、宮下草薙、四千頭身をゲストに迎えて合同コントを行ったりもしている。

 要するに、「『第七世代』という名前が喜ばれるなら使ってもいい」というスタンスなのだ。

 現在、霜降り明星は、テレビ、ラジオ、YouTubeチャンネルと、若手芸人の王道を走り続けている。EXITは、昨年12月にパシフィコ横浜で、歌あり、ネタありの単独公演を敢行。コンビでファッションブランド「イグジー(EXIEEE)」をプロデュースするなど、芸人らしからぬ活動で注目を浴び続けている。

 一方で、昨年からゾフィー・上田航平、かが屋・加賀翔、ハナコ・秋山寛貴、ザ・マミィ・林田洋平の4人がユニット「コント村」を結成。彼らのトークライブは、軒並み盛況を呈している。また、トンツカタン・森本晋太郎は、今ブレーク中の女性ラップユニット「chelmico」と公私共に交流があり、彼女たちのライブにゲスト出演したり、アルバムCDの収録曲にナレーションで参加したりと、ジャンルを超えた活躍を見せている。

 それぞれが、違った形でムーブメントをつくろうという気概を持ち、結果的にせいやの最初にイメージしていた「第七世代」に近づいているのが興味深い。

「第七世代」は、メディアに依存しない、独立した同時代の個性が結集する“変幻自在のコミュニティ”だ。一過性のブームどころか、今後もさらに盛り上がる気さえしている。

(鈴木 旭/Webオリジナル(特集班))

関連記事(外部サイト)