え、これドリカムなの……? 新曲「YES AND NO」はしっかり“令和のjpop”に仕上がっていた――近田春夫の考えるヒット

え、これドリカムなの……? 新曲「YES AND NO」はしっかり“令和のjpop”に仕上がっていた――近田春夫の考えるヒット

絵=安斎 肇

YES AND NO』(DREAMS COME TRUE)/『1,000,000 TIMES』(MY FIRST STORY

 先ずはお詫びから……。

 先週の原稿ですと、担当の若者の年齢が50歳を越してしまう計算になってしまいます。実際には、オフコースの時代にはまだ若者は生まれておりませんでしたぁ。ゴメン。

 ところで、え! これドリカムなの? ネット上に上がっていた新曲の再生を始めた途端、マジで、読み込み間違えをしてしまったかと思った。

 私にとっては、ドリカムというと、ソウルやディスコ、フュージョンといったジャンルに、日本人好みの味付けを施した独特の“作風”で、ひと時代を築いた後も、どこか“洋楽的な匂い”を漂わせることにこだわりを持ちながら活動し続けてきた人たち、といった印象がある。一聴しただけで必ずそれとわかる“カラー”があったのだ。

『YES AND NO』のイントロには、そうしたかつてのドリカムの音作りには見受けられなかったような、方向性への柔軟な対応が感じられた。

 具体的には、アゲアゲなテンポに哀愁を帯びたコード進行という、アニソンなどにもよくありがちなこうしたサウンド傾向について洋か和かと問われれば、やはりかなりドメスティック色が濃いかな?とも思わざるを得ないからだ。

 そんな先入観も手伝ってか、私がこの新曲になにより強く感じるのは、これがドリカムである以前に、しっかり“令和のjpop”の音になっていることだった。

 商業音楽は、流行歌ともいうぐらいで、トレンドが絶え間なく移り変わってゆく構造的宿命を持つ。かかる現実のもと、自身の本来の持ち味に、いわゆる“流行り廃り”をどのように融合させ、製品化させてゆけば良いのか? 作り手たちがいつまでも古びず、第一線で活躍を続けるのは、なかなか容易なことではない。

 そうした文脈で眺めたとき気付くのが、彼らの“仕事”に対する意識の高さのことである。上述の私の驚きも突き詰めればそこに帰結してゆく話なのだが、私はイントロを聴き、今時の若い人の作品と信じ込んでしまった訳である。

 それは、例えばシンセ音色の設定、あるいはリズム/ビートの組み立てといった諸要素の選択が、大変に今日的であったという証左にもなるのであるが、その意味するところとは、畢竟アレンジの優秀性に落ち着くだろう。

 ドリカムにあって他にはない強みとは、なんといっても編曲の専門職として“アップトゥデイト”であることに強いこだわりを持つ、しかもベーシストでもあるメンバーを有することだ。すなわち、楽曲のイメージを同時代化する作業に関して、中村正人さえいれば、すべて内部完結が成立をする上に“オリジナルなグルーヴ”も提供出来るのだ。

 その土台のあったればこそ、かの揺るぎなきポジティブシンキング! 吉田美和描くところの主人公の物語の“アップデート”は永遠続くかも知れねーなぁと、思った次第だ。

 MY FIRST STORY。

 この追い立てられるような感じが、世相を表してる?

ちかだはるお/1951年東京都生まれ。ミュージシャン。現在、バンド「活躍中」や、DJのOMBとのユニット「LUNASUN」で活動中。近著に『考えるヒット テーマはジャニーズ』(スモール出版)。近作にソロアルバム『超冗談だから』、ベストアルバム『近田春夫ベスト〜世界で一番いけない男』(ともにビクター)がある。

(近田 春夫/週刊文春 2020年7月23日号)

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