「カートゥッ!」インパクト大の歌詞に女性ファン熱狂 売れるガールズグループ、日韓の違い

「カートゥッ!」インパクト大の歌詞に女性ファン熱狂 売れるガールズグループ、日韓の違い

BLACKPINK ©getty

 日韓の女性アイドル市場の違い。その一つにファンの男女比が挙げられる。AKB 48、乃木坂46にハロプロ。テレビに出演するようなメジャーグループから地下アイドルまで、ライブ会場には多くの男性の姿。

 ではK-POPのガールズグループはどうか。グループによっては女性ファンの方が多いほどだ。日本で行われるK-POPのガールズグループのコンサートに足を運ぶと、本国以上に女性ファンの姿が目立つ。

 BLACKPINKやRed Velvetなど、日本での韓流、K-POPブームが女性から広がったものだから、という背景もある。だがそれだけではない。K-POPのガールズグループを女性達が支持する裏には、彼女たちの発するメッセージやスタンスにも理由があるのではないだろうか。

■K-POPにおける「ガールクラッシュ」とは?

 ここ最近、K-POPのガールズグループの主流は「ガールクラッシュ」だ。アイドル・グループを輩出するソニーミュージックとJYPによる共同オーディション番組『Nizi Project』の中でも言及されていたワードで、「同性さえも思わず惚れてしまうようなカッコいい女性」を意味する。

 ただ、安直に「男前な女子」とするのは誤訳だ。むしろある性別に対して期待したり押し付けられる「らしさ」から自由であることも2020年の「ガールクラッシュ」なスタイルと言える。軸は「自分らしさ」。たとえミニスカートや胸の谷間が見える服を着たとしても、誰かのためじゃない。自分がそうしたいからそうする。ハイヒールでもスニーカーでも私の魅力は変わらない。あくまで「自由」で「軽やか」なのだ。

■「清純」or「セクシー」の時代に革命を起こしたグループ

 2010年代前半までの韓国のガールズグループは「清純」or「セクシー」に二分されていた。ピュアな可愛さにしろ色気にしろ、アピールする対象は基本的に異性であり「男ウケ」を意識したコンセプトが全盛であった。女性ファンに対しても「異性にモテる=イケテル女の子」として手本になるというスタンス。

 シックな衣装を身に纏い、パワフルなダンスで“強め”に見えるグループさえも歌詞の中身は「どれだけあなた(彼)に傷つけられたか」という恨み節だったりして、今聞き返すとやや他人軸で依存的な内容が目立つ。しかし、近年は本来清純派のカワイイ路線で売り出していたグループも、曲のコンセプトとして「ガールクラッシュ」という概念を取り入れはじめ、“ファッション”として使うというパターンも見受けられるようになっている。

「ガールクラッシュ」を貫き、最初に広めたグループがBIGBANGの妹分・2NE1だ。彼女達が歌っていたのは主に“自立”と“女性の権利拡大”。「世界中すべての女子をクラッシュ、ドキドキさせるこのrush」といった歌詞からもわかるように、力強いラップとボーカル、個性的なファッション、媚びないスタイルで一気に女性ファンの心を掴んだ。

 彼女らが活躍した時期が韓国で性差別問題がどんどん明るみに出たタイミングと重なったことも大きい。今は解散してしまった2NE1だが、彼女達が確立したスタイルは直系の後輩・BLACKPINKがしっかりと受け継ぎ、進化させている。

 そして現在『Nizi Project』からデビューしたことで話題のNiziUの先輩にあたるmissA(現在は解散)もガールクラッシュ のはしりと言えるだろう。2012年に発売した「I don't need a man」はタイトル通り「私たちは彼氏ナシでも楽しく生きられる」という内容で、これまで「あなたなしでは生きられない」と歌ってきたガールズK-POPの中で新しい風を感じさせるものだった。なおmissAの色を感じさせる後輩として、ITZYが2019年にJYPからデビューしている。

■「カートゥッ!」唾を吐くセンセーショナルな歌詞

 現在「ガールクラッシュ」の代名詞とも言えるグループがMAMAMOOだ。正式デビューは2014年の4人組。最初から注目を浴びたグループではない。新人らしいフレッシュさ、未熟な可愛さを一切感じさせなかった故かもしれない。しかし、堂々とした振る舞いとパフォーマンス、成熟した雰囲気が後々の「強み」となってゆく。

 彼女たちがブレイクしたのは活動開始から5年目の2019年末、2ndフルアルバムのメイン曲「HIP」。テーマは「人の視線を意識しない人生、自分が一番自分らしくなれる人生」。

 中でもグループの象徴ともいえるメンバー・ファサの「世界にあなたは一人だけ、なのになぜ自分の顔に唾を吐くの、カートゥッ(唾を吐く擬音)」と歌いながら唾を吐くような振り付けはセンセーショナルであった。SNSやYouTube上ではファサが「カートゥッ」を歌う場面のコンピレーションが多数掲載され、ライブ映像を見ると大勢のファンたちが「カートゥッ」と合いの手を入れる様子を見ることができる。


 ファサにはこんなエピソードがある。「デビュー前に受けたオーディションで、審査員に言われた。君は個性もあって歌も上手い、でも太ってて可愛くないって。悔しくて一晩中泣いた。でもあるアーティストのライブ映像を見て、こう思い直した。もし私がこの時代の“美の基準”ってやつに当てはまっていないのなら、私が別の基準になる」

 女性歌手はどんなに才能があっても、可愛くなければ意味がないーーそんなルッキズムと女性蔑視に対し彼女が中指を立てるのは、ポーズではなく実体験から生まれた信念からだ。コンセプトとしてカッコよく振る舞うのではなく、ありのままにパフォーマンスをしていたら結果的に「ガールクラッシュ」と呼ばれてしまった、と言った方が正しいかもしれない。

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 ちなみにファサが「可愛くない」と言われ泣いた夜、勇気をくれたアーティストはビヨンセだったという。約20年前にDestiny’s Childが女性の自立について歌い、支持を集めたことを思い返すとなかなか感慨深い。かつてのビヨンセが訴えたメッセージは今も、K-POPを通じて世界へ発信され続けている。

■世界的な問題意識とマッチし、米国でもヒット

 世界的なガールクラッシュK-POPの代表といえば、BLACKPINKの存在を忘れてはいけない。YouTubeで10作品が再生回数1億回突破、今年5月にはレディ・ガガとのコラボ曲も発表。媚びない凛とした美しさとパワフルなパフォーマンスで韓国・日本・アメリカを中心に人気急上昇中だ。

「本当の自分の姿を探し、自信をもって」

「心地良いと思うものを見つけよう」

「自分を傷つけるものから離れること」

 女性としてというより、ひとりの人間として――彼女たちが歌うのは普遍的で、なおかつ今の世情にしっくりくるメッセージ。BLACKPINKが海外でも広く受け入れられている理由の一つとして、彼女らのスタンスがアメリカを中心とした「性差別」「個の尊重」「新しい生き方」に対する世界的な問題意識などとマッチしたことも挙げられる。

 さらに女性ファンの存在はアーティストの力強い支えだ。先述したBLACK PINK、MAMAMOOのライブ会場では半数、もしくはそれ以上が女性で埋まっている。その点は日本の女性アイドルの事情とは少し違うだろう。

 同性のファンを抱えておく事で、たとえアーティスト本人のプライベートに変化があれど(恋愛・結婚・出産など)人気や売上が維持される。音楽ビジネスとしても「ガールクラッシュ」なグループは安泰の優良株なのだ。

■韓国のガールズグループが歌う意味

 韓国は古くから「男尊女卑」の概念が色濃く残る国だ。また外見至上主義(ルッキズム)が色濃い社会であることも否定できない。そのことは過去の文献やエンタメ作品を通じても明らかで、筆者も実際に韓国に住んでみてそれを肌で感じたこともある。だからこそ、今のガールクラッシュなアーティストたちが「性役割からの自由」を叫ぶのは意味があり、共感を呼ぶのだろう。

 そして最近はLGBTQのファンも多いと聞く。「自分らしさの追求」「ありのままを認めること」は男女や国籍を問わず、人類共通のテーマなのだと改めて実感する。

 BLACKPINK、MAMAMOO、ITZY。「私らしさ」で勝負するガールクラッシュなK-POPグループの快進撃は、今後も続くと確信している。

(K-POPゆりこ)

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